書籍

『自由』大口玲子

現代歌人シリーズ30
『自由』
大口玲子

四六判変形/並製/168頁 
定価:本体2,400円+税  
ISBN978-4-86385-435-2 C0092

装丁:間村俊一

第48回日本歌人クラブ賞受賞!

海暗くあるのみ白き灯台は光の問ひを投げつづけをり

東日本大震災からまもなく10年。宮崎で暮らしながら、他の人々のために、自分自身からも自由であることを模索しようする本歌集は、読む人に「自由とはなにか」を問い続けます。

2020年12月中旬刊行。

 

【自選6首】
海暗くあるのみ白き灯台は光の問ひを投げつづけをり
ジャカランダの落ちたる花も木に残る花もむらさきにけぶるあしたは
見せることあらねど見せしめのごとき死を死ぬのか人は目隠しをされ
川沿ひと信じ歩いてきた朝のここは川ではなくて海峡
晩おそなつ夏の阿修羅像きみは正面をわれは左の顔を見てをり
オーロラを動かすマウスに触れて子はひとり極地に立つごと冷えて

 

【著者プロフィール】
大口玲子(おおぐち・りょうこ)

1969年東京都大田区生まれ。歌誌「心の花」所属。早稲田大学第一文学部日本文学科卒業。中国長春市、東京や仙台市や福島市で日本語教師をつとめる。1998年、「ナショナリズムの夕立」で第44回角川短歌賞受賞。宮城県仙台市、石巻市を経て、現在は宮崎県宮崎市在住。歌集に『海量』(雁書館 1998)、『東北』(雁書館 2002)、『ひたかみ』(雁書館 2005)、『トリサンナイタ』(角川書店 2012)、『桜の木にのぼる人』(短歌研究社 2015)、『ザベリオ』(青磁社 2019)、歌文集に『セレクション歌人5 大口玲子集』(邑書林 2008)、『神のパズル』(すいれん舎 2016)がある。

書評

宮崎日日新聞 20210123 評者=橋本恭輔
《母親としての歌も目立ち、揺れる息子を不安ながらも温かく見守る様子が伝わる。(…)信念は息子への思いでも貫かれている》

宮崎日日新聞(2021年1月25日) 評者=俵万智
《可能性がゼロでなければ、起こることは起こる。そんなシンプルな真実を、見て見ぬふりはできない。けれど一般市民が法廷に立つことのプレッシャーは大変なものだろう。自身では分からないほどのそれを、子によって気づかされるというのがリアルだ》

南日本新聞(2021年3月28日) 評者=佐藤モニカ 
《社会や信仰、家族など、さまざまな事柄が詠まれている。本書を手に取り、1首1首の歌の響きを堪能し、さまざまな体験や思いを共有することだろう》