書籍

『左川ちか全集』左川ちか

『左川ちか全集』
左川ちか/島田龍編

四六判、上製、416ページ
定価:本体2,800円+税
ISBN978-4-86385-517-5 C0092 3刷

装幀:名久井直子

装画:タダジュン

 

詩の極北に屹立する詩人・左川ちかの全貌がついに明らかになる──。

萩原朔太郎や西脇順三郎らに激賞された現代詩の先駆者、初の全集。

すべての詩・散文・書簡、翻訳を収録。編者による充実の年譜・解題・解説を付す。

 

2022年4月下旬に全国書店にて発売。

 

★試し読み

左川ちか「昆虫」「錆びたナイフ」「海の捨子」

解説「詩人左川ちかの肖像」より(島田龍)

 

【目次】

詩篇

一九三〇年
青い馬  昆虫  秋の写真  朝のパン  墜ちる海

一九三一年

出発  黒い空気  錆びたナイフ  雪が降つてゐる  緑の焰  青い球体  緑色の透視  死の髯  断片  ガラスの翼  季節のモノクル

一九三二年

循環路  冬の詩(抄・合作)  青い道  記憶の海  幻の家  冬の肖像  硝子の道  白と黒  風  蛋白石  神秘  夢
  樹魂  白く  The street fair  緑  The Madhouse  雲のかたち  眠つてゐる  雪の日  鐘のなる日  睡眠期

一九三三年

憑かれた街  波  雲のやうに  毎年土をかぶらせてね  目覚めるために  花咲ける大空に  雪の門  単純なる風景  春  舞踏場  五月のリボン  むかしの花  暗い夏  星宿  他の一つのもの  背部  葡萄の汚点  雪線

一九三四年

プロムナアド  遅いあつまり  天に昇る  会話  メーフラワー  果実の午後  暗い歌  花  午後  夏のをはり  海泡石  指間の花  1.2.3.4.5  Finale  前奏曲  素朴な月夜  言葉  菫の墓  落魄

一九三五年

烽火  三原色の作文  太陽の娘  夜の散歩  花苑の戯れ  海の花嫁  夏のこゑ  海の捨子  風が吹いてゐる  山脈  海の天使

一九三六年

季節の夜  季節

 

翻訳詩

SLEEPING TOGETHER ハリー・クロスビー

室楽 ジェイムズ・ジョイス

男・手風琴・雪の破片 ハーバート・リード

詩の一群 チャールズ・レズニコフ

花が咲いてゐる ブラヴィック・インブズ

POEM ハワード・ウィークス

寡婦のジヤズ ミナ・ロイ

眠れる者からの帰り デイヴィッド・コーネル・デヨング

瞑想 ラルフ・チーヴァー・ダニング

夜の想念 R・S・フィッツジェラルド

谷間の方へ ノーマン・マクロード

 

散文・日記・書簡

モスコオ芸術座小話

『椎の木』第二年の注意を惹かれた作品 続

ノエルを待ちつつ

冬の日記

Chamber music

水晶の夜

魚の眼であつたならば

衣巻さんと詩集『足風琴』

私の夜

シツトウエルの〈田園喜劇〉について

きりのはなたば

春・色・散歩

童話風な

樹間をゆくとき

明るい夢と江間章子さん

日記

春山行夫宛書簡

内田忠宛書簡抄

内田忠宛書簡抄

川村欽吾宛書簡

春山行夫宛書簡

 

翻訳文

髪の黒い男の話 モルナール・フェレンツ 

イソツプなほし書き オルダス・ハクスリー

蠅のスープ モルナール・フェレンツ

二つの話 モルナール・フェレンツ

闘争 シャーウッド・アンダーソン

芸術と精神分析 アーネスト・ジョーンズ

新レパアトリイ劇場の設計解説 ノーマン・ベル・ゲッデス

憑かれた家 ヴァージニア・ウルフ

いかにそれは現代人を撃つか ヴァージニア・ウルフ

遅い集り ジョン・チーヴァー

媚態 フランシス・フレッチャー

 

年譜    

解題 島田 龍    

解説 詩人左川ちかの肖像 島田 龍

ブックガイド

 

【著者プロフィール】

左川ちか(さがわ・ちか)

詩人・翻訳家。本名川崎愛。1911年生まれ。北海道余市町出身、十勝地方の本別町で幼少期を過ごす。庁立小樽高等女学校卒業後に上京。10代で翻訳家としてデビュー。J・ジョイス、V・ウルフ、ミナ・ロイなど、詩・小説・評論の翻訳を残す。1930年に筆名を「左川ちか」と改め詩壇に登場する。同郷の伊藤整を始め、北園克衛・春山行夫・西脇順三郎・萩原朔太郎らに高く評価、詩誌『詩と詩論』『椎の木』『マダム・ブランシュ』などで活躍した。将来を嘱望されたが1936年に死去。享年24。J・ジョイス著/左川ちか訳『室楽』(椎の木社、1932年)、遺稿詩集『左川ちか詩集』(伊藤整編・昭森社、1936年)。本書は初の全集となる。

