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ジェイン・オースティン(Jane Austen)②

  • 2012-09-13 (Thu) 13:41
  • 総合

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 順序が逆になった。物語の軸となるのはイングランドの田舎町に住む年頃の5人娘を抱えた中流層のベネット家。父親のベネット氏は読書が好きで、あまり、世の中の些事には関わりたくない人物。母親のベネット夫人はおしゃべり好きであまり好印象を抱かせる女性ではない。彼女の関心事は5人の娘を一日でも早く、自分たちより暮らし向きのいい上流階級の青年に嫁がせることにある。
 近くの空き家を独身の貴族、ビングリー氏が借り受けたことから、ベネット夫人はこの貴族に娘の誰か一人、できれば長女のジェインを嫁がせるべく奔走する。ビングリー氏は幸い人格的にも好人物のようだ。小説は冒頭から、次のような警句に近い文章で始まる。
 It is a truth universally acknowledged, that a single man in possession of a good fortune, must be in want of a wife. (資産のある男が独身であれば、次に求めるのが人生の伴侶であることは、世の中で等しく認知された真実である)
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 イングランドで19世紀初頭に暮らした母親たちが皆ベネット夫人のように考え、行動したかは知る由もないが、いやはや、どうして彼女のような母親からジェインや二女のエリザベスのような素敵な娘が生まれたのだろうと思ってしまう。もっとも、世の中を見渡してみると、案外、そういうものらしい(と私は納得せざるを得ないが)。
 ベネット夫人の思惑は別にして、ビングリー氏は期待通り、ジェインと恋に落ちる。ところが、ビングリー氏の友人でより資産家のダーシー卿はエリザベスたちには「高慢」と映り、忌み嫌われるようになる。彼女たちはダーシー卿より身分は低いが幼馴染の美男子のウィカムからあれこれ、卿の悪口を聞かされたからだ。実はそうした悪口は全くのでたらめで、非は信頼を裏切ったウィカムにこそあることをエリザベスたちは後に知る。ウィカムはベネット家の末娘でわがまま放題に育ったリディアと駆け落ちする。ベネット家にとって「恥辱」となるこの事件もダーシー卿が「尻拭い」を厭わず、エリザベスたちは危機から救われる。このこともあって、エリザベスはダーシー卿への愛を深めていく。
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 紆余曲折あってジェインとビングリーは最後に結ばれる。ダーシー卿も当初、エリザベスたちに抱いていたのが「偏見」であることを悟り、二人は書名の「高慢」と「偏見」から「解放」され、華燭の典に向かう。万事めでたしだ。
 エリザベスとダーシー卿がお互いの愛を確認した後、ダーシー卿が彼女に告白する「処世訓」も興味深い。自分は両親から家名に恥じないように生きることを諭されてきたとして、自分が正しいと思うことをしている限り、他人の心持には特段配慮する必要がないこと、常に頭に入れて置かなければならないのは家族のことであり、そのためには利己的で横柄であっても構わないこと、家族以外の世界は無視しても構わないこと・・・。彼はこうした「信条」で28歳に至るまで生きてきて、エリザベスに出会って始めてそうした考えかたが間違っていたことを悟ったと告白する(注)。
 (写真は上から、チョートンに残るオースティンが暮らした家の記念館。母親と姉、友人の4人でいつも囲んでいた食卓。オースティンが小説を執筆した小さい机)

 注)次のような言葉で語られる告白だ。
 “I have been a selfish being all my life, in practice, though not in principle. As a child I was taught what was right, but I was not taught to correct my temper. I was given good principles, but left to follow them in pride and conceit. Unfortunately an only son (for many years an only child), I was spoilt by my parents, who, though good themselves (my father, particularly, all that was benevolent and amiable), allowed, encouraged, almost taught me to be selfish and overbearing; to care for none beyond my own family circle; to think meanly of all the rest of the world; to wish at least to think meanly of their sense and worth compared with my own. Such I was, from eight to eight and twenty; and such I might still have been but for you, dearest, loveliest Elizabeth! What do I not owe you! You taught me a lesson, hard indeed at first, but most advantageous. By you, I was properly humbled. I came to you without a doubt of my reception. You showed me how insufficient were all my pretensions to please a woman worthy of being pleased.”

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