- 2026-10-12 (Mon) 10:41
- 総合
ノーベル文学賞が発表された。村上春樹ファンは今年も落胆させられることになった。私はズーム活用の英語教室で多和田葉子氏の小説を読んできていることもあり、密かにドイツ在住の彼女の受賞を願っていたが、それも空振りに。受賞したのはこれまでその名を聞いたこともないアン・カーソン氏。カナダ出身の詩人。1950年生まれというから70代半ばの女性だ。
ノーベル文学賞のニュースを報じた読売新聞を読むと、スウェーデン・アカデミーは授賞理由について、彼女の「大胆かつ独創的な作品は古典の伝統と遊び心に満ちた対話を通じて現代文学の新しい形態を生み出した」と述べている。代表作の『赤の自伝』(1998年発表)は詩と小説を融合させた「バース・ノベル」と呼ばれるジャンルの作品で、古代ギリシャの神話を大胆に翻案したものであり、この作品で詩人としての地位を確立した。翻訳家としても活躍しており、能や俳句など日本文化にも造詣が深いという。
記事を読みながら、『赤の自伝』?どこかで目にしたような記憶が・・・と思った。赤?あれ、どこかに・・・。あった。私はその本を持っていた。この本を出版した出版社の人から頂いていた。読売新聞でもこの出版社のことが小さく紹介されていた。福岡市の書肆侃侃房。拙著を刊行した縁で詩人でもあるT社長(当時)と懇意にさせてもらっており、事務所をのぞいた際に、Tさんからこの本をもらった。ありがたく読もうとしたが、正直に書くと、なかなか読めず、積ん読にしていた。その本は寝室のベッド側の段ボール箱に放っておいた。毎朝起きると、その本が視界の端に入っていた。
それでノーベル文学賞のニュースを読んだ時に私の退化しつつある脳内に何か記憶の断片が走ったのだろうか。う、なんだ、この感覚は?と思った次第だ。改めて『赤の自伝』という活字を目にして記憶の糸がつながった。あ、いつぞや尊敬するTさんから頂いた本ではないかと。それで段ボール箱からくだんの本を取り出した。タイトルに相応しくすっきりした赤が素敵な装丁の本だ。いや、ノーベル文学賞の本をぞんざいに扱っていたとは申し訳ない!
それで週末、ベッドに寝転びながら改めて読ませて頂いた。結論から書こう。詩と小説を融合させた「バース・ノベル」とあるが、どうみても詩が勝った作品だ。私は小説なら多少なりとも我慢して読めるが、詩はどうも苦手だ。小学生の時は国語の宿題かなにかで詩作に挑戦したような記憶があるが、所詮、散文的な俗物根性の男ゆえ、どうも「相性」が悪い。ということで今回も苦労しながら、何とか読み終えた。
読み終えたとはいうものの、まっとうな読後感が書けない。ゲリュオンという背中に翼のある若者、ゲリュオンを翻弄するヘラクレス、ヘラクレスの新しい恋人アンカッシュの3人の男が登場する。3人は旅をしながらさまざまな会話を交わす。露骨な性描写こそないが、セックスや性的な関係を想起させる表現はそこかしこにある。詩であるから無駄な言葉はそぎ落としてある。だから、愚禿凡夫の私には??となることしばしば。ギリシャ神話に通じていればまた別の話かもしれないが、心穏やかなとき、再読してみよう。大学時代の恩師に印象を聞いてみたいとも思ったが、そうした恩師はすでにして黄泉の国だ。
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