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『謎解きはディナーのあとで』考③

 (東川篤哉さん著『謎解きはディナーのあとで』の第五章「二股にはお気をつけください」の真相部分に言及しますので、ご注意ください。)
 この話のキー・ワードは「身長」です。人間の身体のなかで、最もその特徴を変えにくく、最も偽装することが難しいのが身長です。体重は服装によって、髪は鬘によって、顔は整形によって何とか偽装することはできます。国籍・性別・年齢といった特徴も、ごまかすことは可能です。しかし、意外にも身長は容易に変形することができないものなのです。また、最もとらえにくい特徴が「身長」というものです。出会った人間の身長が何センチぐらいだったかを掌握できる人は少ないでしょうし、自分より相手が高かったか低かったさえ覚えていない場合もあります。それに比べて「体重」は、相手がどれぐらい太っていたか(痩せていたか)ということを記憶に留めやすいのではないでしょうか。
 犯人の偽装は何かを隠すために行われます。この話における死体はあえて裸にされており、そこに隠しているものがないような状態にされていました。ここに、もっとも見えにくいものを隠すために、最も見えやすい状態が偽装されているというパラドックスが生じているのです。
 ドラマの方は、容疑者の身長を比較するという難しい問題を克服するために、クィーン・キングというキャラクターが登場しています。ややファンタステックな設定になっていますが、そこはドラマならではのお遊びと割り切った方がいいのかもしれません。風祭警部が事件解決のために役立つという設定が独特です。
 

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