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『国宝』を観て

  • 2025-08-19 (Tue) 13:56
  • 総合

 夏休みの間に見ておきたいと思っていた映画があった。『国宝』。世間では結構話題になっているとか。そうしたことに疎い私は何も知らなかった。友人から「推奨」のメールが届いたので、彼がそれほど評価しているのであれば、観てみるかと興味をそそられた次第。
 それで昨日天神の映画館に出かけた。私が時々利用しているのはKBC会館とかいうテレビ局の側にある映画館。小さい映画館で入り口に近い窓口でチケットを買い求める。昨日の映画館は以前に行ったことはあるが、最近はない。それで少し戸惑った。窓口がない。ATMのような機器でチケットを購入する仕組み。若い人たちにはお馴染みだろうが、私のようなアナログ人間には勝手が悪い。それでもなんとかシニア料金の1,300円でチケットを購入。後で思ったのだが、どうしてシニア世代だと機器は分かったのだろう。カメラが内蔵されており、ある程度の年齢に達していると気を利かせて判断してくれるのだろうか。
 さて、肝心の映画。3時間近い長尺物だ。米大作の『風と共に去りぬ』ぐらい長い? いや、あれはもっと長かったか? 『国宝』は途中でトイレに立つご婦人が何人かいたが、無理からぬことと思った。作品はその長さが気にならないほどに緊張感をはらんだいい映画だった。確かに一見の価値ありだ。歌舞伎の女形が主人公となっており、二人の若い男優が際立つ演技を見せていた。男優の名前ぐらいは私も知ってはいたが、実際の演技を目にしたのは初めて。なるほど、人気があるのは宜なるかなだ。
 悪魔に魂を売っても芸(歌舞伎)を磨きたいと願う主人公。彼は裏社会の出自であり、後ろ盾となる家柄ではない。その彼が歌舞伎役者として生き残るのは鍛え抜かれた芸に頼るしかない。迫真の演技に圧倒されながら、ずっと昔に観た中国の映画「さらば、わが愛 覇王別姫」のことを思い出していた。あちらは中国の政治体制の変化、文化大革命の動乱が下敷きになっており、『国宝』とは大いに異なるが。
 記憶に基づいて書いているので誤解があるかもしれないが、それはご容赦を。確か最初のシーンは1970年代だったかと思う。私は高校生の頃。映画の中の風俗や服装などが当時をほぼ忠実に描写しており、引き込まれるように観た。
 もう一つ、感じたことを付記しておきたい。歌舞伎は日本を代表する伝統芸能であり、海外でもよく知られている。しかしながら、私は個人的な興味・関心はあまりない。おそらくこれからもないだろう。劇場に足を運んで出し物を観ることもないだろう。ところで、歌舞伎や能、狂言などの伝統芸能の後継者不足がメディアの話題になることはないような気がする。歌舞伎の行く末を案じる声も聞いたことがないかと思う。(農林業の後継者不足を憂える声はもはや話題にさえならない)。とすれば、歌舞伎などの伝統芸能の世界では世代間の継承が滞りなく行われているのだろうか。
 『国宝』を観て、歌舞伎の美、女形の妖艶さには魅了された。ひょっとしたら、将来歌舞伎の魅力に気づき、熱心なファンとなる可能性もあるのだろうか。そうなったらそうなったで楽しみではあるが、私はやはりロンドンのウエストエンド街で観たミュージカルやオペラあるいはストレートプレイ(straight play=台詞劇)が忘れられない。近い将来再訪してたっぷり楽しみたいと願っている。

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