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英語でさるく 那須省一のブログ

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無為草堂にて

20180912-1536761700.jpg 台中。ここに「無為草堂」という茶店があることを聞いていた。食事もできるらしい。台中に来たら、ぜひ足を運ぼうと思っていた。草堂でランチを食すべく、ホテルを出て歩いた。私は旅ではできるだけ歩くことを心がけている。タクシー代が浮くし、健康にも良いが、第一の目的は歩きながら、周囲の事象をゆっくり見物すること。やはり自分の足で歩いて初めて垣間見ることができるものがある。
 それで台中も歩いた。ポケットに忍ばせた万歩計は11日は25,237歩を示した。この万歩計はご主人を喜ばせようと実際の歩数に上乗せしているのではないかと疑いたくなるときもあるが、この日はよくさるき(歩き)回ったことは本人が一番よく分かっている。方向音痴の私には地図通りに歩くのは至難の業でもあるが。
20180912-1536761602.jpg さて、冒頭に記した無為草堂。比較的空いていたこともあり、希望する池に面したテーブル席にすぐに案内してもらった。池に面した席を希望したのは、食事をしながら、池に餌を投げ入れ、集まって来る幾多の鯉の饗宴を楽しむことができると聞いていたからだ。餌を投げ入れると、鯉の群れがやって来た。水面上に大きな口を開け、餌をおねだりする鯉も数多くいた。中には亀もいて、こちらも同じく口を開けて来るのには参った。
20180912-1536761660.jpg カモの肉がメインの定食を食した後、地元の阿里山烏龍茶を頂いた。茶器から熱湯で温めた後にお茶を飲むだけあって、厳かに何杯もお湯を足して飲んだ。お茶代を含めて627元(約2,330円)を支払ったが、満足至極。
 この草堂は周囲に竹が茂っていたり、先述の池があったり、古い木造りの家の窓を爽やかな風が吹き抜けるなど佇まいも良かった。草堂の壁に台中を紹介した14年前の読売新聞及び英字紙デイリー・ヨミウリ(当時)の切り抜き記事が張ってあり、懐かしく読んだ。
 台中も居心地が良かったが、長居はできない。12日朝再び台中駅まで歩き、台南行きの電車に乗った。午前11時20分発で午後1時15分着。運賃は363元(約1350円)。
 電車の旅の楽しみは車窓の風景。この日もそれを楽しみにしていたが、車中でスマホをいじっていて、ふと、スマホが使えるのなら、パソコンもネットが使えるのではないかと思い、リュックから取り出して操作してみると、使えることが分かった。台北の空港でスマホ用にルーターと呼ばれる機器を旅行期間中借り受けていたのだが、これはパソコンにも援用できることを初めて知った。
 それで車窓の風景はしばし忘れて、大リーグのゲームをチェックしながら、アメリカ人の友人から依頼されたばかりの彼の自作の歌の歌詞の和訳にも精を出すことにあいなった。彼は関西の大学で英語を教える傍ら、音楽活動にも勤しんでいる。作詞は解釈がやや難解で、あれこれ翻訳の文言を思案しているとあっという間に時間が経過した。車内アナウンスで台南が次の停車駅だと知って、急いで下車する支度にとりかかった。
 定刻通りに台南着。駅舎の外に出て見ると、快晴とは言えないものの明るい陽射しが差している。今回の台湾の旅で初めて出合った日光だ。やはり旅はこうでなくちゃ! 天気予報だと、凄い台風が台湾方面に向かっているようでもある。次の高雄行きが危うい。台風などどこかに消えてくれ!

