書籍

『パールグレイの瞑想』岡田衣代

ユニヴェール14
『パールグレイの瞑想』
岡田衣代

四六判/並製/160頁 
定価:本体2,000円+税  

ISBN978-4-86385-400-0 C0092

 

こっちへおいでと呼んでいる
自在なレトリックがあなたの扉を開ける
くじらとなって遊ぶことができる世界へ
  加藤治郎

2020年7月全国書店で発売。

 

【自選5首】

口笛が呼んでいるからうす青い朝露くらいに光ってあげる
こいしいと唇(くち)にのせたら恋しさはカシューナッツのように曲がって
これもまた短歌なんです「     」律儀な人にはなんにも見えぬ
病葉のように言葉は蝕んでうたってもうたっても荒れ野だ
断ち切れたロープが風にゆれている なにもなかったような貌して

 

【目次】

春天来了    
こいしい    
新しき波   
なんにも見えぬ    
さざなみの中で    
キングギドラを待ちながら    
風の領域    
雲でも食べに    
曲がり角    
妣と跳ぶ    
がらんどう    
シシリアのパイプ   
鳥になれそうな日   
めざめ    
蟬しぐれ    
真っ赤なもの    
あんかるなしおん    
風花を待つ    
春は小寒い    
根なし草    
むむむむむむって    
迷走の雲   
冬の陽きらら   
疵という穴
この指とまれ    
光っている夏    
ゲランドの塩    
星宿    
雪ふりしきる   
うふふ・うふふ    
ロープ   


解説 ただよいあそぶ 加藤治郎    
あとがき
 

【著者プロフィール】
岡田衣代(おかだ・きぬよ)
1940年浜松市生まれ、名古屋市在住。
自由律俳句「層雲」、一行詩「視界」、桜狩短歌会を経て、現在、未来短歌会に所属。
星雲短歌会維持同人・編集委員。
日本歌人クラブ会員。詩集『一行の風』歌集『傾ける街』『終章の夏』『秋の言の葉』

 

ユニヴェール
新鋭短歌シリーズ、現代歌人シリーズが生まれ、
短歌世界は思いもかけない方向にひろがりをみせている。
そして今、新しいレーベルが生みだされる。

ユニヴェールとは、短歌の壮大な宇宙。
これからもきっと、新しい歌人との出会いが待っているにちがいない。
http://www.shintanka.com/univers

書評

「信濃毎日新聞」(2020年11月7日) 評者=金原瑞人さん

《歌のひとつひとつが読者の頭のなかに、頭では捉えきれない現実を幻想的に呼び起こす。ここでは、「踏ん付けたズックの踵のような日」があったり、「ゆっくり錆びてゆきたい私」や「堅っくるしい犀がいっぱい」いたり、「ページがら波がしぶいて」きたりする。》