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英語でさるく 那須省一のブログ

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“a minor miracle”

20191014-1571035774.jpg ラグビー・ワールドカップの熱狂がさらにボルテージを上げている。むべなるかなだ。日曜夜のゲームは私も少なからず興奮しながらテレビで見た。アイルランドに勝利したのはともかく、負ければグループリーグでの屈辱の敗退が決まるスコットランドは必死になって攻めてくるだろう。体力と底力に優るラグビー伝統国のスコットランドを破るのは並大抵ではないだろうなと思っていたが、堂々と力で押し切った。
 私はラグビーには詳しくない。ロンドンで暮らした3年間、観戦に足を運んだこともないし、BBCが放送していたラグビーの本場のゲームも熱心に見た記憶はない。日本の代表チームが当時は逆立ちしてもイングランドやスコットランド、ニュージーランドなどの伝統国に勝てないことも影響していたのだろう。それが今や、ワールドランクで7位にまで上昇するほどになっている。
 月曜朝、BBCのホームページをのぞくと、日本代表を称賛する表現があふれていた。台風19号の惨禍を克服しての国を挙げての勝利とうたっていた。実施が危ぶまれていたゲームが行われたこと自体が “a minor miracle” (奇跡に近い至難の業)であると述べ、その上スコットランドを破ったことは “A huge moment for this incredible country” (この驚くべき国にとって胸を張れるひととき)と称えている。記事を抜粋して紹介すると・・。
 After a horrendous Saturday that brought death and destruction, it was a minor miracle the game went ahead in the first place, a roaring tribute to the people responsible for clean-up after Hagibis battered this area 24 hours earlier.
 When they turned over that last Scottish raid the acclaim of the home support was deafening. A huge moment for this incredible country, a huge moment for this World Cup. Scotland are heading home. Japan? Who knows how far they're heading. Further than they've ever gone before, that's for sure.
 日本代表の次のゲームは20日の準決勝進出をかけてアフリカの強豪、南アフリカとの一戦。私はソウルにいる。ホテルの部屋でも観戦できるだろうか。まさかどこかお店で実況中継を流してなどいないだろうなあ。日韓関係では寒風が吹き荒ぶ時期だけに。
                 ◇
 韓国語の学習。NHKラジオの初級講座は母音や子音をやっている。だいたいは聞き流すことができる。中級はそうはいかない。何度もテキストを読み返している。本日は「こういうときは、どうすべきでしょうか」という助言を求める場面でのやり取りが出てきた。「이럴 땐 어떻게 해야 되죠?」(イロル テン オットッケ ヘヤ テジョ?)。これなど、ソウルの旅先で使えそうな表現に思える。先方の返答の内容を理解するのは一苦労だろうが、ゆっくり話してもらえれば少しは会話が成立するかもしれない。
 私は上記の文章は目で見れば、何となく分かる。問題はこういう文章がさっと頭に浮かび、口にできるかだ。そしてこの表現をさまざま場面で応用できればいいのだが、それはどうも・・。そうできれば私にとって “a minor miracle” だ。

