書籍

『世界樹の素描』 吉岡太朗

現代歌人シリーズ25
『世界樹の素描』
吉岡太朗

四六判変形/並製/144頁 
本体1900円+税  
ISBN978-4-86385-354-6    C0092

装画:重藤裕子  装幀:宮島亜紀

くちばしがとどかん場所に
さしてある青菜みたいに
ことばはとおい

ユーモアとペーソス
そして静かな怒り
歌は枝から
滴り落ちる雫となって
掌に降りつもる

 

【5首選】
君の見る夢んなかにもわしはいてブルーベル咲く森をゆく傘
だれひとり殺さずだれにも殺されず生き抜くことができますように
にんげんが塔婆のように立っとってことばときもちしかつうじひん
ほかの世に袖擦り合うもかわたれのおなじ花にて渇きゆく露
こぼれゆく 君の非侵襲的陽圧換気(NPPV)のマスクから空気漏れ 時の砂

 

著者プロフィール
吉岡太朗(よしおか・たろう)

1986年、石川県小松市に生まれる。2002年、J・R・R・トールキン「ニグルの木の葉」を読み、創作を志す。2005年、井辻朱美に触発され、短歌をはじめる。2007年、3 0首連作「六千万個の風鈴」にて第50回短歌研究新人賞を受賞。2014年、第一歌集『ひだりききの機械』(短歌研究社)を刊行。

2019年2月中旬全国書店にて発売。

現代歌人シリーズ

現代短歌とは何か。前衛短歌を継走するニューウェーブからポスト・ニューウェーブ、さらに、まだ名づけられていない世代まで、現代短歌は確かに生き続けている。彼らはいま、何を考え、どこに向かおうとしているのか……。このシリーズは、縁あって出会った現代歌人による「詩歌の未来」のための饗宴である。

現代歌人シリーズホームページ:http://www.shintanka.com/gendai

書評

「週刊朝日」7月3日発売号 評者=後藤明日香さん

《一冊を通して関西弁で歌われる。そのリズムと響きが心地よい。〔……〕生と死、地上と冥界、現実と空想といった世界のあわいを作者は自在に行き来する。》