柚のかくし味 by 柚


2004-08-08 被爆の街としての長崎

8月9日は、長崎原爆の日。少し前のことだけれど、ちょうどその日、長崎の街にいた。原爆が落ちたというその時間、じりじりと暑い日に焼かれながら、海の見える丘の上に立って、長崎の美しい風景を眺めた。その日の惨状を思い浮かべると、戦慄が体中を吹き抜けた。初めての感覚だった。忘れてはいけないことがあるのだと思った。

赤の広場で歌うポール

いま、深夜の2時過ぎ。テレビでは、ポール・マッカトニーが懐かしいビートルズナンバーを歌っている。ロシアで起こった反体制運動の火付け役はビートルズだったのだ。いつの日も、若者の心に火をつけるのは音楽だ。では、シニアの私たちに火をつけるものなんてあるのだろうか。赤の広場で赤いジャケットを着て歌うポール。そう、ポールだって、シニア世代だ。きっとなにかあるはずだ。

最近詩を読んでいても、年齢にあわせた詩を書く人ほど退屈な詩を書く人はいないと思う。詩に年齢は関係ない。老成した詩はつまらない。もっと自由でもっと伸びやかに詩を書いていたい。ポールの歌を聴きながら、そう思った。


2004-08-10 原爆が落ちた日に

長崎に原爆が落ちたその日、原子力発電所で事故は起こった。その思いがけない符号に暗澹とした気持ちになった。その日、ビアガーデンに集った人としばし、自然の摂理について話した。このところ、起こるいろんなことが、人間の傲慢さに対する自然界からの鉄槌であるかのような気がする、と。

軽々と生きる

天神に向かうバスの中で出会った若い男性は、不思議な存在感を持っていた。長い髪をひっつめにし、ジーパンは両膝がぱっくり開いて、いた。どうみても、昔懐かしい言葉でいえば、ヒッピーという雰囲気なのである。友人と話す会話が耳にはいり、聞くともなしに聞いてしまった。産大を卒業したのだが、思う仕事がない。それなら、もう一度大学に行こうと猛勉強を始めたという。「私立は高いので、九大に入ることしか考えていない」と。受かるという保証はないが、受かりそうな気がすると、彼はいう。そうか、彼はきっと来春には晴れて九大生になっているだろう。そんな思いをいだかせた。その自由さがいいなあと、ちょっと思ったのだった。こんな風に軽々と生きられる、それもまた今という時代なのだ。


2004-08-15 お盆の最終日

お盆休みというのに、親孝行も先祖供養もできずに終わってしまった。この間、韓国で日韓詩人アンソロジーの翻訳作業の確認をするために釜山で過ごすことになったのだ。150人ほどの詩を日本の詩は韓国語に韓国語の詩は日本語に訳してもらう。日本語の微妙なニュアンスを理解してもらうのはとても難しい。特に日本の詩は、「読めばなんとなくわかる」では、相手にわかってもらうことができない。けっこういい勉強になった。戻って今日は別のほんの最後の原稿をチェックした。けたたましく忙しかった日々。でも、なんとか落ち着いてきそうだ。8月が終われば。

夕方、精霊流しに向かうのだろう人々に何人も会った。このあたりでは、迎え火と送り火にアシガラを使う。私のふるさとでは、どうだったろう。確かに迎え火と送り火を焚いた。アシガラなどはなかったので、小さな木ぎれだったか。精霊流しは墓からの帰りに蓮の葉を摘んできてそこにお供えを包んで川まで流しに行った。ナスで作った牛、キュウリで作った馬、酸漿、落雁・・・・。そんなことどもを思い浮かべながら、歩いた。やはり、盆はふるさとで迎えるのが一番だろう。


2004年
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侃侃諤諤

2005-08-23
韓国で料理を食べて思った

2005-08-15
戦後60年の節目に

2005-03-22
地震のこと、続報

2005-03-20
地震な一日

2005-02-16
きみに読む物語

2005-01-27
懐かしい写真

2005-01-19
地球の裏側

2005-01-10
成人残念会

2005-01-07
コーヒーとの出会い

2005-01-05
本作りのこと

2004-12-18
ライターでなく、もの書き

2004-12-17
日のあたる道

2004-12-11
『象と耳鳴り』

2004-12-07
「蒼い記憶」

2004-11-23
さいぼう会に参加して

2004-11-18
若竹酒造場にて

2004-10-21
台風とロウソク

2004-10-16
江口章子のふるさと

2004-10-15
運命の足音

2004-09-24
夜からの声

2004-09-13
父は今日も元気

2004-09-03
日韓詩人交流

2004-08-15
お盆の最終日

2004-08-10
原爆が落ちた日に

2. 軽々と生きる

2004-08-08
被爆の街としての長崎

2. 赤の広場で歌うポール

2004-07-23
久々の小倉駅

2004-07-18
自分のなかの核

2004-07-16
田舎の夏が懐かしい

2004-06-30
「永久就職」というまやかし

2004-06-13
リバーサイドは健在なり