現代歌人シリーズ37
『初恋』
染野太朗
四六判変形、並製、160ページ
定価:本体2,200円+税
ISBN:978-4-86385-580-9 C0092
カバーオブジェ 津田三朗
悲しみはひかりのやうに降(ふ)りをれど会ひたし夏を生きるあなたに
恋の悲しみも苦しみも嫉妬も
ただひたすらに 会いたい 伝えたい
狂おしい胸の裡に吞み込んで、ただ歌を
2023年6月下旬発売
【収録歌より】
ああなんでこんなに傷つけたいのだらうしじみ汁ずずずと啜りたり
恋のやうに沈みつつある太陽が喉をふさいでなほ赤いんだ
しあはせのきみにかかはることできず冬が去る雨のすくなかつた冬
四月二日物干し竿を光ごとぬぐつてぼくは布団を干した
嫉妬を投げつけてほしかつた茶碗とか花瓶とか小銭のごとく
【著者プロフィール】
染野太朗(そめの・たろう)
1977年茨城県生まれ、埼玉県に育つ。
歌集に『あの日の海』(本阿弥書店、2011年)、『人魚』(角川書店、2016年)、現代短歌クラシックス『あの日の海』(書肆侃侃房、2021年)がある。
短歌同人誌「外出」「西瓜」同人。短歌結社「まひる野」編集委員。
掲載情報
2023年7月17日(月)京都新聞 「詩歌の本棚 新刊評」 評者=真中朋久さん
《恋の歌の多くは苦みや辛味の中のかすかな甘みを味わう》
2023年9月12日(火)毎日新聞 評者=中川佐和子さん
《恋の苦しさを胸におさめつつ思いを伝えたくてひたすらに詠む》
2023年9月23日(土)読売新聞「新刊・近刊」
《会いたい、苦しい、嫉妬……。張り裂けそうな胸の内が、いくつもの歌となる》
角川短歌 2023年11月号 書評 評者=森山良太さん
《直接的な表現の作品が多いが、文体の屈折が陰影を加えている》