笑顔の台中へ

20180911-1536628483.jpg 居心地のいい台北を離れ、10日、台湾の西北部を走る電車に乗り、台中に入った。日本で言えば特急電車のような感覚だろうか。台北を午前11時きっかりに出て、台中に午後1時15分に到着した。台北駅の窓口で出発直前に片道切符を購入したが、座席指定で375元(約1395円)だから凄く安いような気がした。
20180911-1536628521.jpg 列車はほぼ満席。この日朝もいつもの大衆食堂でしっかり朝飯を食べていたのでランチは抜きでもいいかと思っていたが、駅弁も売る車内販売のカートが来た。どんな弁当か興味もあるので買い求めた。80元(約300円)。小ぶりの骨付き豚肉弁当といった類のものだったが、総菜のキャベツやウズラの小さな卵のようなものも美味くて満足した。
20180911-1536628593.jpg それより嬉しかったのは台北駅で買っておいたペットボトルのお茶が独特の風味で悪くなかったこと。日本のペットボトルのお茶では味わえない風味だなあとボトルをつらつら眺めると、何と苦瓜(ゴーヤ)のイラストが描かれている。「健康の油切」の「分解茶」と銘打っている。苦瓜の種子を活かしたお茶のようだ。私はほぼ毎日のようにゴーヤをらっきょう酢で漬けたものを食しており、ここでもゴーヤが味わえると嬉しく思った。
 さて、台中に近づくにつれ、曇天が少しずつ明るくなっていったような気がした。晴天とは呼べないだろうが、少なくとも雨の心配はないようだ。台中のホテルは台北からすでに電話で予約を入れていた。何だかよく分からないが、ネットで予約するより、直接電話した方が安くなるケースもあるみたいで、このホテルもネットで調べておいた価格より安かったので飛びついた。台北の定宿に比べれば高かったが、2泊の予定なのでまあいいか!
20180911-1536628626.jpg 台中駅に着いてとりあえず、お菓子を売っているお店に足を運んだ。台湾を熟知している新聞社勤務時代の後輩君から薦められていたからだ。「宮原眼科」という名称のお店で、昔の稼業名をそのまま残しており、アイスクリームが絶品だとか。確かに辺りをきょろきょろしながら歩いていたら、そのお店の前にだけ異様な人だかりがしていた。さすがに今回は諦めて通り過ぎようとしていたら、ほとんどお客のいないお店の一角があった。
20180911-1536628673.jpg コーヒーでも飲めるのかとカウンター内の女性のスタッフに声をかけると、立ち飲みとなりますが、それで良ければと言うではないか。ちょっと喉が渇いてもいたので、お店の中に足を踏み入れた。私が片言の中国語で何とかやり取りを試みると、英語を交えながら辛抱強く付き合ってくれた。私が注文したコーヒーフロートのような飲み物の味はどうですか?と尋ねてきたので、NHKラジオ講座で習った「不错。」と答えると、それは英語だと”So so.”(まあまあ、良くも悪くもない)というニュアンスですよ、といった趣旨のことを言う。
 私の記憶が正しければ、ラジオ講座では「不错。」は「大変良い」といった意味合いの表現と教わったような気がする。台湾では受け取り方に微妙な差があるのかもしれない。いや、個人によって印象が異なるだけのことかもしれない。この辺りはこれからより深く理解できるようになるだろうと願っている。
 いずれにせよ、たまたま飛び込んだお店で上記のような勉強になるやり取りができた。笑顔の素敵な彼女たちの写真も撮らせてもらった。「犬も歩けば棒に当たる」ということか。私はこの慣用句には苦い思い出があるので、あまり使いたくはないのだが・・・。

