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英語でさるく 那須省一のブログ

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日本人が英語が苦手な理由

 日曜日。徳島市の英語愛好者のグループの集まりに参加させてもらい、このところずっと考えている外国語学習の最近の気づきについて話をさせてもらった。「ああ、だから日本人は英語が苦手なんだ!」というタイトルをつけたが、これは「看板に偽りあり」だったかもしれないと集まりが終わった後で反省した。それはともかく、やはり自分の頭の中にあることを言葉にして人前で話すのは得がたい経験であり、これからの学習の参考にもなった。
 巷間言われるようにSOVの日本語とSVOの英語、中国語は基本構造からして異なっているが、中国語は日本語や韓国語と同様、話題優越型言語(topic-prominent language)であり、日本語とも共通の特質があることを語った。音韻的には日本語の母音は「アイウエオ」のわずか五つの言語であり、英語はもちろん、中国語や韓国語とも比べても簡素な言語だと説明したかったが、舌足らずだったような気がしないでもない。
 私が近くの公民館で参加している韓国語教室。先週の教室でたまたま、ランチ(lunch)という外来語が出てきた。韓国語ネイティブ話者の先生は大きな声で「ロンチ」と発声された。私はロケットでも発射するのかと戸惑った。lunchではなくlaunchと聞こえたからだ。「何か発射したのかな?」と。日本語では「オ」の音は一つだけだが、韓国語では口を大きく開ける「オ」と日本語に近い唇を突き出して言う「オ」の二つの「オ」がある。
 我々は lunch をランチと言うが、韓国人はロンチと呼ぶことを初めて知った。英語由来の外来語で我々が「ア」と発声する母音の多くが韓国語では口を大きく開ける「オ」で対処されていることを示している。それだけ彼らは母音のレパートリーが多く、英語を学ぶ上でも「利点」となっているのではないか。若者の食生活には欠かせない hamburger は韓国語のハングル表記では 햄버거 であり、その語「ヘムボゴ」は口を大きくを開ける二つの「オ」の音を含む。英語ネイティブ話者には「ハンバーガー」よりも「ヘムボゴ」の方がより英語らしく聞こえるのではないか・・・。
 この日の集まりでも説明したが、中国文学者の高島俊男氏は著書『漢字と日本人』の中で「不器用な日本人」と題し、「日本人の口は不器用だ。日本語は開音節構造である。すべての音節が母音でおわる。しかもその母音の前につく子音は一つだけである。要するに日本人が口から出せるのはごくかんたんな音だけである。またその音の種類がいたってすくない。これはもう大昔からそうである」と慨嘆しておられる。日本人が英語を苦手に感じてしまうのは、我々が今さら嘆いても仕方がないことなのである。
 ところで上記の集まりはオンラインで実施された。ズームと呼ばれる。私はこれまでもズームは非常勤講師の仕事の延長線上で利用したことはある。短篇小説を読む私の英語教室ではスカイプと呼ばれるオンラインを利用している。だからもう扱い方に慣れていていいはずだが、いまだに覚束ない。用意したパワーポイントを自分のパソコンの画面一杯に広げると、それまで見えていた参加者の顔が画面から綺麗に消えてしまう。それはそれでいいいのだが、反応が全然見えなくなってしまう。パワーポイントのスクリーンを画面の半分程度に収めるにはどうしたらいいのか。こういうことを今ここで書いていること自体、私はうつけ者(fool, 呆子,바보)に違いない!