 

【編者プロフィール】

島田龍(しまだ・りゅう)

東京都中野区出身。立命館大学文学研究科日本史専修博士後期課程単位取得退学。現・立命館大学人文科学研究所研究員。専門は中世~近現代における日本文化史・文学史。関連論考に「左川ちか研究史論―附左川ちか関連文献目録増補版」(『立命館大学人文科学研究所紀要』115号)、「左川ちか翻訳考:1930年代における詩人の翻訳と創作のあいだ―伊藤整、H・クロスビー、J・ジョイス、V・ウルフ、H・リード、ミナ・ロイを中心に」(『立命館文学』677号)など。

書評ほか

毎日新聞(5/12)「詩歌の森へ」 評者=酒井佐忠さん

《初の全集は懇切な編集。散文や書簡、翻訳詩に年譜、解題、解説を全て収録する。ジェンダー概念を視野に、左川の全貌が明らかになるのは喜ばしい》

毎日新聞(5/18) 「ニッポンへの発言」 評者=中森明夫さん

《『左川ちか全集』の刊行は文学史上の一事件だ。〔……〕名久井直子の手による素晴らしい装丁は、さながら黒い宝石箱のよう。本自体がただならぬオーラを放っている》

毎日新聞(5/21) 評者=鴻巣友季子さん

 《驚異的な労作だ。〔……〕その硬質な詩語に撃ち抜かれる》

朝日新聞(5/25)「文芸時評」 評者=鴻巣友季子さん

《「私の物語」とたやすく引き寄せられないこの蒼蒼たる言の葉叢に、いまの読み手はどう対い合うだろう》

毎日新聞(5/25) 評者=大塚真祐子さん

《すでに今年最大の収穫といっても過言ではない。〔……〕潔い「私」と漆黒の夜、そこに屹立する孤独が高い次元で交差するのを見る》

ポリタスTV(5/27放送) 評者=石井千湖さん

《作品を読むと独特のイメージ、言葉遣いがある。〔……〕最後のワンフレーズに破壊力がある。〔……〕普段とはちがう言葉に触れたい人にすごくいい》

東京新聞(6/4) 評者=日和聡子さん

《当時のモダニズム文学を翻訳する活動が、自身の創作に影響を及ぼしているらしい点も興味深く、それらの影響を受けつつも確固たる独創性を感じさせる作品世界を築き上げたことにも瞠目する》

LOVE FM「OUR CULTURE, OUR VIEW」(6/12放送)

エル・ジャポン(22年8月号) 評者=石井千湖さん

《萩原朔太郎や西脇順三郎らも激賞したみずみずしい感性、表現力に、心揺さぶられる一冊》

an・an(7/6号) 評者=水沢なおさん

《自分の殻が破壊され、さらに修復される生命力に満ちていて、世界が広がるようなビリビリとした感覚がありました》

東京新聞(7/7) 「大波小波」

現代詩手帖(22年7月号) 評者=松尾真由美さん

《大げさにいえば詩の光が見えたのだった》

現代詩手帖(22年7月号) 評者=須永紀子さん

《驚異的な編者の仕事に敬意を表したい。〔……〕日本より海外で評価されてきた詩人だが、本書の登場によってこれから日本でも正統に評価され、研究されることを期待したい》

週刊金曜日(7月8日) 評者=五所純子さん

《左川の詩作思考を鮮やかにつかむことができる。〔……〕男性中心の詩史において左川の評価を遅らせもしたという。左川が先見的に突破していたものを、人生とともに振り返りたい》

共同通信配信(7月9日配信) 評者=暁方ミセイさん

《日本最初の現代詩人と呼ばれることもある。〔……〕硬質で、知的かつアヴァンギャルドな作品は、今読んでも古びておらず、熱狂的に読み継がれてきた。性と向き合い、乾いた文体で傑出した詩を書いた彼女は、フェミニズムの観点からも度々再評価されている。〔……〕詩を解する人は書かずとも詩人だ。新たな詩人よ、今こそあなたが、左川ちかに出会う時だ》

⽇本の古本屋メールマガジン(7月15日配信) 島田龍「なぜ『左川ちか全集』は生まれたか―書物としての「左川ちか」と解放の企図」

読売新聞(7月16日夕刊)

