『現代ストリップ入門』
武藤大祐・夏堀うさぎ編著
四六判、並製、312ページ
定価:本体2,300円+税
ISBN978-4-86385-705-6 C0073
デザイン 成原亜美(成原デザイン事務所)
第二次大戦後すぐに生まれ、長い歴史の中でたえず変容してきたストリップが、近年また新たな角度から注目を集めている。2010年代半ばから女性観客が増加したことをきっかけに、老若男女が身体表現を多様な価値観で楽しむ文化として、ストリップはリバイバルを遂げるに至った。ジェンダーやセクシュアリティをめぐる今日的な問題意識とも共振しつつ、より多様で流動的なエロスをめぐるライブ・パフォーマンスとして、性別や世代を問わず広い層に注目されるようになったのだ。
本書は座談会、インタビュー、論考、ルポ、エッセイ、漫画などによって、ストリップの現在を多様な視点から掘り下げる。現代のストリップには一体どのような魅力があり、またそれはどのように語ることができるのか? 編者は、コンテンポラリーダンスから民俗芸能まで幅広く舞踊に精通する研究者の武藤大祐と、女性が中心となって作るストリップ同人誌『イルミナ』の編集を手掛ける夏堀うさぎ。まだストリップを見たことがない人も、もうハマっている人にも楽しめる、絶好の入門書!
◎踊り子の宇佐美なつ、翼裕香、牧瀬茜に現場の声を聴く。カラー口絵も収録
◎近年の新展開、身体の政治、他の芸能ジャンルとの関係など、論点を網羅
◎日本ストリップ史概説、年表、読書案内、用語集など資料も充実
2025年10月中旬刊行予定です。
「21世紀も4分の1が過ぎようという今、ストリップが再び盛り上がるなどといったい誰が予想できただろう。見たことがあってもなくても、おそらく誰もが知っている、そのストリップである。音楽にのせて(おもに)女性が脱衣していくエロティックな舞台であり、法的には「性風俗」に区分されると同時に、れっきとした「芸能」でもある。(略)時代を超えて変容し続けてきたストリップは、多層的かつ多義的で、多くの矛盾を含み持ち、合理的な理解を寄せつけないところがある。しかしそれはむしろ豊かな混沌でもあるはずだ。第二次世界大戦後から現在まで、綱渡りのように連綿と持続するこのユニークな文化を、清濁併せ呑む姿勢で受け止めつつ、我々の身体とその未来を考えてみたい」(武藤大祐「はじめに」より)
「ストリップ劇場はほぼ年中無休で営業している。劇場に通いはじめたころ、客席から手を伸ばせば届きそうな距離の舞台で毎日裸のパフォーマンスをしている人たちがいるという事実にまず心撃たれた。次々と現れる踊り子たちのステージは、選曲、衣装、舞台上での振る舞い全てに、その人自身の過去と現在、自分はどういう人間で、何に惹かれ、自分のことをどう見せたいのかという思想が映し出されていた。(略)私たちはどのようにして自分の身を開いていくことができるのか。何かを相手に差し出すことは、利害と打算、被害と加害、奪われることと奪うことでしかありえないのか。ストリップを見るときいつも頭のどこかにその問いがある。そして劇場の光のなかで見える景色は、いつもその瞬間にしかないあり方で、さまざまな濃淡での性を含んだ、人と人との関係性の可能性を示してくれる」(夏堀うさぎ「あとがき」より)
【目次】
はじめに(武藤大祐)
用語集
第1部 新しいコンテクスト
宇佐美なつ×夏堀うさぎ×武藤大祐座談会「ストリップは止まらない」
菜央こりん「ストリップの効用」
山中千瀬「大丈夫な光」
池田智恵「私たちは自分自身を発見する──ストリップを語る言葉について」
武藤大祐「ストリップ概説──現在・過去・未来」
渡邉千尋「純粋ではありえないことの悦び──浅葱アゲハと生のメタモルフォーゼ」
第2部 現場に即して
翼裕香インタビュー「エロに対して真剣なんですよ」
吉田真紀「ストリップ・ストーリーズ──A級小倉劇場の人々」
にっしーインタビュー 「行ってなんぼ、通ってなんぼ」
牧瀬茜インタビュー 「行けるところまで行こうかな」
結城敬介「ストリップ・言葉・感動」
第3部 より広い視野で
船曳建夫×夏堀うさぎ対談「裸のキラキラ、非武装の笑顔──ストリップとセクシュアリティ」
ケイトリン・コーカー「踊り子の身体は何をなしうるのか──近年の女性観客と往年の男性観客が見る夢」
下野歩「「女・女・女」の幸福──ストリップと日本の諸芸能」
上岡磨奈「ストリップにおける「アイドル」の読み方──並べ重ねられる意味を探る」
武藤大祐「世界舞踊史における日本のストリップ──探究としてのエロティシズム」
日本ストリップ年表
読書案内
あとがき(夏堀うさぎ)
【編著者プロフィール】
武藤大祐(むとう・だいすけ)
1975年生まれ。群馬県立女子大学文学部教授(舞踊学・美学)。ダンス批評家。共著『バレエとダンスの歴史』(平凡社、2012年)、論文「スト
リップとCOVID-19の共生」(吉田ゆか子・増野亜子編『コロナ状況を通して考える芸能と場』、春風社、2024年)、“Choreography as Meshwork”(T. DeFrantz and P. Rothfield eds., Choreography and Corporeality, Palgrave Macmillan, 2016)など。ストリップ劇場ではたいてい飲酒している。
夏堀うさぎ(なつほり・うさぎ)
1989年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科修士課程修了。2000年代半ば、初めて同人誌を作る。2014年8月、ストリップに出会う。ストリップと社会と私を考えるZINE『イルミナ』を2019年に立ち上げ、ほぼ半年に1 号のペースで発行中。かぶり席がとにかく好き。