スターリンの系譜

20220430-1651307012.jpg 本日は4月最終日。明日からは5月。本当にあっという間に時間が過ぎ去っているような気がしてならない。今年はコロナ禍に加え、ウクライナの信じ難い戦火もあるから、何だか一層そういう気がしているのだろうか。考えたくないが、これに心配される大地震でも起きたら、心中は陰鬱極まりないものとなるだろう。一刻も早くウクライナの人々に安寧の日々が戻り、コロナ禍も収束することを心から願い、そして祈る。
                  ◇
 ウクライナ情勢に関しては、先日のジャパン・ニュース紙に「我が意を得たり」の論評記事が掲載されていた。米ワシントン・ポスト紙からの転載で “Xi, Putin twist meaning of ‘peace’ and ‘security’ という見出しが付いていた。
 かつてないような蜜月関係にある中露の首脳がウクライナ情勢に関しても見解を同じくしていることを批判していた。内容はほぼ想像のつくものだったが、ウクライナで起きている悲劇はかつてロシアのスターリン独裁時代にも起きていたと説いていた。プーチン露大統領はロシアとウクライナはとても近しい親族関係にあり、両者は一体であるかのように主張しているが、スターリンは第一次大戦後の1930年代にウクライナという存在を地図から「抹殺」するかのような虐殺・圧政を繰り広げたとか。それと全く同じことをやろうとしているのがプーチン現政権だと告発している。
 私はウクライナの人々をプーチン氏がよく「ナチ」と非難しているのが不思議でならなかった。ウクライナはユダヤ人を殺戮したナチスとは関係がないだろう、なぜ、そういう呼称を浴びせるのかと。ヒトラー率いるドイツ軍が1941年にロシアに攻め込もうとしたとき、そのルートとなったウクライナではスターリンよりもまだましだとナチスの越境を歓迎する向きもあったのだとか。こうした経緯も盾に取り、プーチン氏はウクライナ侵攻の正当性を主張しているようだ。次のように書かれていた。Yet today, Putin uses that history to persuade his duped nation that the Ukrainians are nothing but Nazis.
 論評は我々が今ウクライナで目にしているのは、ジョージ・オーウェル的な倒錯した世界だと断じている。ロシア軍の蛮行が “peace”(平和)を求めてのことであり、ウクライナ人に対する迫害はロシアに “security”(安全)をもたらすのだというプーチン氏の主張を鵜呑みにすることなどできようはずもない。
                  ◇
 有言実行ではないが、積ん読状態にあった文庫本を手にしている。夏目漱石の名作の一つと言われる『坑夫』。明治・大正時代を代表する文豪の作品はたいてい読んでいるが、これはずっと以前に書店で買い求め、読み始めたものの、なぜか興味が失せ、ベッドの下に放っておいたままになっていた。
 それでベッドの下から取り上げ、読み始めた。読み始めた冒頭に近い部分で、沿道の茶店の女将さんが客応対の間にお店の裏手に回り、松の木に向かって立ち小便をするシーンが描かれていた。昔は世の東西を問わず、立ち小便は男の特権ではなかったのだろう。いやはや、それにしても昔の女性はたくましかったのだなあ!

女には「命」の髪の毛が2000円?!