《「幻の詩人」と呼ばれていた左川ちか。全集が4月に刊行されると、異例の売れ行きをみせた。一部の詩は翻訳され、海外でも注目されているという》

図書新聞(7月23日号) 島田龍さん×奥間埜乃さん巻頭対談「現代詩の先駆、左川ちか 全集の刊行によって新たな読解、魅力を引き出している」

ひととき(22年8月号) 評者=内堀弘さん

《忘れられた詩人、というのもどうだろう。広く知られたことなど一度もなかった。〔……〕全集といっても一冊に収まる。その端正な書物の中で、彼女は永遠に若い》

図書新聞(7/30)「2022年上半期読書アンケート」 評者=日和聡子さん

《病のため二十四歳で夭逝した詩人の、高い知性と感性を映す先駆的な作品と活動のありように触れられる画期的な一冊》

図書新聞(7/30)「2022年上半期読書アンケート」 評者=八木寧子さん

《時に滾り、また醒めた眼差しを湛えて放たれる言葉は凛と冴え、やわらかく降り積もる》

図書新聞(7/30)「2022年上半期読書アンケート」 評者=木村朗子さん

《島田龍による充実した解説つきで出たのもうれしい》

図書新聞(7/30)「2022年上半期読書アンケート」 評者=荒川洋治さん

《女性詩人の初の全集。刊行の意義はある》

The Japan Times(8/11) Spotlight shines on poet Chika Sagawa decades after early death at 24

《A collection of poems published in April is selling surprisingly well, and some poems that were translated into other languages have caused a stir overseas.》

毎日新聞(8/28・9/12) よみがえる日本現代詩の先駆者 「幻の天才」左川ちかの魅力

《叙情性を排し、硬質ながらも熱を帯びた詩語たちは、長く「幻の天才」として伝説化されてきた詩人の声の輪郭をくっきりと描き、今ここに響かせる》

公明新聞(8/29) 評者=野村喜和夫さん

《モダニズムを超えた現代詩の先駆けである。一般にモダニズムというと、実験的ではあるがどこか地に足がついていないような印象がある。だが左川の場合は違う。詩人の実存に根ざした生や性のリアリティがあり、とりわけ、生地北海道を思わせる詩的大地性がある》

&Premium(22年10月号) 評者=池上規公子​さん(葉ね文庫)

《作品だけ読んでも味わい深いし、彼女の軌跡が丁寧に調べられているので、読みものとしても十分に楽しめます》

京都新聞(10/17) “幻の詩人”左川ちかの輝き 昭和初期活躍、全集で脚光

《「女性詩人として、いわゆる女らしさを期待して読まれるプレッシャーから自由であろうとした。一方で、私という主体を求め続け、作品の中にその揺らぎを刻みこんだところが、同様の問題を抱える現代でも読まれる理由だろう」》

西日本新聞(11/17) 「夭折のモダニズム詩人 左川ちか 進む再評価」

《じっくり練り上げられた強度のある言葉で構成された作品が時代を超えて支持され、版を重ねている。〔……〕左川の短く濃い人生を島田さんが丁寧にすくい上げている》

毎日新聞(12/10)「2022年この3冊」 評者=鴻巣友季子さん

《詩、散文、書簡、翻訳を全て収録した、年表、解題、解説付きの全集。夭折の人で活動期間は短いが、数年間に詩88編とさんぶんと翻訳を多数発表した》

週刊読書人(12/16) 「二〇二二年の収穫!!」 評者=中森明夫さん

《蘇る、左川ちか! 本全集の出版は文学史上の一事件だ‼》

毎日新聞(12/17)「2022年この3冊」 評者=堀江敏幸さん

《硬質な輝きを放つ言葉に熱い血をめぐらせるような詩業は、モダニズムの只中にあってすでにそこから抜けている》

週間ポスト(12/19) 評者=香山リカさん

《どのページからでも開けば、研ぎ澄まされ、かつ詩情にあふれた言葉が目に飛び込んでくる》

毎日新聞(12/22)

《日本で詩集は、それほど売れるものではない。ましてや、400ページ超の大著となれば、手に取ってもらうのも難しい。しかし同書は、4月の発売以来、3刷を重ね、現在7000部。各紙の書評にも取り上げられた》

日本経済新聞(12/24)

《モダニズムを再考する機会が重なる。モダニズムへの注目はしばらく続くだろう》

毎日新聞 記者振り返り(12/24)

《地元出版社も元気だ。全国的に話題となった『左川ちか全集』は福岡市の書誌侃侃房が手掛けた》

みすず 2023年1・2月合併号 評者=斎藤真理子さん

《待望の一冊で、島田龍氏の行き届いた解題がありがたい》