台風に再び思う

20191013-1570967528.jpg 台風19号が大きな爪痕を残して去った。私の住む九州は被害を免れたが、首都圏を中心とする東日本では記録的な豪雨に見舞われ、多くの人命が失われたようだ。それにしても、河川の水が堤防を越え、住宅地に流れ込み、家屋の浸水をもたらす水害の類は何とか事前に手を打てないものだろうかとつくづく思う。
 英BBC放送のホームページ上では台風19号(Typhoon Hagibis)による惨状がトップニュースで報じられていた。自衛隊が出動して取り残された住民を救助する活動の写真が掲載されていたが、大きな台風が来るたびにそうした写真を目にするのは、自然災害に弱い都市、即ち災害に無力の日本というイメージを国際社会に定着させることになる。
                  ◇
 大リーグ。ナショナルリーグは日本人選手所属のチームが消えたので関心も消滅。アメリカンリーグは田中マー君のニューヨークヤンキースが残っているので応援継続。日曜日朝(現地は土曜夜)アリーグのチャンピオン決定シリーズとなるプレーオフ第2弾が始まった。ニューヨークヤンキース対ヒューストンアストロズ。絶対的エースを2人も抱え、猛打が売りのアストロズはこの後に続くワールドシリーズ制覇の下馬評も高い。対するヤンキースの第一戦の先発を託されたのはマー君。
 マー君が初回からポカスカ打たれるのではないかと案じていたが、制球よく投げていた。三振を取るよりも打たせて取る巧みな投球。味方の好守にも助けられて5回を1安打無得点で抑え、チームは6回表を終えた時点で3対0でリード。しかし野球は6回以降が勝負だ。私はこの日、英語教室のある日だったので、後ろ髪を引かれる思いで自宅を後にした。
 教室を終え、スマホで確認すると、マー君は6回裏も抑え、1安打4三振の好投でマウンドを降りていた。まずは文句なし。できればせめてもう一回、7回までは投げ切って欲しかった。球数はわずか68球。ブーン監督が第1戦を何としても勝利するため、石橋を叩いて渡る思いで早めの投手交代を決断したのだろう。ヤンキースはアストロズと異なり、先発投手陣は弱いが、中継ぎ、抑えのいわゆるブルペンは大リーグ一とも称されている。
 この日、結局ヤンキースは打線がその後も追加点をあげ、7対0で快勝した。マー君はプレーオフ第1弾でも勝ち投手となっており、10月のプレーオフシーズンに強い評価をさらに上げた。今プレーオフは7戦4勝制。もう一戦投げることを求められることになる可能性大だ。マー君は不調な時期には手厳しいヤンキースファンから「高い買い物」と揶揄されることもあったが、今は評価が一変しつつある。ワールドシリーズまで駒を進め、さらに活躍すれば、そうした雑音が一掃されることは間違いない。
 ヒンチ監督は次のように評している。“That’s probably the best that we’ve seen him in a small sample to execute his game plan, his pitches, his tempo,” Astros manager AJ Hinch said. “Just about everything was working for him. He was just really, really good tonight.” (「彼と対戦したことは多くはないが、狙い、投げる球、テンポなどおそらくこれまででベストの投球だったと言える。すべてが彼のプラスに働いていた。彼は今夜、本当に本当に良かった」)。敵将にかくも褒められるとはマー君も悪い思いはしないだろう。

That's batshit crazy!

20191010-1570711005.jpg シリアを中心とした中東情勢が緊迫している。発端はトランプ米大統領がシリア北部にクルド人勢力とともに展開していた米軍の撤収を表明したこと。クルド人勢力に敵対するトルコ軍の軍事作戦に道を開くこととなり、シリア北部への空爆や砲撃が始まった。
 米国はこれまでクルド人勢力を支援して、イスラム過激派組織「イスラム国」の掃討に当たってきた。今回の米軍の行動はクルド人勢力への裏切り行為に当たるのではないかと、米国の与党共和党内からも反発の声が上がっている。このニュースをフォローしていて、オバマ前政権で安全保障担当の補佐官を務めていたスーザン・ライス氏がトランプ大統領のこの方針を「支離滅裂」と非難しているニュースが目に入った。見出しでは “This is bats**t crazy” となっていた。おそらく英語でいわゆる four-letter word と呼ばれる、あまり公然とは口にできない卑猥な語だと推察がつく。本文を読むと、batshit と出ていた。batshit crazy という語彙は私の辞書には掲載されていない。ネットで調べると、「支離滅裂」とか「常軌を逸した」といった意味のようだ。unbelievably crazy といったところだろうか。
 トランプ大統領の方針はこれまで米軍と一緒にイスラム国打倒のために戦ってくれていたクルド人勢力が武力に優るトルコ軍の攻撃にさらされるのを黙認する行為に他ならない。ウクライナ疑惑から弾劾訴追の動きが加速しているトランプ大統領に対する非難の声はますます大きくなるだろう。国際政治の場から早く退場して欲しいと願う声も勢いを増すのではないか。異国の指導者が米大統領の苦境に我が利ありと無法な蛮行に出ることがないことを祈りたい。
                 ◇
 勝負の世界は非情、ということを改めて実感した。プレーオフが佳境を迎えている大リーグ。ナリーグでは木曜日(現地では水曜日)リーグチャンピオン決定シリーズに出場する2チームが決まったが、何と、前田健太投手の所属するロサンゼルスドジャースはワシントンナショナルズに信じ難い逆転負けを喫し、プレーオフから敗退した。2勝2敗で迎えた最終戦、ドジャースは有利なホーム球場にナショナルズを迎えた。1、2回に好調な打線が計3点を挙げてリードした時には、これでプレーオフの勝ち上がり確実と多くの人々が思ったことだろう。
 私は木曜朝からずっとこの試合を見ていた。7回を終わって3対1でドジャースがリード。お昼過ぎに用事があったので出かけた。中継ぎに回った前田君も控えているし、まあ勝つだろうと思っていた。用事を済ませて帰宅すると、何と痛恨の逆転負け。しかも、救援した大エースのカーショーが8回に2本のソロホームランを浴びて同点とされ、延長10回表には別の投手が満塁ホームランを打たれ、裏を完璧に抑えられ、7対3でゲーム終了とは。
 前田君はカーショーの後を引き継ぎ、3者三振の見事な投球を見せていただけに、ベンチの采配ミスではと思わざるを得ない。レギュラーシーズンではドジャースはリーグトップの106勝を挙げ、ワイルドカードから勝ち上がってきたナショナルズは93勝に過ぎない。それでもリーグチャンピオン決定シリーズに出場する権利を獲得したのは伏兵ナショナルズだった。ドジャースファンには悪夢のような試合だったことだろう。残念! 

