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再び玉名温泉

  • 2026-07-18 (Sat) 20:03
  • 総合

 夏休み。再び玉名温泉に来ている。ここのトロン湯にすっかり魅せられている。背中右の帯状疱疹がトロン湯で癒やされているような気がしている。あくまでど素人の見立てだが。一つだけほぼ確実に言えることは皮膚の傷にはことのほかいいようだ。私は右手の人差し指と薬指の指先が荒れている。台所の水仕事で合成洗剤が悪さをしているのか。トロン湯のお陰か、右手指の荒れも穏やかになりつつある。
 玉名温泉が私にとって好都合なのは、最寄り駅のJR香椎駅から在来線で玉名駅まで一直線で行けること。もっとも何回か途中駅で乗り換えは余儀なくされるが、タクシー料金程度の運賃で行けるのは有り難い。温泉でくつろいでいる折に読む文庫本でも買おうと香椎駅で書店に立ち寄った。そういえば、芥川賞直木賞の作品が発表されたばかりではないか。そうであれば、店頭に受賞作や候補作が山積みになっているはずと考え、店頭を探った。
 一番最初に目についたのは芥川賞などの受賞作ではなく、村上春樹氏の最新作だった。『夏帆─The Tale of KAHO─』。山積みではなく、テーブルの上に一冊だけ残り、さあ、買ってよ、とばかりに訴えかけているように見えた。私は村上氏のファンでないが、彼の作品は結構読んでいる方だと思う。最新作がどこかで大々的に宣伝されていたのは知っていた。そのうち安価な文庫本が出れば考えよう程度の思いしかなかったが、ふと目の前にその作品が見えると、例によって、あ、これって神様が読めとおっしゃっているのかなと思えてきた。それでそのかなり厚めの単行本を手にレジに向かった。
 そして今、その本を読んでいるところだ。本日は土曜日。おそらく明日の朝には読み終えているだろう。村上氏はやはり手練れのストーリーテラーだと思う。カズオ・イシグロといい勝負か。ヒロインは二十代の夏帆。すこぶる美人ではないが、美大を出て絵本作家の仕事をしている。父親は町医者であり、一人娘の彼女は何不自由なく育ててもらった。夏帆は仕事一筋の父親には親近感を抱いているが、美人で世間体を常に気にしている母親にはなじめないようだ。夏帆はあるとき、仕事でお世話になっている女性編集者からブラインドデートの依頼を受ける。その相手はまあ申し分のない紳士に思えたが、突然「君のような醜い人と会ったのは初めてだ」と傲岸不遜に言い放つ無礼極まりない男だった。この出会いの直後から夏帆の回りでは常識的にはありえない不可思議な出来事が起きるようになる・・・。
                  ◇
 玉名温泉の湯質は大いに気に入っているが、ここはいかんせん、前にも書いたが、飲食店の類が情けないほど乏しい。ランチ難民、夕食難民となることがしばしば。土曜日昼は少し離れた道路沿いにある麺類のお店で食事を済ませ、ついでに夕食をテイクアウトしてホテルに戻った。よし、これで今宵は夕食難民となることはない。ホテルに戻り、本日二度目のお風呂。トロン湯を堪能した。本来は明日日曜にチェックアウトする予定だったが、居心地がいいので、もう一日延泊することにした。急いで帰福する必要はない。
 ぽつねんとお湯に浸かっていると何かしら一句ひねりたくなる。お風呂はがらがら、贅沢なひとときだ。ふと気がつくと、セミの声が結構凄い。目の前では二匹の蜻蛉がじゃれ合うように飛んでいる。湯に一人 トンボは対で 蝉時雨

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