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ジェイン・オースティン(Jane Austen)①

  • 2012-09-12 (Wed) 05:51
  • 総合

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 アイルランドを出て、再びイングランドに戻った。ロスレアというフェリー港から午後9時出港の船に乗り、日が替わった午前零時半ごろ、対岸のウェールズのフェリー港に接岸。船を降りた地点にある駅で未明の列車を待ち、2回乗り換えて、午前8時過ぎにイングランドのウインチェスター(Winchester)に到着した。旅費は思ったより安く、48ユーロ(約4700円)。列車の乗り換えもあり、ほとんど寝ることができなかったが、1夜分ホテル代が浮いたと思えば悪くない。さすがに疲れ果てたが。
 ウィンチェスターに来たのは、ジェイン・オースティンのゆかりの地だから。オースティンは1775年に生まれ、41歳の若さで1817年にウィンチェスターで病没している。オースティンが生涯のほぼ最後の8年間を暮らしたのがウィンチェスターの近くにあるチョートン(Chawton)という村。私がオースティンについても書くつもりだと言うと、イングランドで出会った人は誰もが「おお、あなたはそれではチョートンに行くのですね。素敵な地ですよ」と口をそろえた。それなら、ぜひ行かなくては!
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 ウィンチェスターに着いて、バス停まで歩き、チョートンに向かうバスに乗った。近くと書いたが、そう近くはなかった。バスで40分ほどの距離。着いたところは標識がなければ、たどり着くのに難儀しそうなところだった。あるのは車が通るだけの舗装された道と畑というか草原。標識に沿って歩き、目指す“Jane Austen’s House Museum” という記念館に着いた。観光客に人気の地のようで、国内外から家族連れや団体旅行の人々で結構賑わっていた。
 オースティンはいくつかの代表作があるが、私が取り上げるのは “Pride and Prejudice” (邦訳『高慢と偏見』)。作家サマセット・モームはこの小説を高く評価して「世界十大小説」の一つに選んでいる。夏目漱石は『文学論』の中で「Jane Austenは写実の泰斗なり。平凡にして活躍せる文字を草して技神に入る」と絶賛している。
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 私は正直に告白すると、オースティンの作品は書店で買い求めたことはあるが、最後まで読んだことはない(かと思う)。今回の旅の直前、実はたまたま使っていた電子辞書の中に入っていた「世界文学100作品」に “Pride and Prejudice” が含まれていて、時間のある時に読み進めた。実に面白かった。こんな女性に出会えば、誰でも恋に落ちるのではと思ったのは、ベネット家の次女のヒロイン、エリザベスだ。19世紀初頭のイングランドにこのような自立的な女性がいたとは。日本は江戸時代真っただ中である。
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 物語の後半に、彼女が自分より社会的地位がはるかに高位のレディー・キャサリンに対し、臆することなく自分の意見を述べるシーンがある(注)。水戸黄門のテレビドラマなら、商家の娘が身分の高い武家階級のご婦人に意見するようなものだろうか。今日に至るまで、この作品が世界中で多くの読者を魅了している一因なのだろう。
 (写真は上から、ロスレア港からケルト海を望む。ウィンチェスターの街。チョートンにあるオースティンが住んでいた家で今では記念館への道順を示す道路標識)

 第56章で次のような場面だ。自分たちより身分が劣るエリザベスが自分の甥っこに当たるダーシー卿と結婚するらしいとの噂を聞きつけたレディ・キャサリンがベネット家に駆けつけ、エリザベスに対し、「立場をわきまえなさい。ダーシー卿との結婚を夢見るなんてことはこの私が許しませんことよ」と激高する。エリザベスはこの時点ではダーシー卿がそういうことを思っているとは知らないものの、レディ・キャサリンの恫喝に対し、「自分の人生を何で赤の他人のあなたに指図されるのか」とでも言うように、臆することなく対応する。「さあ、はっきり言いなさい。あなたはダーシー卿からプロポーズされたのですか否か?」と迫るレディ・キャサリン・・・。
 "This is not to be borne. Miss Bennet, I insist on being satisfied. Has he, has my nephew, made you an offer of marriage?"
 "Your ladyship has declared it to be impossible."
 "It ought to be so; it must be so, while he retains the use of his reason. But your arts and allurements may, in a moment of infatuation, have made him forget what he owes to himself and to all his family. You may have drawn him in."
 "If I have, I shall be the last person to confess it."
 “Miss Bennet, do you know who I am? I have not been accustomed to such language as this. I am almost the nearest relation he has in the world, and am entitled to know all his dearest concern.”
 “But you are not entitled to know mine; nor will such behaviour as this, ever induce me to be explicit.”

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