20220425-1650861861.jpg どうなるのかウクライナ情勢。連日NHKテレビが報じているが、ウクライナ周辺の地図はいまもすっと頭に浮かばない。モスクワには取材で一度だけ訪れたことがあるが、東欧と呼ばれる国々には縁がなく、唯一足を運んだことがあるのは旧ユーゴのボスニア・ヘルツェゴビナぐらいか。これが今も正しい国名であるのかさえ自信がない。後でチェックしなくてはならない。
 中南米にも取材経験がないので、カリブ海周辺も含め、中南米の国々の位置関係を頭の中に正確に地図として広げるのは難しい。正直に書くと、あまり興味がないので致し方ないかと思う。残り少ない人生、中南米の国々にこれから足を運ぶことはまずないだろう。残念ではあるが。
 オンラインで続けている英文小説を読む英語教室。このところ、オー・ヘンリー賞受賞の優秀作品を読み続けている。いずれも短篇の作品なので読みやすいことこの上なし。日曜日に読んだのは “Scissors” というタイトルのベネズエラ出身の女性作家の作品だった。私が購入したペーパーバックの本ではわずか5頁にも満たない短さ。先述した通り、行ったことのない南米を舞台にした作品だから、ネットでベネズエラや隣国の地図や写真をチェックしながら読み進めた。読み進めたといってもあっという間に読了とあいなった。
 作品は困窮している祖母、母親、娘の3人が国境を越えたコロンビアの町にバスで行き、自分たちの髪の毛を売って何とか食料品を購入しようとする物語。彼女たちにはもはや頭髪しか売るものは残っていないようだ。私の手が止まったのは次の記述。“We’ll give you sixty thousand pesos for yours, a little less for your mother’s” これは髪の毛を刈り取る業者が娘に言う言葉。自分の髪の毛を売って手にできるのが6万ペソ。コロンビアペソの通貨価値など見当もつかない。ネットで検索して調べてみると、1 コロンビア・ペソ は0.034 円 とあるから、60,000×0.034=2,040円となる。女性にとっては「命」のような髪の毛が2千円ぽっちとは!ベネズエラの人々の困窮ぶりが垣間見える。
 折も折、読売新聞の国際面にベネズエラの人道危機が報じられていた。政治的、経済的な混乱から南米の周辺国に逃れる人たちが急増しており、その数はここ数年で全人口の2割に当たる600万人に達しているとか。この国は世界有数の産油国であるにもかかわらずだ。
 この作品は不思議なところがあった。不思議というか、何かのミスではないかと思うのだが、ネットでは私が手にしている本には掲載されていないパラが最末尾に少し続いていた。その部分は余韻たっぷりであり、味わい深い終わり方になっていた。ネットでこの部分を読むと、本のエンディングがさすがに物足りなく感じる。この作品はネットでも読めるため、コロナ禍での英語教室には有り難く、だから選んだ事情もある。ネットで確認しなかったら、“Scissors” という作品に対する印象は異なったものになっていたことだろう。
 それはともかく読書はいい。語学の勉強に勤しんでいると、それはそれで充実感はあるのだが、辞書で調べるなどして覚えたと思っている語彙を数日後にはすっかり忘れてしまっている。そういうフラストレーションに悩まされる身には読書は気が休まる。依然動きの取れない5月の連休には夏目漱石か志賀直哉の名作を久しぶりに読もうかと考えている。

麻雀(観戦)が趣味?

20220420-1650459097.jpg クリスチャンの端くれとして毎朝、ウクライナの人々のために祈り続けている。崇敬している「子羊の群れキリスト教会」のP牧師は我々がいよいよ「終わりの時」を生きていると告げている。それが本当に意味するものを私は理解しているのかはともかく、ウクライナで起きていることにはかつてないほど心が乱されている。私たちが慣れ親しんできた人類文明はもはや過去の「遺物」となってしまうのかとさえ危ぶまれる。
 そうでないことを心から願う。来年の今頃、このブログを振り返って、嗚呼、昨年のこの時期はこんなことを考えて過ごしていたのかなどと懐かしく思い出すことになっていればいいのだがと心から願う。神様に日々感謝し、ご加護を祈るしかない。
                  ◇
 惰性で聴いているNHKラジオの中国語講座で趣味が話題に上っていた。中国語では「趣味」は「爱好」ということは承知していた。漢字の字面の意味合いから何となく理解できる。韓国語では「최미」ということも。中国語では「趣味」という語はないのかなと思い、辞書を引いてみると「趣味」という語句もあった。ただ、英語の hobby という意味合いでは使わないようだ。「趣味のいいネクタイ」という意味合いの「趣味」であるとか。発音も「チューウェイ」であり、だいぶ印象が異なる。それでもこの「センス」という意味合いでは日中両語で同じ漢字語が使えるとは感動的に思える。
 英語では最近は初対面の場などで “What is your hobby?” などとはあまり尋ねないようだ。ぶしつけに聞こえるのだろう。さりげなく “When you have time, what do you do?” とでも聞くのがいいと聞いたような気がする。日本だけでなく中国や韓国では「爱好」や「최미」と真正面から尋ねても問題なさそうに思えるのはなぜだろうか? 
                  ◇
 最近時々のぞく喫茶店のような食堂。いつも食べるのは決まっている。「カオマンガイ」という料理。タイの料理だろうか。よく分からない。低温調理した柔らかい鶏のもも肉に鶏出汁で炊いたジャスミンライスが風味豊かな味わい。850円。毎日でも食べられる美味さだ。
 普段は無骨な自炊の食事で空腹を満たしているから、ときにはこういう美味なランチを味わうと喜びが一層増す。
                  ◇
 月曜日の朝日新聞朝刊の紙面。AbemaTVで無料放送されている麻雀プロのリーグ戦の全面広告が賑々しく載っていた。朝日新聞も後援している麻雀のリーグ戦だ。一昔前にはこのような広告が朝日新聞に掲載されるとは思いもしなかった。私は麻雀が好きだが、一人ではできない娯楽だから、もう何年も牌に触っていない。麻雀の勝ち負けは雀士の技量だけでなく、運不運がかなりの重要な要素を占める。麻雀にプロという存在が果たしてあり得るのかという根源的な疑念を私は捨てきれない。
 とはいえ、眺めていても面白いのが麻雀。趣味はと聞かれて麻雀(観戦)と胸を張って言える時代か。ただし、競馬同様、麻雀はギャンブルでもあり、油断しているとそこに思わぬ「落とし穴」が待ち構えていることを忘れてはならないだろう。

