『夜明けと音楽』새벽과 음악 Dawn and Music
イ・ジェニ 著
橋本智保 訳
四六変形並製、240ページ
定価:本体2,000円+税
ISBN978-4-86385-703-2 C0098
装幀 成原亜美(成原デザイン事務所)
装画 Karolina Skórka
「結局のところ物を書くというのは、よく知っている単語の中に、自分の悲しみを見つけること」
なくなったものの痕跡をたどり、孤独とともに創作する詩人イ・ジェニが綴るエッセイ集。
夜の闇に流れる、長く静かな時間に立ち上がる静謐な26編。
ある夜明けには涙のようにあふれる音楽について語り、またある夜明けには悲しみに満ちたプレイリストを思い出しながら詩を読む。
旅先で遭った不慮の事故、長いあいだ不眠症に悩まされたこと、ロックバンドで音楽に心酔していた二十代の頃のこと。
孤独とともに創作する詩人が、母の最期に立ち会い、イヨネスコやボードレールなど文人たちの足跡をたどり生まれた、詩と散文の境界を行き来するような言葉の記録。
ロングセラーエッセイ『詩と散策』(ハン・ジョンウォン)と並ぶ、“言葉の流れ”シリーズの代表作。
2025年11月発売
【著者プロフィール】
イ・ジェニ 이제니
1972年生まれ。2008年、京郷新聞新春文芸によりデビュー。詩集『たぶんアフリカ』『なぜなら、私たちは自分を知らなくて』『流れるように書いたものたち』『ありもしない文章は美しく』を発表。片雲文学賞優秀賞、金炫文学牌、現代文学賞を受賞。
言葉によって世界の細部を書き、消し、再び書くことをとおして、既知の世界と少しは違う世界、少しは広く深い世界にたどり着くことを願っている。
【訳者プロフィール】
橋本智保(はしもと・ちほ)
1972年生まれ。東京外国語大学朝鮮語科を経て、ソウル大学国語国文学科修士課程修了。
訳書に、キム・ヨンス『夜は歌う』『ぼくは幽霊作家です』『七年の最後』(共に新泉社)、李炳注『関釜連絡船』(藤原書店)、朴婉緒『あの山は、本当にそこにあったのだろうか』(かんよう出版)、ウン・ヒギョン『鳥のおくりもの』(段々社)、クォン・ヨソン『レモン』(河出書房新社)『春の宵』(書肆侃侃房)、チェ・ウンミ『第九の波』(書肆侃侃房)、ハン・ジョンウォン『詩と散策』(書肆侃侃房)、チョン・ジア『父の革命日誌』(河出書房新社)など多数。
【目次】
Ⅰ 音楽もしくは孤独、あるいは愛と呼んでいた瞬間
チェチェク―花の別称
涙のようにあふれ出る音楽
誰かがあなたのために祈りを捧げる
文章は上から下へ降り注ぐ
跳躍する曲線があるから、私たちは
メタリカフォーエバー
その光が私のもとへやってくる
夢はどこから流れてきて、どこへ流れていくのか
事物に慣れた目だけが事物の不在を見る
回復期の歌
私の部屋の旅行―天井と床のあいだで一週間
麻田―繰り返し広がる
夜釣りのためのプレイリスト
眠れない夜のためのプレイリスト
Ⅱ 再び明るむ夜明けのリズムから
未知の書き物
夢から来た手紙―天上の音を歌うあなたへ
直前の軌跡
夜明けに詩を読むあなたに
暗闇の中から暗闇に向かって
イメージは言語を必要とする
言葉が魂へ流れたら
紙の魂
白紙は削除された文章を抱いている
墓地を散策する人の手紙
瞬間の中から、瞬間に向かって
朝の木から夜明けの海まで
日本の読者のみなさんへ
訳者あとがき