書籍

『『女人短歌』 小さなるものの芽生えを、女性から奪うことなかれ』濱田美枝子

『『女人短歌』 小さなるものの芽生えを、女性から奪うことなかれ』
濱田美枝子

四六判/並製/320ページ

定価:本体2,200円+税

ISBN978-4-86385-581-6 C0095

装丁 成原亜美(成原デザイン事務所)

 

わたしたちの短歌誌をつくろう!

女性のために女性自身の手によって編まれた歌誌『女人短歌』。第二次大戦の敗戦直後に創刊され、48年にわたって刊行された。

男性中心の歌壇のなかで結社を超えて女性たちが結束し、相互研鑽に努めた。女性歌人が活躍できる地平を切り拓いた功績は大きい。

 

五島美代子、長沢美津、生方たつゑ、阿部静枝、山田あき、葛原妙子、中城ふみ子、森岡貞香ら、『女人短歌』に集った歌人たちの熱き魂のリレーを追う。

歌誌『女人短歌』について初めての総合的研究書。

 

2023年7月全国書店にて発売。

 

★刊行記念特別公開記事★
濱田美枝子「「女人短歌」とは何だったのか?」(「ねむらない樹」vol.7 より)

 

【本書に登場する発言の一部】

「私達を自由自在に詠わしてください。(中略)小さなるものの芽生えを、わが民衆から、女性から奪うことなかれ、と私は大きい声で叫びたい」(五島美代子)

「かつて女性は歌会の添え物でした」(森岡貞香)

「皆さん、男の人を頼っていてなにが出来ましょうや」(長沢美津)

「今までの古い殻をぬぎ、封建性をすて、ただひたすら作品の力による向上を目指す明るい集団を作りたいのが念願であります。ただ作品のみがものを言う正しい集りで終始したいと思います」(北見志保子)

 

【目次】

はじめに

第一章 『女人短歌』前史──昭和戦時下に生きた女性歌人たちの歌

1 国民に課せられた時代の要請

2 戦時下を映す短歌

3 戦時下における短歌の私性

4 敗戦を迎えた女性歌人たちの心境

5 『女人短歌』の成立時期の時代背景

第二章 『女人短歌』創刊

1 『女人短歌』の創刊へ

2 『女人短歌』創刊への歩み

3 季刊誌『女人短歌』創刊号

4 文学史上の評価

第三章 「女人短歌叢書」と宣言文の変遷──『女人短歌』発展の道程

1 「女人短歌叢書」の刊行

2 批評精神の向上へ

3 巻頭の欄から宣言文が消えてゆく──宣言文の変遷

第四章 五島美代子と『女人短歌』を牽引した歌人たち──五島美代子・長沢美津・山田あき・生方たつゑ・葛原妙子

1 五島美代子──『女人短歌』の精神的支柱となって

2 長沢美津──『女人短歌』に生き続けた歌人

3 山田あき── 民衆とともに

4 生方たつゑ──知的視点と民俗学的感性

5 葛原妙子──確かな論客

第五章 『女人短歌』の存続から終刊へ

1 真剣勝負の向上心を具現化した場の継続

2 会員たち相互による研究深化の方向へ

3 『女人短歌』の存続を担った女性歌人たち──森岡貞香・真鍋美恵子・樋口美世

4 終刊

参考文献・図版出典

折口信夫「女人短歌序説」

『女人短歌』関連年譜

あとがき

 

【著者プロフィール】

濱田美枝子(はまだ・みえこ)

1947年富山県生まれ。1973年日本女子大学修士課程修了後、私立フェリス女学院中学高等学校国語科教諭。在勤中、聴講生、客員研究員として二度母校に内地留学。2020年日本女子大学博士課程後期単位修得満期退学。同年4月より日本女子大学学術研究員として現在に至る。共著『祈り──上皇后・美智子さまと歌人・五島美代子』(藤原書店)など。

掲載情報・書評

2023年

毎日新聞(7/26) 文芸時評 7月 私のおすすめ  評者=大塚真祐子さん
《女性がいかにして表現の場を獲得し、それを守り続けたかという時代の変遷を目撃する》

ポリタスTV(8/4) 評者=石井千湖さん

過渡期に女性が連帯することはすごく重要だった。(中略) 現代につながる問題があるからこそ今こうしてこの本が出た。すごく意義があると思う

日本経済新聞(8/12) 時代拓く歌壇フェミニズム 評者=瀬戸夏子さん
《初の本格的な研究書である。まず、この本が出版されたことを喜びたい》《かつて歌壇で戦っていた女性たちが確かに存在した。当時はフェミニズムとは呼ばれなかったかもしれないが、まぎれもなくそれはフェミニズムの実践だった》