美味・盛岡冷麺

20220415-1649995385.jpg 英字新聞「ジャパン・ニュース」を購読している「功徳」を前回の項で紹介した。もう一つ付け加えるならば、最新の英語表現、傾向を知ることができることだろうか。木曜日の紙面では若者が好んで使っているらしい表現が出ていた。これは私には「初耳」でおそらく初めて耳にしたら??となっていたことは間違いないだろう。それは ghost someoneという表現であり、「友達が突然連絡や関係を絶つ」類のことを意味するのだという。紙面では次のようなやり取りが例示されていた。
 A: He hasn’t texted me in a week ….
         (彼から1週間もメッセージが来てないの・・)
 B: Oh, no, did he ghost you?  
         (噓でしょ。彼、説明なくいきなり連絡を絶ったの?)
 なるほど、ghost(幽霊)を動詞にして「幽霊のように視界から消えていく」行為を表現している。日本語的発想では ghost from you の方が分かりやすそうな気がしないでもないが、直接目的語を取る形で ghost you とするのか。これはなかなか思いつかない。私の世代なら Did he disappear without a word? ぐらいの表現しか頭に浮かばないが・・・。
                  ◇
 私がよくアクセスしているブログが一つだけある。迷惑をかけたくないので名前を出すことは控えたい。最近そのブログで盛岡名物の冷麺のことが紹介されていた。その人がこさえた冷麺の写真を見て、猛烈に冷麺が食べたくなった。このブログでも書いたことがあるかもしれないが、私は新聞記者時代に盛岡支局に勤務していたことがあり、その時に初めて食したのが当地名物の冷麺だった。最初に食べた時はパンツのゴム紐でも食わされているのかと思うほど違和感を覚えたが、やがて病みつきになった。独特の辛さも癖になった。
 そうしたことを上のブログで思い出し、無性に食べたくなった。ネットで注文しようかと思い、さっと検索もしてみたが、よく考えると、天神まででかければ、確か東北3県だかのアンテナショップがあったような記憶が。書店に用があった昨日、そのショップを訪ね2袋(4食分)買い求め、早速作ってみた。トマトに焼いた肉切れ、レタスなどを添えてみた。本当は盛岡冷麺のようにスイカを二三切れ浮かべたかったのだが。
 結果は? 申し分のない味だった。いや、もっと早くアンテナショップに足繁く通い、東北の珍味を買い求めるべきだった。今日(金曜)もお昼にはウィンナーを焼き、冷麺に添えて食べてみよう。トマトはなくなったが、まあいいか。レタスはある。私のような料理音痴でもただ麺をゆでるだけでいいのは有り難い。
                  ◇
 大リーグ。大谷翔平君が金曜朝、二回目のマウンドに立った。今回こそはと期待したが、どうも調子がよくないようだ。打撃も不調のようで一打席目は三振。微妙な判定もあったようだが、主審を敵にすると投球にも悪い影響が出る。何だかテレビを見るのも億劫になり、テレビを消して見るのをやめた。先ほどネットで確認するとその後、相手チームに満塁ホームランを打たれたようでマウンドを降りている。やっぱり!
 まあ、こういう日もあるだろう。ちょっと心を落ち着けて、次回の巻き返しを願おう。湿っている打棒もそのうち本来の快打が復活するだろう。翔平、加油!

