『たましひの薄衣』
菅原百合絵
四六判、上製、144ページ
定価:本体2,000円+税
ISBN978-4-86385-561-8 C0092
装丁:須山悠里
表紙写真:アンダース・エドストローム
栞:水原紫苑 野崎歓 星野太
ほぐれつつ咲く水中花――ゆつくりと死をひらきゆく水の手の見ゆ
満を持して刊行される、菅原百合絵待望の第一歌集。
人間が荒れ狂う今世紀にこのような美しい歌集が生まれたことをことほぎたい。
────水原紫苑
静謐で深い歌の探求が続けられていたことに胸を打たれる。
────野崎歓
2023年2月下旬全国書店にて発売です。
【収録歌より】
ネロ帝の若き晩年を思ふとき孤独とは火の燃えつくす芯
たましひのまとふ薄衣(うすぎぬ)ほの白し天を舞ふときは
水差し(カラフ)より水注(つ)ぐ刹那なだれゆくた
一生は長き風葬 夕光(ゆふかげ)を曳きてあかるき樹下帰りきぬ
「わたしの夫(モン・マリ)」
【著者プロフィール】
菅原百合絵(すがわら・ゆりえ)
1990年生まれ。東京出身。「東京大学本郷短歌会」「パリ短歌クラブ」元会員(現在いずれも解散)。「心の花」会員。パリ・シテ大学(旧パリ第七大学)博士課程修了。専門は18世紀フランス文学。
書評など
毎日新聞(3/29) 文芸時評 3月 私のおすすめ 評者=渡辺祐真さん
《此岸と彼岸、朝と夜、一瞬と永遠、動物と天使、祝福と呪詛など、相反する存在たちの間に設えられた橋のような歌が並ぶ》
共同通信配信記事 「短歌はいま」 評者=大松達知さん
《静謐な日々の中にある感情のわずかな揺らぎ。それに恋をするように向き合い、掬い取る歌集だ》
「未来」5月号 評者=山木礼子さん
《異なる言語のあいだにも、自身と他者にも、たしかに傾れのような岸壁があり、それらの場面をもう一度言葉によって写し取るある種の美の決着、この歌集はそんなことを言語の水際から教えてくれる》