朝日新聞(8/20) 女性歌人の格闘 評者=小島なおさん
《生い立ちも、歌世界も異なる女性歌人たちのとりどりの個性が自在に羽を伸ばしている。男性優位だった当時の歌壇において、多くの女性歌人の論作両面に光を当て続けた》《「女人短歌」の目指したものに、いま改めて歌壇は共振している》

地方小出版情報誌アクセス(9/1) 新刊ダイジェスト
《『女人短歌』前史から終刊まで、初めての総合研究書。女性歌人の熱い魂が伝わってくる》

北海道新聞(9/10)書棚から歌を 評者=田中綾さん
《歌誌の歴史を詳述した近刊書のサブタイトルは、五島美代子が46年に発表した随筆の一節、「小さなるものの芽生えを、わが民衆から、女性から奪ふこと勿【なか】れ」からとられている。切実な肉声だったのだろう》
《読みどころの一つは、「女人短歌」巻頭の宣言文の変遷についてである》

歌誌「かりん」9月号 かりんの本棚「立ち上がった女たち」 評者=久山倫代さん

河北新報(9/10)「精神の解放から深化へ」 評者=大辻隆弘さん
《男性優位の歌壇の中で女性たちを鼓舞したこの雑誌を詳細に追跡した労作》
《女性歌人全盛の今、その原点を見つめ直す貴重な論考である》

公明新聞(9/17)「戦後の女性歌人の活躍をけん引 歌誌『女人短歌』の功績」 著者濱田美枝子さん執筆記事
《男性優位の既成歌壇に挑戦し、結束して『女人短歌』を誕生させた歌人たちの軌跡は、現代に生きる表現者にも多大な示唆を与えてくれる》

短歌結社誌「まひる野」9月号 時評「女性の場」 評者=狩峰隆希さん
《殆ど予備知識がないまま手にとったのだが、雑誌の中身だけでなく当時の社会情勢や歌壇の動向についての丁寧な解説があって、読んでいて気後れしない。誌面からの引用歌が多いのもよかった》

短歌研究10月号 短歌時評 評者=濱松哲朗さん
《読みながらみずからの無知を思い知り、それでもここから問題意識を広げていきたいと感じる、貴重な一冊》
《「女人短歌」が担った役割や活動の意義を確認しつつ、五島美代子を中心とした各歌人の仕事を丹念に追っている》

現代短歌新聞(10/5)「美代子研究者の気概」 評者=佐田公子さん
《著者は、五島美代子の(…中略…)筋金入りの研究者である。本書はその一貫した使命感から美代子と「女人短歌」の関わりを究明しようとして生まれたものとも言える》

ふぇみん(11/5)書評
《作歌によって自己と社会に真摯に向き合う女性たちが、議論し合い、支え合い、内に籠ることなく社会に発信し続けた「女人短歌」は、本書にその語はなくとも、シスターフッドを体現していると思える》

角川「短歌」11月号 書評 評者=山崎聡子さん
《外部の視点を入れながら「歌壇」に対する批評精神を忘れなかった編集委員たちの怒濤の情熱が後世に残したものについては、今こそ振り返られるべきだろう》

「心の花」11月号 評者=清水あかねさん
《『女人短歌』は優れた研究書である一方、読者にわかりやすいようにとの配慮の行き届いた本である》

「水甕」12月号 「女性歌人たち挑戦の半世紀」  評者=永守恭子さん
《今までにはなされていない研究であるとの自負を持って書かれた熱気ある一冊》
《個性的で注目すべき歌人たちの歌人論である。豊富で適切な歌の引用があり読み応えがある》

「歌壇」1月号 「時代をはね返す炎」 評者=川本千栄さん
《本書は戦後の短歌史を考える上で、欠かせない資料的価値を持つ重要な一冊になると思われる》
《資料を精査した上で通説に疑義を呈する姿勢には、まさに新しい短歌史を描こうという著者の意志を感じる》

うた新聞12月10日号 
短歌2023 この1年を振り返る 評者=松村正直さん 「未来は明るいか」
《戦後の男性中心の社会や歌壇の中で誕生した女性だけの雑誌「女人短歌」の創刊から終刊までを描いた力作》

2023ミニ年間時評 評者=大森悦子さん 「時代のホットスポット」
《女流の歌は如何に変化したのか、そして変化しなかったことは何だったのか、現代のフェミニズムの視座から考える意味は大きい》

図書新聞(1/1) 評者=遠藤郁子さん
《五島美代子に関して、未公開資料を含め、かなり踏み込んだ記述がなされている。美代子の夫・茂と親交を持ち、資料を託された著者だからこそ示すことのできた貴重な資料の発掘は、この本の功績として高く評価されるべきだ》

「未来」2024年1月号 評者=嶋稟太郎さん
《特に、創刊に至るまでの内部メンバーの葛藤と周囲の反応に注目した》《ただ七十年前という時間を差し引いても、まだ向き合わなければならない、現在も繰り返されている差別があるような気がする》