ホットク」(호떡)食べたい

20220413-1649831981.jpg 英字新聞「ジャパン・ニュース」を購読している「功徳」の一つ。他の媒体では見かけない風変わりな記事に遭遇することがある。日曜日の紙面。Double take: This is not a story about Bruce Willis という見出しの長文の記事だった。ワシントンポスト紙からの転載。
 スキンヘッドで知られる米俳優、ブルース・ウィリス氏にそっくりの男性のことを紹介している。見出しにある double とは「二倍の」の意ではなく、ここでは「生き写し」「代役」という意味。ウィリス氏はつい最近、失語症(language disorder aphasia)と診断され、俳優業から引退する意向であることが報じられたばかり。まだ67歳。彼が主人公のジョン・マクレーン役を演じた代表作「ダイ・ハード」はよく覚えている。
 記事はこの俳優に実によく似た14歳年下の男性がこれまでにウィリス氏の代役として13の作品、20のCMに出ていることを紹介している。男性の名前は Eric Buarque といい、私は何と発音するのか分からない。おそらく現実の発音は違うだろうが、仮にエリック・ブアキュー氏と呼んでおこう。ブアキュー氏は米東部メリーランド州に住む庭師・造園家。以前からことあるごとに通りがかりの人たちから「あなたはブルース・ウィリスにそっくりだ」と声をかけられ、記念撮影を求められたりしてきた。
 本人も悪い気はしなかったようだが、かといって映画の世界に引かれたわけでもなかったようだ。それでも映画プロダクション会社などに自身のプロフィールを送ることは続けた。こうした努力が実り、2006年に「ダイ・ハード」でウィリス氏の代役を務めることになり、一躍脚光を浴びることになった。残念ながら、肝心のウィリス氏は病にかかり引退を余儀なくされた。ブアキュー氏の代役人生もこれで終止符を打つのか。記事はまだ他の可能性があるのではないかというタッチで終わっている。
 英語表現としてのdie hardは例えば Old habits die hard. (昔の習慣はなかなかとれない)といった文章や、名詞としては「変化に頑強に抵抗する人」などとあまり好ましい使われ方はしないようだ。
                  ◇
 NHKラジオの今月からの韓国語、中国語の初級講座は基礎の基礎からの再スタートとなっており、私は耳から聞き流しいている。聞き流すだけだが、それでも時々戸惑うこともある。数日前の韓国語講座。イチゴパフェという語が出てきていた。日本人女性がソウルに初めて旅してカフェでイチゴパフェを注文する設定で、韓国人のウエイターがよく聞き取れなかった。イチゴは韓国語ではタルギ(딸기)。「タ」の音は日本語では意識しない濃音と呼ばれる特殊な音。女性はこの音をこれも韓国語独特の激音の「タ」で発声したため、通じなかったようだ。カタカナで韓国語のこうした音の違いを表記することは悩ましい。
 その次のシーンでは日本人女性はコーヒーを注文しようとしてホット(hot)でお願いしますと頼むのだが、韓国人にはこれはハットと言わないと通じないようで、「ホットク」(호떡:韓国ではお馴染みのパンケーキに似たおやつ)と誤解される。日韓両語が似て非なる言語であることがよく分かる。ところでホットクは韓国では屋台で売られている人気の定番商品だが、私はなぜか食べた記憶がない。今度再訪したら絶対食べよう!