再び台北に

20180909-1536502761.jpg 去年9月に初めて台北に旅した際に次のようにこのブログで書いている。————今回の台北の旅で心に決めたことがある。台北には9月のこの時期には絶対に行かない。あれほど蒸し暑いのには参った。聞くと6月ぐらいからそうらしい。だから、台北に足を運ぶとしたら10月下旬から12月。それと3月から5月かな。————
 このことを忘れたわけではない。だが、まさに二度と行かないと誓ったはずのその9月に私は再び台北にいる。非常勤講師とはいえ、仕事に何らの影響を及ぼすことなく、ある程度の期間、外国に旅することができるとなると、やはり、この時期が一番動きやすいのだ。そういう次第で7日朝、福岡空港を発ち、台北の桃園国際空港に降り立った。桃園空港は海外からの観光客で混雑していた。そのかなりの数を日本人客が占めていたものと思われる。
20180909-1536502796.jpg 蒸し暑さは覚悟していたが、残念ながら、台北はこのところ雨模様のよう。昨日(8日)はバケツをひっくり返したような雨が夕刻にかけ降っていた。とても散策などする気はおきない。今年は蒸し暑さに負けないように短パンを持参してきた。短パンでさるき(歩き)回るつもりだ。しかし、晴れ間が見えないことには・・・。
                  ◇
 台北の定宿としているホテルのフロントにいる中年の女性陣とはもう顔馴染みになっており、こちらのたどたどしい中国語に中国語で付き合ってくれる。
 昨日のランチは前回の旅で知り合った地元の若い姉妹二人と食べた。中国語に関する素朴な疑問点を尋ね、親切に答えてもらった。姉は英語が達者で妹は日本語が上手。彼女たちは「風変わりな日本のおじさん」と思ったかもしれないが、愛想よく付き合ってくれた。
                  ◇
 私の泊まっている安ホテルの部屋でも日本のNHKの他、大リーグや欧米のスポーツを楽しめる多チャンネルのテレビがある。それでテニスの全米オープンを見ることができた。普段はテニスにはあまり関心がないが、女子決勝にまで駒を進めた大坂なおみ選手はさすがに応援せざるを得ない。まさかあのセリーナ・ウィリアムズまで打ち負かして優勝するとは思わなかった。特にあのようなアウェイの決勝戦でセリーナ選手に対する熱狂的な声援が飛び交い、主審の判定にブーイングの嵐が巻き起こる異様な雰囲気。それに屈しなかったなおみ選手の精神的タフさは特筆に値する。
 台北の英字紙では彼女の大活躍をロイター電を使って報じていたが、この記事は日本の社会におけるいわゆる「ハーフ」と呼ばれる人々の微妙な立場にも言及していた。言及せざるを得ないだろう。例えば次のようなくだり。While Japan is becoming more ethnically diverse – one in 50 births is to interracial couples — there is still plenty of prejudice against haafu, or half-Japanese, including cases of bullying against mixed-race children.(日本は新生児の50人に1人は国際結婚のカップルにより生まれるなど人種的により多様性を抱える社会になったが、ハーフ、つまり片親が外国人である同胞には今なお多くの偏見が残っており、そうした混血の子供たちは時としていじめに遭うこともある)
 「ハーフ」にとって変わる日本語の表現がないものだろうかと私はよく思う。