벼락 공부(一夜漬け)

 来週半ばからの韓国の旅が迫ってきたので、韓国語の学習に力を入れている。手にしているのはNHKラジオで現在放送中の韓国語中級レベル「レベルアップハングル講座」のテキスト。この講座は最初の放送は2015年秋のようだが、私は昨年1-3月に初めて聴講したので、今は2回目。私には結構難しいと思われる文章も出てきたりしているが、ソウルで韓国語を使う際に大いに役立ちそう。 
 韓国語の独学を始めて以来、これまで釜山には何度か足を運んでいるが、手ごたえを感じたことは皆無に近い。今回は少しは違うのではないかと期するところ大だ。そう期待するのはこれまでの釜山の旅では身につけていなかった韓国語の表現が幾つか理解できるようになっていることだ。
 例えば、「~のようです」「~みたいです」というマイルドな言い方は以前は全然できていなかった。そこまでは手が回らなかったと言うべきか。今は「~같아요」(カッタヨ)と言えば、そういう意味合いを表現できることを承知している。「明日は雨が降りそうですね」ならば、「내일은 비가 올 것 같아요.」(ネイルン ピガ オル ゴット カッタヨ)で大丈夫なようだ。これくらいはテキストやメモ帳を見ないでも何とか口にできるかなと思う。
 また釜山の旅では「今日は街を散歩するつもりです」という文章ならば、これまでは「산책할 생각합니다」(サンチェックハル センガク ハムニダ)という固い表現しか知らなかったが、今は「산책할 거예요」(サンチェックハル コエヨ)という言い回しを習得した(と思っている)。
 自信はない。できるだけ英語(日本語)に逃げないで、精一杯韓国語をしゃべり、聞き、力にしていこう。そうでないと、費やす時間とお金がもったいない。
                 ◇
 また、大きな台風が日本に向かっている。九州には向かってこないように、ネットで気象衛星画像を見て、念を送っていたが、関東圏に上陸しそうな雲行きだ。千葉県は先の台風で大きな被害が出たばかり。猛威を振るわず、さっと過ぎ去るように祈り、念を送っている。
 日本で開催中のラグビー・ワールドカップも盛り上がっているが、大リーグもプレーオフの熱戦を展開している。田中マー君のいるニューヨークヤンキースは第一関門を順調に勝ち上がり、アリーグの優勝決定シリーズに駒を進めた。前田健太投手のロサンゼルスドジャースは明日のゲームに勝てば、ナリーグの優勝決定シリーズに進むことができる。日本人ファンの理想はヤンキース対ドジャースのワールドシリーズだ。
 マー君がアリーグの優勝決定シリーズ進出へ先発勝利で貢献した先日の試合後に、同僚の強打者アーロン・ジャッジが次のようにマー君のことを称賛していたのが印象に残っている。“He’s an artist out there. Every postseason he always has a special game.” マウンドでの力投をアーチストと形容されるとは頼もしい。つい最近、大リーグのホームページ上でマー君のことを Masa-hero とユーモラスに呼んでいたのを思い出す。こうした言葉遊びはネイティブスピーカーでないと思いつかない。両親が彼を「将大」と名付けた時に、海の向こうでいつかMasa-hero と称えられるとは想像しなかったことだろう、きっと。