スター誕生!

 台湾・台北にある淡江大学に3年前に1か月だけ中国語を学ぶために留学したことを前回の項で書いた。そのことを思い出しながら、香椎浜のジョギング路を歩いていてふと思った。そういえば、高校を卒業してどれぐらいになるのか。18歳。桜が散っている今の時期に大学に入学した。まさに半世紀前、50年の歳月が流れている。信じ難いがそういうことになる。半世紀の後、今ここでこうして暮らしているとは思いもしなかった。いや、半世紀の後にどこで何をしているのか、などと考えもしなかったのではないか。
 そう思えば、もう十分生きたことになる。もうこれ以上、あれこれ思い悩むことなどないのではないか。私はこの歳になると亡き父親のことを考えることがある。語感的には父親ではなく親父だが、その親父は郵便局に勤め、退職後は山や田畑で働くのが日課だった。山仕事には時々付き合わされたことがある。そう嫌ではなかったが、楽しみにしていたわけではなかったような。今となってはもっと喜んで手伝っていれば良かったと反省する。親父にとっては山仕事の後に一人焼酎をあおるのが楽しみだった。
 今にして思う。親父のような生き方も悪くなかったと。故郷は山また山で、人家は少なく、谷川は透き通った水が流れる。小鳥の鳴き声だけを耳にしながら山の仕事に精を出す。考えようによっては至福の生き方ではなかったかと。私には山仕事は望むべくもない。私の「山」は言わば「書籍」「語学」か。ならば、日々それに向かい、研鑽を積むしかない。親父との比較で一つだけ共通しているのは、一日の終わりに楽しむことができる焼酎だ。末永く楽しめるように節度ある飲酒を心がけよう。
                  ◇
 とこんなことを書きながら、日曜日、テレビで大リーグの生中継、それにプロ野球のゲームもちらっと見て、競馬の桜花賞のレースも楽しんでいたら、どこかでロッテの若きエース、佐々木朗希君が脱三振ショーを繰り広げているという速報を目にした。え、それは見なくてはと思い、慌ててケーブルテレビのチャンネルをロッテ対オリックス戦に合わせると、佐々木君の奪三振ショーの真っ最中だった。連続奪三振は13で終わったが、完全試合は続いている。いや、これは記録的なゲームになるぞ。最後までこの試合を見るしかないではないか!
 そして佐々木君は完全試合を達成した。奪った三振は19。与えた四死球は0。奪三振数はプロ野球タイ記録。連続三振は従来の記録9を大幅に上回る新記録。ほぼ完璧と形容できる完全試合だろう。163㌔や164㌔といった快速球を次から次へ投げ込んでいた。あっぱれと言うほかない! 彼が高校3年の夏に岩手県予選の決勝戦だかで登板を回避して物議を醸したことがあった。監督は彼の将来を考えて無理をさせなかったと報じられたような記憶が残っている。当時、佐々木君に対し、何となく「ひ弱」な印象を抱いたことを覚えているが、いやはや恐れ入りました。
 私のこのパソコンで「ささきろうき」と打つと、「佐々木労基」と印字される。その内にきちんと「佐々木朗希」という文字が出てくるようになるのだろう。大谷翔平君も凄いと思うが、佐々木君も凄い。二人ともに岩手県の出身だ。私は新聞社の盛岡支局で2年間勤務した経験があるが、岩手にこのような傑物が出る素地があるのかどうかは分からない。願わくは佐々木君に早く大リーグに行ってもらい、大リーグファンの度肝を抜いてもらいたい!

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