しばらく聞けない「オオタニサン!」

 明日から再び台湾に旅する予定。これが3度目の台湾の旅だ。今回は2週間程度の滞在を予定しており、台北だけでなく、台中や台南にも足を伸ばしたいと考えている。目的はもちろん、中国語の実地研修だ。これまでの旅では中国語はほとんど話していない、いや話せていない。今回はできるだけ中国語で話すよう努力したいと思っているが、はてさてどういうことになるやら。
                 ◇
 木曜朝、目覚めて、テレビをつけると、北海道で大きな地震があったことを伝えている。またか。気がふさぐ。四国から近畿にかけて強い台風が襲い、関西空港の滑走路が水浸しになるなど、大きな被害が出たばかり。日本列島は災害が相次いでいる。自然のなせる業だからどうしようもないこととはいえ、気がふさぐ。近い将来に発生の可能性が警告されている首都直下地震とか南海トラフ地震のことを考えると、気がふさぐどこの話ではない。
 そんなことを考えると、悠長に台湾を旅していいものかと少し思わないでもないが、私が一人、福岡の寓居に籠って沈思黙考していても屁の突っ張りにもならないから、予定通り出かけることにする。
 冷蔵庫の中もほぼ生ものは食べ尽くした。タッパーに付けているらっきょう酢の野菜の残りも今晩胃袋に収めれば完了。心置きなく旅立てる。
                 ◇
 いや、心残りがないわけではない。以下に記す。まず、大谷翔平君の活躍をケーブルテレビの生中継で楽しむことができなくなることだ。これはとても残念。旅先で毎朝夜、パソコンで確認することになるだろう。ただ、大リーグのホームページを見ると、彼が痛めていた右ひじに新たな損傷の個所が見つかったという。手術をした方がいいとの指摘もあるようだ。右腕にメスが入れば、今シーズンは無論、来シーズンもほぼ棒に振ることになるかもしれない。What a waste! (なんともったいないことか)。大リーグ生中継ではその翔平君が今、3番DHで出場している対テキサスレンジャーズ戦で5回表、17号ホームランを放った。凄い選手だ。実況している米国人アナウンサーも「オオタニサン、ビッグフライ!」と嬉しそうに叫んでいた。手術、要らないんじゃないの!?
 NHKラジオの語学講座が聞けなくなるのも残念。中国語、韓国語ともに初級講座は今月は半期の講座が終了する月であり、いわば佳境を迎えている。2週間そっくり「欠席」することになり、劣等生の私には痛い。でも、これも致し方ない。旅行期間中、ホテルの部屋でテキストを熟読することにする。
 もう一つ、心残りがある。このブログでも少し前に書いたが、毎週日曜夜に中国中央電視台から放送されている家族ドラマの「父母爱情」(両親の愛)が今度の日曜夜に最終回を迎えるのだが、私はこの最終回を見ることができない。最終回の内容はだいたい予測がつくのだが、見たい。テレビドラマをここまで楽しんだのは、あの「渡る世間は鬼ばかり」以来だ。
 とここまで書いてきて、何だか自分がとても「俗物」に思えてきた。いや、俗物であることは事実だから、それはそれで一向に構わないのだが・・・。

ケイティ夫人、安らかに!

 アメリカ・ニュージャージー州に住む恩師から悲しい知らせが届いた。恩師の奥様が病気で急死なされたとの由。メールの表題に奥様の名前、Katyが目に入った時、なぜか、訃報だと直感した。恩師が私の母校の宮崎大学で教えていた頃はケイティ夫人とやり取りしたことはなかった。私が新聞社を辞め、アフリカの次にアメリカを旅していた時にニュージャージーの恩師の家を訪ねて初めて会った。恩師の家で数日間、お世話になったが、楽しいひとときを過ごさせてもらった。いつかアメリカを再訪する機会があれば、また会いたいと心から願っていた。恩師のメールには愛妻を突然に失った悲しみがあふれていた。
 海の向うの訃報に思いを馳せていた時、ジャパン・ニュース紙をめくっていたら、インドネシア・ジャカルタ発でアジア大会の話題物の記事が目に留まった。大会が行われているパレンバンに住む夫婦が開会式当日に誕生した第三子の娘の名前を「アジア大会」と名付けたとか。両親は娘が成長して気に入らなければ、変更すればいい。でも娘にはインドネシアの人気スポーツのバドミントンかバスケットボールの選手に育って欲しいと語っていた。
 今年は実姉やかつての上司の死にも接し、人の世の営みのはかなさを改めて実感した。命に限りがあるのだから、80年前後で生きとし生けるものの「入れ替わり」があるのは自然な流れだ。それは分かり切ったことだ。私もいつか必ず「お迎え」が来る・・・。
                  ◇
 日本のプロ野球もアメリカの大リーグも佳境に入りつつある。大リーグは依然、大谷翔平君の一挙手一投足に魅せられている。右ひじの痛みを癒していた翔平君が日本時間の3日朝(現地時間2日夜)、ほぼ3か月ぶりにマウンドを踏んだ。相手は昨年のワールドシリーズを制したヒューストンアストロズ。残念ながら、私は年に一度の定期健診日だったため、初回だけ見て出かけた。帰宅後にテレビを付けると、3対2で負けていて、翔平君はマウンドから消えていた。パソコンで急ぎチェックすると、3回途中で交代している。
 大リーグのホームページを読むと、2回の投球の際に打球に思わず右手を出し、ボールが手に当たったのが災いしたようだ。球速が明らかに落ち、ホームランを打たれたのもこれが要因となったのかも。一難去ってまた一難とならなければいいのだが・・・。
                  ◇
 プロ野球の方は惰性で付き合っている。巨人がもう少し元気ならと思わないでもないが、相変わらず、ピリッとしない試合を続けている。
 そう思いながら、読売新聞のスポーツ欄のコラム記事を読んでいたら、先日、次の文章に出くわした。「先発投手が三回までに8点を奪われ、KOされた。(中略)巨人の高橋監督は内海が崩れたこの一戦で、あえて打線と守備に言及することで、今後の戦いざまを問うた」。私は「戦いざま」という表現が気になった。「生きざま」という語句にも何だかなあと思うが、これは今では許容されている言い回しのようだ。しかし「戦いざま」はさすがに無理があるのではないか。この記事の筆者が巨人の無様な戦い方に辟易してしまい、思わず、「戦いざま」と書きなぐってしまったのなら、それはそれでよく理解できるが・・・。