健康診断でノックオン

 毎年秋にお世話になっている市の定期健診。現役を退いた身にはありがたい健康チェックだ。大腸がんと胃がんの検査も追加料金でお願いしている。大腸がんの検査結果はほどなく届いて今年も「陰性」。胃がんの検査結果は保健師の面談の日の前日まで届かなかった。
 それで正直、何か異常があったのかなと少し気になっていた。かつて新聞社勤務時代の定期健診で私の胃のレントゲン写真を見た勤務医の先生が「ほおー、これはテキストとして使いたいぐらいのきれいな写真ですね」とほめてもらったことがあり、他の部位のがんはともかく胃がんだけは一生免れるのではと思っていたので、そんなに真剣には心配していなかったものの、異常なしとの検査結果には安堵した。
 しかしながら、保健師さんとの面談では肝機能、脂質代謝が芳しくないとお小言を頂戴する始末となった。メタボ判定で予備群に該当するとは。コレステロールなどの脂質代謝が悪いことは承知していたが、断酒して以来、好転していた肝機能の数値がことごとく悪化していたのには驚いた。確かに週末には軽く飲酒するようになっているが、昔に比べれば喉を潤す程度だ。保健師さんからは肥満及び血糖値の上昇でも肝機能は悪化すると指摘された。
 スロージョギングもあまり効果がないということか。それもショック。まあ、これから自分なりに対策を考えていこう。とにかく体重を落とし、腹囲の数値を下げなくては!
                 ◇
 10月。私にとってとても有益なNHKラジオの中国語と韓国語の講座も新しいクールに入った。初級、中級ともに一度は聞いたことのある再放送。これは色々な意味で有難い。第一に初級講座でも忘れていることが少なくない。もっと正確に言えば、頭にしっかり根付いていない語彙や語法が多い。だから、再度そういうものに触れ、脳裏に定着させられるのは実に有難い。しっかり記憶できればの話だが。
                 ◇
 ラグビー・ワールドカップがますます熱狂度を増している。にわかラグビーファンが急増中といったところか。かくいう私もその一人だが。ラグビーもサッカーもイングランドが発祥の地。かつてサッカーは庶民のスポーツ、ラグビーはエリートのスポーツと言われた時代もあったかと記憶している。アパルトヘイト(人種隔離政策)下の南アフリカではラグビーは白人社会のスポーツだった。
 NHKラジオの英語講座を聴き流していたら、「応援する」は “root for” が最適の語彙と説明していた。私が受けた学校英語教育ではあまり馴染みのない表現だが、確かにこの表現はよく耳にする。ラグビー・ワールドカップの会場で “Which country are you rooting for?” と外国人観客に尋ねれば、おそらく多くのファンが彼らの母国のチーム以外では “I’m rooting for Japan.” と答えるのではないかと思う。これまでラグビーの世界では存在感の薄かった日本代表チームの人気は、海を越えて急上昇中! 
 大リーグのプレーオフも始まった。アリーグの田中マー君、ナリーグの前田健太投手のチームも勝ち残っており、マー君は土曜(日本時間日曜)の試合で先発、好投し、勝利投手となった。中継ぎ役に回った前田投手も大切な役回りをそつなくこなしている。加油!

『三体』

20191004-1570152468.jpg 地球外生命体はいるのか? 香椎浜をジョギングしている折など、空を飛ぶ飛行機を見ていて、いつかこの空にUFOの大群が押し寄せたりしたら、人類は大騒ぎになるだろうなあ。しかも敵対的な来訪だったりしたら、などと夢想する自分がいる。宇宙の果てから大挙して地球を訪れる地球外生命体は間違いなく人類よりはるかに進んだ科学技術を有していると思われる。地上にへばりついて暮らす我々を滅亡させるのは、彼らにとってたやすいことだろう。21世紀中に実際にそういう事態になったとしても、自分はその場に居合わせることができない。それは果たして運よくと言えるのだろうか、などとも考える。
 読売新聞社に勤務していた時の同僚が『言語学者が語る漢字文明論』とともに、言及していた本が、まさにそうしたことをテーマにして書かれたSF小説だった。私など足元にも及ばない読書家の元同僚はさすがに「守備範囲」が広い。
 中国人作家、劉慈欣の『三体』(早川書房)。劉氏は1963年、山西省生まれのSF作家。私は初めて知ったが、今や中国のみならず世界的に注目を浴びている作家だとか。帯カバーの紹介が凄い。「現代中国最大の衝撃作、ついに日本上陸」「中国で三部作累計2100万部突破 アジア圏&翻訳小説初のヒューゴ賞受賞」などと紹介されている。日本語訳には3人の翻訳者の名前があり、後書きを読むと、ヒューゴ賞受賞となった英訳本も参考に邦訳がなされたことが分かる。
 400頁を超える大作だったが、飽きることなく読破できた。いや飽きることなくというのは正確ではないかも。結末近くは私には到底理解できない陽子だの微小宇宙、マクロ原子だの、難解な天体・物理・科学用語のオンパレードで、私の拙い脳細胞が機能しないまま文章を目で追うことになった。これまでこのような小説の類は(おそらく)読んだことがない。帯カバーにある識者の「驚天動地の人類史網羅SF」「奇跡の"超トンデモSF"」という評価を見ると、SF小説のジャンルでも群を抜く作品であるらしい。道理で。
 『三体』で描かれているのはほぼ現代の地球文明。米中の対立関係も続いているようだ。現代文明の環境汚染、生態系破壊に、つまり人類のありように絶望した知的階層の人々が銀河系外の生命体とコンタクトを取り、人類の救済もしくは征服を求める。このこと自体奇想天外な設定だが、気がついた時は中国が主要舞台の物語の展開に引き込まれている。
 地球から送出された電波メッセージに応じて「三体」と呼ばれる惑星の異星人が地球に向け、艦隊を派遣することを決める。この異星人は人類よりはるかに進んだ文明・科学を手にしているようで、統括するのは「元首閣下」と呼ばれる人物。人物と書いたが、どうも限りなく人間に類似した生命体のような印象を受ける。彼らが住む「三体」はしかし、酷暑・極寒の居住し易い惑星ではないようだ。彼らの艦隊が地球に到達するのは物語が語られる時点から450年後。その間に地球人類は自分たちの科学を異星人と対峙できるほどに進歩させることができるのか。
 中国語ではすでに三部作が完結しており、これから日本では二部、三部と刊行されていく運びのようだ。SF小説の世界でもこれからは中国人作家の作品に刮目すべしということか。嗚呼、中国語の原書で読めたらなあ!450年後、45年後、いや4.5年後にでも。

