柚のかくし味 by 柚


2005-02-16 きみに読む物語

ちょっとした気分転換に映画を見た。「きみに読む物語」。単なるラブストーリーではなく、アルツハイマー病の老女に物語を読み聞かせることで、彼女は記憶を呼び戻せることが出来るのだろうかという、シリアスなテーマもあった。実際に見た感想は、これがもし現実の出来事であるなら、アルツハイマー病にも希望があるということだろう。

内容を詳しく書くとネタバレしてしまうので書けないが、心に残ったのは情景の美しさで、すっかり目を奪われてしまった。

夕焼けに彩られた窓辺の風景。赤く染まった水の上を滑っていく、ボート。

そしてあるときはその川の上流へとボートを漕ぎ出す二人。

その二人を取り巻くおびただしい数の水鳥。

湿り気を帯びた瑞々しい風景と、雨の匂い。

テラスでホイットマンの詩を朗読する青年とそれに聞き入る父親と若い娘。

アメリカ南部の美しい町の風景が映画に奥行きを与えてくれる。こんな映画を観ると、やはり劇場で観るのがいいなあと感じてしまう。

実は最近気になっているのは、アルツハイマー、痴呆、ボケ老人などという言葉以外に、耳障りのよさそうな「認知症」という言い方が出てきていることだ。新聞でもどちらかというと、この言葉が使われている。アルツハイマー病であろうと認知症であろうと、言葉が違うだけで同じ。まだまだ未知の分野である。

今後、患者の数は天文学的に増えつづけていくそうだ。自分もそうならないという保証はない。最近の研究の中でいくつかわかっているのは、「記憶こそ、自分」「自立した生活を送ることが進行を遅らせる」という事実。

もちろん、この映画は、「愛」をテーマにしているのだが、「アルツハイマー病」ということも併せて、考えさせられる映画だった。


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