女嫌い(misogynist)なの?

 8月も残りわずかとなった。現役をよして久しい身には毎日が日曜日みたいなものだが、8月が終わるとなると、やはり少しは思うこともある。それが何か記すことは難儀だ。昨日はコンビニの酒類の棚の前で足が止まった。焼酎、日本酒、ワイン、ウイスキー。ウイスキーの小瓶が手招きしている。氷を浮かべて飲んだら美味そうだ。思わず手が出そうになったが、やっぱりやめた。飲む理由がない。旅にでも出て非日常の生活になったらまた別の話だが・・・。
 旅と言えば、来月になったら、また台湾を歩こうと思っている。中国語がどれだけ上達したか試してみたい。たいして上達していないことは本人が一番承知しているもののだ。台湾もまだ暑いだろうなあとパソコンで台湾の天気をのぞいてみたら、見事なまでに雨マークが並んでいる。台北の英字紙をネットで見ると、台湾はこのところ雨天が続いており、住宅の浸水などの深刻な水害も発生しているようだ。同情を禁じ得ない。
                 ◇
 巨人がようやく調子づいてきたと思った日曜。阪神戦をテレビ観戦していたら、5点リードの8回表、セットアッパーの沢村投手がホームランにヒット、四球を連発して、まさかの6点を奪取され、リードをふいに。ビデオテープを見るかのような逆転負けとなった。私のようないい加減な巨人贔屓はいいとして、熱狂的な巨人ファンは不快指数が一気に跳ね上がったことだろう。これも同情を禁じ得ない。あれだけの戦力を抱えての不甲斐ない試合内容は監督以下首脳陣の無能さを物語っているとしか思えない。
                 ◇
20180827-1535349208.jpg トランプ米大統領が元側近の黒人女性をlowlifeとか dogなどと侮蔑的に形容したことは前に書いた。オマロサという名の女性。彼女がその後、トランプ政権の知られたくない内幕本を刊行したので、大統領が激怒しているのだろうと考えていたが、ジャパン・ニュース紙が転電した英タイムズ紙の記事を読んで薄気味悪くなった。
 記事の見出しは “I came to realise that Donald Trump is a misogynist and a bigot”(私はドナルド・トランプ氏が女嫌いで偏狭な考えの人だと気づくようになった)。オマロサ氏は自著の販売PRのため、各地でインタビューに応じているようだ。タイムズ紙の記事では大統領が普段から人種差別主義者的言葉を口にしていて、n***er という絶対口にしてはいけないタブーな語も使っていることを示唆していた。
 トランプ大統領が知名度を高めたテレビ番組に出演したことでオマロサ氏がトランプ氏の知遇を得て15年。私が薄気味悪いと感じたのは、政権の重要スタッフに加わったオマロサ氏がトランプ氏の資質が明らかに「劣化」していると語っていたことだ。トランプ氏に出会った頃は彼は機知に富んでいて頭もシャープだったが、最近は知的衰退の兆候があるという。政権の政策も十分に認識しておらず、重要な政策の決定は大統領の周辺にいるごく一部の取り巻きによって下され、大統領は直接関知していないことを明らかにしていた。
 日本の同盟国のトップであり、世界最高の権力者の実態がもしそうだったら、恐ろしいことだ。大統領の任期はまだ二年以上、たっぷりと残っている。

