Home > 総合 > キャベツ

キャベツ

  • 2013-01-06 (Sun) 23:31
  • 総合

null
 新年。ずっと部屋にこもって翻訳の作業をしている。出かけることは稀。マンションの五階の部屋からは大好きなサウナのあるスーパー銭湯の入口に出入りする客の姿が良く見える。その向こうには決して嫌いではないパチンコ店のネオンサインが手招きしている。どうせ行っても、負けるのは目に見えている。「隣の客は良く出る客だ」と自分が考案した平成の早口言葉をつぶやくことになるだけだ。
 そうした誘惑に負けず、日々、パソコンに向かい続けている。隔日の買い物と朝夕の食事を作るのがたまの息抜きになっているぐらいだ。ふと思う。新聞記者時代からもっと早くこんな生活を続けていれば、自分の人生ももう少しましなものになっていたのかもと。
 でも、そういうやり直しがきかないのが人生だ。気づいた時点でリセットするしか手はない。世間的には還暦を目前にしてのリセットはどうかと思われるのだろうが・・・。
 英国文学紀行本の編集作業も進めなくてはならないのだが、こちらはあまり進んでいない。先に書いたファイルの消失の「オマガ!」(Oh my God!)のショックは乗り切ったのだが、何となく、ぐずぐずしている。一つにはベースキャンプにしていたケンブリッジから送った書籍の荷物が届いていないこともあった。段取りが悪いから、どうでもいい本は手荷物で我が身と一緒に持ち帰って来て、向こうで購入して、どうしてもそれがないと加筆できない類の伝記や資料本を小包にして船便にしていたのだ。
 その小包が二つ、正月明けにようやく届いた。首を長くして待っていた本の一冊は、ジョージ・オーウェルの伝記本。向こうではぱらぱらとめくった程度だった。『動物農場』や『1984年』など20世紀の英文学を代表する名作を残した作家の生涯を描いた伝記の著者と話をする機会があり、その縁で2003年に初版の出た伝記本を購入していた。色恋沙汰を含めた文豪の人間臭い面が詳述されており、にやつきながら読み始めた。
 オーウェルは左派の立場から、ソ連(当時)共産党の全体主義に反対したのだが、資本主義、保守主義とも一線を画し、労働者階級との連帯を常に念頭に置いていた。イングランド人であることには誇りに思っていたようだが、食の好みはブルジョア的だったと紹介されている。いわゆる今に至るまで庶民の食事の定番とも言える、フィッシュ&チップス(fish and chips)が大嫌いだったという。もう一つ大嫌いなものがあった。茹でたキャベツ(boiled cabbage)の匂いだという。まあ、確かにフィッシュ&チップスは食べる分には美味いが、台所の裏から匂ってくる臭気はあまりいいものではない。茹でたキャベツの匂いは私には良く分からない。
 私はキャベツは大好きだ。最近では夕刻、キャベツを沢山刻んでドレッシングをかけて焼酎のつまみにしている。実を言うと最初のころはあまり美味くないなあと思って食べていたが、ドレッシングをコラーゲンたっぷりのものに替えたら、これが大正解。いや、とても美味。文豪も美味いドレッシングでサラダで食していれば、キャベツが大好きになって、ひょっとしたら、1950年に47歳で病没することなく、もっと長生きしていたのではなどと、凡人は思う次第である。
 (写真は、窓辺のベランダに毎日来てくれる雀たち。映像が不鮮明なのはご容赦を)

Comments:4

tajima 2013-01-07 (Mon) 00:43

那須さん、イギリス文学紀行も翻訳も楽しみにしています。わたしもこの何日かこもって仕事をしました。電話もメールも殆どないのは、けっこういいものだと思いました。積んでいた詩集もわっと読みましたし。
あ、そうだ。キャベツはさっとお湯を通した方が嵩が減り、たくさん食べられます。ホタテほぐし身の缶詰(このほうが安い)を丸ごといれて煮るのも美味ですよ。お試しください。

nasu 2013-01-07 (Mon) 12:44

田島さん そうですか。キャベツの件、今度やってみましょう。ありががとうございます。参考になりました。

やすよ 2013-01-09 (Wed) 23:20

省一さん
新年に見るスズメさん カワイイですね♪
我が家はムク鳥がときどきやってきます。

ところで、今朝の朝日新聞の文化欄に嬉しい記事が載っていました。省一さんが昨年の神楽見学のレポートに書いていたように全国からの見学者の中にダンサー・振り付家の黒田育世氏がいらしていたようです。掲載記事をHPに紹介しましたので、時間があるときにでも読んで見て下さい。
 それでは また!

nasu 2013-01-10 (Thu) 09:06

やすよさん HPに飛んで、その記事拝読しました。さすが朝日新聞という切り口の記事で、読み応えがありました。正岡子規の人生にも言及していて、銀鏡神楽と子規の世界に相通じるものがあるとは思いませんでした。いろいろ、考えさせられました。多謝です。参考までに上記のHPのアドレスは以下の通りです。
http://www.f4.dion.ne.jp/~yezi/kuro-shiromi-2.html

Home > 総合 > キャベツ

Search
Feeds

Page Top