書籍

『ハビタブルゾーン』大塚寅彦

現代歌人シリーズ36
『ハビタブルゾーン』

大塚寅彦

定価:本体2,000円+税
四六判変形、並製、144ページ 
ISBN:978-4-86385-564-9 C0092

装丁:毛利一枝

 

2023年度中日短歌大賞受賞!


卵白はかたまりやすき泪とも零れし卓に朝陽さやけし

病をえた人とともに過ごした日々
濃密な時間は歌に溶け出し
風や水となって胸内に沁みる
哀傷のプリズム

2023年4月上旬発売予定。

【収録歌より

車椅子の君どこまでも押しゆかむ死も患ひも振り切るまでに
空見ればおほき虚なり花咲けば色むなしきよ君在らぬ世は
他界よりメール来る夜やいつかある氷の転ぶがの着信音に
「だつて君は死んでゐるだろ」夢に見し面に言ひきふいの目覚めは
たましひは苦に歪みつつ終に吐く真珠と思はむ月かげの澄む

【著者プロフィール】
大塚寅彦(おおつか・とらひこ)

1961 年5月17日、愛知県生まれ。
1980 年中部短歌会入会、春日井建に師事。1985 年『刺青天使』以降歌集5冊を上梓。
中部短歌会「短歌」編集発行人。中部短歌叢書第309篇。

書評・掲載情報

角川短歌「短歌年鑑 令和六年度」 今年の秀歌集評 評者=小川恵子さん

《決して永訣ではない。共に歩み共に見た「生存領域」に微笑む存在の君。透徹の懇親の『ハビタブルゾーン』》