近代史の闇を覗くと現代の狂気がみえる。

夢野久作の場所

「夢野久作の場所」
山本 巖

四六判、上製、304ページ
定価:本体2,000円+税
ISBN978-4-86385-156-6 C0095
『夢野久作の場所』(1986、葦書房)に修正・加筆しています。

人間が抱える不可解さ、不安、
そして不条理。
時代を超えた疑問は解けるのか。
久作の予言なのか…

夢野久作が描いた狂気の世界は、没後50年たっても色あせることなく、多くの人々を魅了し続け、近代史という闇の底に沈む一条の光。人間が抱える不可解さや不安は、簡単には解けない謎であり、本書はその謎を求めて、深く掘り下げていく。狂気に沈む闇は、現代の不可解な闇へとつながっていき、夢野久作の狂気の謎を解くことは、現代の狂気に向き合うことである。

乱歩の「夢野君の書かれた狂気の世界は、狂人自身が書いた狂気の世界で、文学者が書いた狂気の世界ではないといふやうなところがある」(『夢野久作の世界』)は興味深い。探偵小説論的に言えば、久作の作品には、すべてのナゾ解きが終わったあと、なお、人間が抱え込んだ不可解さや不安が残る。久作が批判してやまなかった近代という時代の論理が、さらに広く深く浸透したのが現代であるとすれば、夢野久作をどう位置付けるかは、日本文学史のなかでなお、本質的な課題として残されているといえるのではないか。 (著者)

2014年9月中旬全国書店にて発売。

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著者プロフィール

山本 巖(やまもと・いわお)
一九四一年北九州市門司区生まれ。早稲田大学卒。一九六四年西日本新聞社入社。社会部、文化部、都市圏部、北京支局などに勤務。熊本総局長、文化部長、編集企画委員長、論説委員長などを務める。著書に『昭和史を歩く』(文献出版)『三国志の旅』(共著・西日本新聞社)『山本巖ブックレット001〜006』(書肆侃侃房)『鑑真』(共著・書肆侃侃房)など。

目次

一章 ◉ 闇を恋ふ
「いなか、の、じけん」の不条理/主題としての「狂人」/民衆の生存の闇

二章 ◉ 悪戦のはじまり
母の不在/父杉山茂丸の影/新しい運命/香椎村杉山農園/夢の久作的出現

三章 ◉ 近代あるいは東京人の堕落時代
震災後の東京を読む/死んだ魂の市場/江戸から東京へ

四章 ◉ 玄洋社というまぼろし
怨念の継承/其日庵主・杉山茂丸の世界/茂丸と久作の順接部分/巨大なノンセンス・頭山満/無為者の順位/「近世快人伝」の含意/裸の魂の共同体

五章 ◉ 久作が幻視した天皇
民を親とす/「白髪小僧」の天皇論/最下層民の聖性/天皇像が映す近代のねじれ/顕教的天皇から幻想の天皇へ

六章 ◉ 昭和への悪意
近代の魔力/自己解放としてのモダニズム/氷の涯に至る侵犯/久作の抱えた近代の難関/日本無敵の赤い主義者/「猟奇歌」に表現されたもの/探偵小説は時代の毒薬/ドン底からの自爆

七章 ◉ 淋しい、恐ろしい場所
自分の声しか聞こえない/絶望の果ての物語/現実への企み/疎外された者の「瓶詰の地獄」

八章 ◉ 最下層の神々
民衆との共生感覚/能あるいはにわか的語り/「犬神博士」の世界/乞食芸人の嗤い/アナキズムの天皇

九章 ◉ わが心狂ひ得ぬこそ
博多にわか的「狂」の位相/我が心、狂い得ぬこそ/村の外側にいる人々/「もうひとつの国」への射程

十章 ◉「ドグラ・マグラ」の復讐
物凄い人類千古の謎/「狂人の解放治療」/キチガヒ地獄外道祭文/「脳髄論」が撃つ近代国家システム/「胎児の夢」はめぐる/〈私〉を探す旅

同時代の前線として/夢野久作年譜/あとがき

関連書籍

<山本巖ブックレットシリーズ>
001「祖国幻影」
002「菊と一銭五厘」
003「辺境から」
004「福岡から見た昭和史」
005「熊本・反乱の系譜」
006「中国よ!」

「鑑真」