書籍

『月光色のチマ』 韓勝源(ハン・スンウォン)

《韓国文学の源流シリーズ》
『月光色のチマ』
韓勝源(ハン・スンウォン)著
井手俊作訳

四六、上製、216ページ
定価:本体2,200円+税
ISBN978-4-86385-393-5 C0097

ハン・ガンの父で韓国を代表する作家
ハン・スンウォンの自伝的作品。


日本による植民統治時代に生まれ、露草のように美しく生きた気丈な母チョモン。半島南部のとある海辺風景をバックに、激動の時代の約一世紀を強く生き抜いた母の生涯を叙情あふれる筆致で描く傑作長編。

私の母は、日本による植民統治期と解放前後のめまぐるしい時空で辛酸をなめつつ暮らしながら私を産み育てたのだが、今日の私があるのも、意志の弱い私が病んだり絶望して彷徨(さまよ)ったりするたびに母が私を慰め、希望を持つように励ましてくれたおかげである。 (作者あとがきより)

2020年3月全国書店にて発売。


著者プロフィール
韓勝源(ハン・スンウォン)
1939年、全羅南道の長興で生まれ、徐羅伐(ソラボル)芸術大学文芸創作科を卒業、1968年、大韓日報の新春文芸に短編「木船」が当選して創作活動を開始。故郷の海辺に生きる人々の姿を中心に土俗的な香りのある文体で描き、〈海の作家〉と形容される。現代文学賞、韓国文学作家賞、李箱文学賞、大韓民国文学賞、韓国小説文学賞、韓国海洋文学賞、韓国仏教文学賞、米国桐山環太平洋図書賞、金東里文学賞など受賞多数。小説集に『前山も畳々と』『霧の海』『さ迷う鳥』『廃村』『入り江の月』『わが故郷 南の海』『セトマウルの人々』『海辺の旅人』『希望写真館』など、長編小説に『アジェ・アジェ・パラアジェ』『我々の石塔』『海に昇る朝日』『詩人の眠り』『東学制』『カーマ』『父のために』『蓮花の海』『海山に行く道』『夢』『愛』『花蛇』『ホテイウオ船』『隠者』『黒山島の空の道』『元暁』『秋思』『茶山』『五升の麦』『ピープル仏陀』『港々浦々』『冬の眠り、春の夢』『愛よ、血を吐け』『人の素足』『水に浸かった父』などがある。

 

訳者プロフィール
井手俊作(いで・しゅんさく)
1948年、福岡県大牟田市生まれ。1974年、早稲田大学政治経済学部卒。新聞社勤務を経て2009年に韓国文学作品の翻訳を始める。訳書に、チェ・イノの小説集『他人の部屋』(2012年 コールサック社)、小説『夢遊桃源図』(同)、ハン・ガン『少年が来る』(2016年 クオン)など。


韓国文学の源流シリーズ
およそ100年前の朝鮮時代から始まり、近現代文学の主要作家の作品によって構成されるシリーズ。韓国現代文学のファンにとって、より深く、韓国の時の流れを俯瞰することができるはずです。
 

書評

「統一日報」2020年4月15日
《お母さんっ子と自認する筆者の愛情あふれる筆力により、登場する「藍色のチマに白いチョゴリを着たうっとりするほど色白の15歳の少女」は、実にはつらつと生を謳歌している。ボラの化身と思われるような、海の芳醇さをたたえたチョモンは、人生をたくましく生きていく》

図書新聞 2020年7月18日 評者=林浩治
《韓勝源がマザコンでなく堅実にかつ保守的に生きる道を選んでいたなら、韓国源流文学のみならず、作家ハン・ガンも生まれなかったかも知れない》