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犬も歩けば

  • 2019-04-07 (Sun) 10:09
  • 総合

20190407-1554599013.jpg 窓のないホテルの一室。やはり外の様子が伺いしれないというのは不満だ。緊急時のことを考えると不安感はさらに募る。この部屋は12階だから、窓があればどうとかなるというものでもないが。昨日は一応、非常階段を確認するため、自室がある12階から地上まで歩いて降りてみた。階段の通路に洗濯物が干してあったり、雑多な物が置いてあるのはまあ許せるとして、3階から下は通行不能。回れ右してもう一つある階段を下ってようやく地上に降り立った。なんだかなぁ!という気分だ。
 土曜朝。とりあえず大切な朝飯を食べよう。フロントに鍵を置いて、エレベーターで一階に降りる。天気は晴れで上々なことに初めて気がついた。空気も気持ちいい。
20190407-1554599275.jpg 朝飯が食べられる食堂を探す。日本でもお馴染みの外食チェーン店は多いが、できればここでしかお目にかかれない地元の店で食べたい。それはどの国を旅しても同じ思いだ。
 一軒、そういうお店を見つけ、通りに面した厨房をのぞき込んでいると、「ニーハオ。いらっしゃいませ」という感じで店内に誘う。夫婦と若い娘さんが立ち働いている。温かくて少し塩っぱい咸(シエン)豆漿(豆乳)を食べたかったのだが、この店にはなかった。しかたないので温めた豆漿に具入りの卵焼きのようなものを注文する。食後のコーヒーを含めて締めて95元(約360円)。コーヒーを飲みながら、しばし夫婦と常連らしきお客さんとのやり取りに耳を傾ける。「コーヒーを一杯頂戴な」といったやり取りは聞き取れた。
20190407-1554599576.jpg ホテルに戻ってメールを確認する。前夜、中正紀念堂の広場で催されていた集会で立ち話をした男性からメールが届いており、まだ返信していない。どうも初代総統の蒋介石の偉業をしのぶ集会のようだった。参加者は圧倒的に中高年の人々でかなりの高齢者の方々も見かけられた。壇上ではお揃いの衣服を身に付けた人たちが荘重な感じの歌を合唱している。ひとしきり見物した後、会場を後にしようとしていたら、遠くで何やら古めかしい軍服を着こんだ男性数人の姿が目に入った。
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 その内の一人の軍服には見覚えがあった。ケーブルテレビで何度も目にした中国の軍事ドラマで旧日本軍や共産党軍と戦っていた国民党の兵士の軍服だったからだ。私は声をかけていいものかためらったが、好奇心を抑えきれずに声をかけた。以下、英語でのやり取り。「あなたが着ているのは国民党の軍服ですよね」「そうです。私の祖父は上海で日本軍と戦い、捕虜となり、その後、日本の傀儡政権の兵士となりました」「そうですか。その後、蒋介石に率いられて台湾に来たのですね」「ええ。今下げている小剣は新しいものですが、祖父もこのような剣を持っていました」「そうですか。ところで蒋介石はあなたにとって今も英雄ですか?」「90%はそうです」「残りの10%は?」とここまでやり取りしたところで立ち話がストップしたので、彼はその保留した10%の理由をメールで補足してくれたのだ。蒋介石の偉大さを称えた上で、「彼はその気になれば多くの人々の命を救えることができたと思う。だがそれをしなかったので90%です」と補足していた。
 この男性は36歳だと語っていた。高校時代には1年間、日本語を勉強したという。メールは「日本の新元号・令和の施行、おめでとうございます。私の初めての男児は令和元年5月に誕生する予定です」と結ばれていた。

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