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『伊勢物語』

  • 2015-06-04 (Thu) 14:29
  • 総合

 ニューヨークヤンキースのマー君(田中将大投手)が故障明けで久しぶりに登板し、好投し、今シーズン3勝目(1敗)を上げた。日本時間だと午前4時半からのテレビ中継だったため、一応、目覚ましをかけておいた。目覚ましのベルに起こされ、テレビのスイッチを入れると、そのままベッドに倒れ込んだ。テレビはベッドの頭の先にあるので、映像は見ずに、夢うつつで現地アナウンサーの実況(英語)を聞こうとした。あまり覚えていないのだが、マー君が対戦相手のマリナーズ打線に打たれ、1対1の同点になったと聞いた時点で「あ、これは負けるかな」と思ったのだろう。テレビのスイッチを切って寝込んでしまった。
 夜が明けた数時間後にようやく目覚めた。パソコンを開いてMLBのホームページにとんで確認すると、おお、なんとマー君は7回を1点に抑え、9三振を奪い、勝利投手になっているではないか。しまった。生で楽しむ機会を逸してしまったと後悔したが、もう後の祭りだ。「後の祭り」。英語では “That’s a late festival.” いやこれは冗談。正しくは “What’s done is done.” とか “That’s water under the bridge.” とかいうらしい。
 ヤンキースファンの一人は “If he is healthy, he will be possibly one of the best in baseball and he is our best pitcher.” と称賛していた。
                  ◇
 窓辺の風鈴が心地好い音を届けてくれる。読書もはかどるというものだ。私が目指す “simple life” にまた一歩近づいたかな? そうであれば嬉しいのだが、はてさて、自信はない。
 さて、『伊勢物語』。「むかし、男(をとこ)ありけり」という冒頭の文章を目にした時、昔、おそらく高校時代か、古文の授業だかで、この物語は読んだことがあるなと思った。私が手にしているのは角川文庫の「ビギナーズ・クラシックス 日本の古典」と呼ばれるもので、古文の専門家による現代語訳が付いている。この現代語訳がなければ、私には歯が立たないだろう。
 そのうちに次のような和歌が出てきた。おお、これはよく覚えている。そらで覚えたことを思い出した。そうそう、こんな和歌だった。———— 筒井(つつい)つの井筒(いづつ)にかけしまろがたけ過ぎにけらしな妹(いも)見ざるまに———— 高校2年生の頃だった。同じクラスに確か筒井さんという女生徒がいたこともあって、「筒井」つながりでこの和歌は妙に記憶に残っているのだ。別に彼女に恋心を抱いていたというわけではない・・・。
 読み進めていて、次のような文章にも出くわした。 ・・・男帰りにけり。女、いとかなしくて、しりに立ちて追ひ行けど、え追ひつかで、清水のある所に伏しにけり・・・
 私にはここの「え追ひつかで」(追いつくことができなくて)というくだりは、少し大仰な言い方をするなら、琴線に触れるように理解できた。山里の郷里では今もこの「え〇〇」という表現をするからだ。「おまやぁ、それでくるや?」(“Can you do it?”)「うんにゃ、えせんばい」(“No, I don’t think I can do it.”)というような具合だ。
 非常勤講師をしている大学で古文・方言の専門家の先生に尋ねたら、福岡の方言には「え〇〇」は見られないとか。少しく郷里の言の葉を誇らしく思った。

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