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有栖川有栖さんの新作『高原のフーダニット』(徳間書店)について

  「オノコロ島ラプソディ」という中編の冒頭で描かれる「叙述トリック」に関する一幕もさることながら、火村英生と有栖川有栖(作中人物の)との関係があらためて興味深いです。
 ホームズのワトソン、ポアロのヘイスティングスのように、推理小説に登場する補佐役は記述者の役割もはたしてきました。探偵や犯人が自ら記述した小説(もちろん、そんな小説も存在しますが・・・)は、内容の客観性が担保されておらず、そこに叙述トリックが発生する可能性が大きくなります。その点、探偵の補佐役が書いた叙述は、そこに嘘が書かれていないということが暗黙の前提になっています。(嘘が書かれた作品も存在するでしょうが・・・)。
  「オノコロ島ラプソディ」では、火村は有栖川の一言によって真相を解明しています。火村は現場と研究室を往復するばかりで、現地調査は有栖川の担当になるのですが、この二人の場合、有栖川がいなければ火村は事件を解決できていないのではないかと思われることがよくあります。「高原のフーダニット」という中編でも、火村は有栖川に「出鱈目なことでいい」から、何か勝手にしゃべってくれと頼んでいます。有栖川の無秩序な言葉によってブレインストームすることは、火村が真相にたどり着くために必要不可欠なことなのです。推理小説の補佐役は、単に補助をするためだけに創り出されたのではなく、探偵の仕事を成りたたせるために必然的に生み出された存在なのではないかと思われてきました。
  幻想的な中編「ミステリ夢十夜」の「第七夜」で、有栖川は「それがどうして火村に判るのか?」と述懐しています。つまり、犯人の考えたことが、どうして火村には理解できるのかという疑問を呈しているのです。実は、火村には彼らと似たところがあり、彼らに近似した心理をもっているので、犯罪者たちが企て考えることがよくわかると考えられます。火村は犯罪臨床心理学(そもそも、こんな名称の学問が現実的に存在するのでしょうか・・・)にたずさわっているのですが、彼が分析したいと考えているのは彼自身の心理だといえるのです。作中の言葉の端々から火村自身このことに自覚的なのは間違いなさそうですが、有栖川の方は必ずしもそう考えていないのです。「高原のフーダニット」の終盤で火村は犯罪者と同じようなある行為をしてしまいますが、それを有栖川は「探偵というのは、死んだ人間の声が聴ける」からできたことなのだと解釈します。つまり火村という人間は「死者の心理」が人一倍理解できる者なのだと考えているのです。友人・有栖川の理解の方が当たっているのかもしれません。
 

Comments:1

champions 2019-12-30 (Mon) 22:25

香川県さぬき市長尾 ルーちゃん餃子のフジフーヅは入ったばかりのバイトにパワハラの末指切断の大けがを負わせた犯罪企業.中卒社員岸下守(現在 鏡急配勤務)の犯行.

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