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ささやかな幸せ

  • 2012-12-24 (Mon) 18:38
  • 総合

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 今年もあと一週間で終わる。陳腐な表現だが、本当にあっという間に一年が過ぎてゆく感じだ。年を取るとともに、そういう表現があるとしたなら、「脳感速度」がいや増していくよう。来年の今頃はまた似たようなことを記していることだろう。
 それはそれとして、再び福岡に落ち着いて、小市民的な幸せを味わっている。「小人閑居して不善をなす」と言うが、私の心境は「小人閑居して憮然とせず」だ。
 初回の項で記したように、ある外国の小説の翻訳の仕事を引き受けた関係で、ほぼ終日マンションの部屋で過ごしている。新聞社勤務時代、仕事の延長線上で翻訳をやったことはあるが、今のように専念するのは初めてのこと。小説を読むのも好きだし、英語を日本語に訳すことも、文章を書くことも嫌いではないので、結構楽しんでやっている。
 それでもずっとパソコンに向かっていると、多少疲れもするので、和室に積み上げられた段ボール箱の整理に取り組み始めた。(まだ、やってないの!と思わないで欲しい)。一日1時間。たいした読書家ではないのだが、本がやはり多い。本棚はすぐに埋まってしまった。仕方がないので、畳に積み上げているのだが、あれ、こんな本があったっけ、と手がとまることがしばしば。雑多な書類が詰まった箱からは懐かしい手紙や書き付けが出てきたりして、しばし、手を休める。私のような者でも女性からの通夜のある、いや、違う、艶のある手紙がないことはない。なんでこんなもの捨てないで取っておいたのだろうかと自問する。日付を見て、ああ、もう20年前のことか、俺はこのころ、何歳だったのか、などと計算しながら、過ぎ去りし日々に思いを馳せる。
 それにしても、一向に作業が進まない。まあ、いい。時間はたっぷりある。この点に関しては「脳感速度」も危険信号を送って寄こさない。段ボール箱を漁っていたら、電子レンジが出て来た。あ、俺、こんなの持っていたんだ。記憶がすっかり飛んでいた。次から次へ忘れていたものが出てくる。うれしいような悲しいような。
 取り出したいと思っていたCDプレーヤーが出て来た。表記と異なる段ボール箱に入れてあったため、探し出すのに手間取っていた。小さくても音響が素晴らしいので有名なメーカーの製品だ。これだけはすぐに手元に置いて、クラシック音楽に耳を傾けながら、仕事に精を出したいと願っていた。早速、これも箱の中から大量に出てきたクラシックのCDをかけて聴いてみる。思った通り、素晴らしい音響だ。
 機嫌良く、パソコンに向かっていると、ピンポーンと玄関からチャイムの音が。はて、誰だろう。転居先を知っている友人、知人は皆無。ドアを開けると、笑顔の年配のご婦人が一人。最初は合点がいかなかったが、マンションの入ったビル(6階建て)の所有者、つまり、私の大家さんらしい。年末の恒例の挨拶で各店子に正月のお餅を配って歩かれておられるとの由。「あ、いや、ありがとうございます。餅大好きです。でも、大家さんからこんなことしてもらうのは初めてです。どうもどうも、恐縮です」
 私が住む5階の隣人は両隣だけ。転居の挨拶代りに和菓子をドアのところに下げておいたら、両家から丁重にお礼を言われた。福岡(九州)は良かとこ倍、いや良かとこばい。
 (写真は、こんな感じで仕事をしている。襖の向こうの和室はとてもお見せできない)

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