立て、動け、踊れ!

 普段の生活で毎日のようにプールで泳ぎ、歩いているのだが、最近は体重が「高値安定」状態だ。何か他の手立てを考えたい。そう思案していたら、英字紙で気になる記事を見つけた。“Want to lose 5.5 pounds in a year?”(一年で2.5キロ痩せたい?)という見出しで、イスに座り続ける生活を戒め、座るより立て、動け、踊れと薦めている記事だった。「いつも座っている」(sedentary)生活が健康に良くないことは承知していたが、この記事を読んで改めてもっと体を動かすことの大切さを認識した。
 記事は平均的アメリカ人が普段の暮らしで一日7時間以上イスに座って過ごし続けており、そのうち6時間を立つようにすれば、一日に54カロリーを消費することになり、一年でみれば、約2.5キロの体重減少につながるという。アメリカでは会社などでも従来の座り机ではなく、standing desk(立ち机)を使い、立って仕事をする人が増えているとか。
                  ◇
 読売新聞の書評欄で中国の作家のことを書いた近著が紹介されていた。『作家たちの愚かしくも愛すべき中国』(訳著者・飯塚容 中央公論新社)。タイトルからして面白そうだったので、書店で買い求めた。中国通の人だったら、紹介されていた3人の作家、高行健、余華、閻連科は馴染みの作家たちなのだろうが、私にはどれも初めての人物ばかり。
 帯の紹介文をそのまま記すと、「亡命したノーベル賞作家、高行健 発禁処分を受けたノーベル賞候補作家、余華、閻連科 『現実』を活写し、人びとの『絶望』をつつみ込む文学者の声」。訳著者の飯塚氏は「はじめに」の中で次のように述べている。「彼らの社会批評は冷静かつ客観的であると同時に、鋭く的をついている。文化大革命、改革開放を経て今日に至る中国社会の変貌の様相を分析し、天安門事件などの敏感な問題についても直言し、何らはばかるところがない。その結果、一人は祖国を飛び出し、残る二人も体制から半ばはみ出している。(中略)中国社会の愚かしさを指摘するのは、中国に暮らす人々の心の痛みに寄り添っているがゆえである。彼らが世界に発する声を私たちはしっかり受けとめ、正しい中国理解につなげていかなければならない」
 中国語を独学している身に興味深い記述があった。それは高行健氏が訳著者とのインタビューで語っていた次の一言。
 中国語の古文には長い歴史がありますが、現代中国語は世界的に見ても若い言語と言っていいでしょう。二〇世紀に入ってから、話し言葉による創作が始まりました。ですから、まだ一〇〇年ぐらいの歴史しかないことになります。(中略)現代中国語は非常にフレキシブルです。中国語には時制がなく、動詞の形態変化もありません。同じ言葉が動詞に使われたり名詞に使われたりします。文法も言語学者があとから作り上げました。これは西洋の言語にない特徴だと思います。したがって作家は非常に自由な創作ができますが、文章表現が正確さを欠くという問題も生じます。
 中国語を「フレキシブル」と見るか、「野放図」と見るかは、人によって評価が異なるだろう。初学者の私は高行健氏の「自由な創作ができる」という指摘に勇気づけられた。中国語の文法とか正しい語法に意識過剰にならず、伸び伸びと学んでいこう。

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