中国映画『芳華』

20191002-1569984223.jpg  寝付きが悪いので、コーヒーを断って一か月。最近は割とすっと眠りに落ちるようになった気がする。本当にコーヒーが原因だったのかは自分でもよく分からないが、まだしばらくはこのままできるだけコーヒーから遠ざかる生活を続けようかと考えている。
 自分で料理するようになると、外で食事するのも段々と億劫になるようだ。会社勤めの頃は外食するのが当たり前の暮らしだったのが信じられない気もする。今は英語教室で出かける小倉駅前の海鮮料理店でお昼を食べるぐらい。ネギトロ丼に生海苔味噌汁で計858円。ネギトロ丼はさすがに美味い。これで十分満ち足りた気分となる。ご馳走様。
                  ◇
 公民館の中国語講座の先生から推薦された中国の映画を観るために早良区の福岡市総合図書館を訪れた。福岡映画サークル協議会の主催で、第14回中国映画を観る会という催しとなっていた。足を運んだ甲斐のある力作だった。
 作品はフォン・シャオガン監督の『芳華(youth)』。1970年代の文化大革命時に歌や踊りを披露して人民軍の兵士を慰労する役目の文工団が舞台。そこで青春時代を送った若者の姿が描かれていた。日本語字幕付きで時々、私にも理解できる中国語表現が出てくると嬉しかった。最初に戸惑ったのは女性の語り手がどの少女なのか分からなかったこと。この手の作品ではだいたい最も美しい、あるいは魅力的な少女がヒロインなのだろうと推測がつくが、美形の子が何人も出て来るので??という感じだった。
 文工団に17歳の可憐な少女がやって来る。父親は共産党政権からブルジョア、反革命のレッテルをはられ、投獄され、母親は再婚したが、再婚の家庭でのけものにされてきた不幸な過去を持つ。少女は文工団でも臭いと蔑まれる。ダンスの練習をした後など、人一倍の汗っかきの体質のため、その汗が臭うだけのことなのだが。少女は団員の仲間の青年に恋心を抱くが、この恋は失恋に終わる。
 文革が終了して文工団も解散となるが、中国が隣国ベトナムと戦争に突入したため、少女と青年の人生は再び交差する。兵士となった青年は右手を失い、従軍看護婦となった少女は爆撃に遭い、その後遺症で精神を病み、施設に送られる。
 毛沢東時代に四人組という権力の亡者に率いられた文革がいかに非人間的な悪政だったかは我々は今は分かっている。知識階級の人々は有識であるという理由だけで迫害され、幾多の無実の人たちが死に追いやられた。作品ではその辺りはあまり触れられていなかったのが気になった。傷痍軍人となった青年が若い警察官らに冷たくあしらわれるなど、改革開放後の中国で拝金主義が罷り通っている姿は描かれてはいたが。
 昨日の1日は中国では国慶節。今年の国慶節は中華人民共和国が誕生して70年の節目に当たる。天安門広場前で習近平国家主席がにぎにぎしく、中国軍の近代装備を前に車に乗って閲兵しているのをテレビの生中継で見た。中国が今やアメリカを追い落とす勢いの超大国であることは誰もが否定できない事実だが、それが世界に平和と安定をもたらすものであるのかどうか。そうなって欲しいとは隣国に住む者として切に願うが。

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