現代歌人シリーズ24
『遠くの敵や硝子を』
服部真里子
四六判変形、並製、176ページ
定価:本体2,100円+税
ISBN978-4-86385-337-9 C0092 2刷
カバー図版、装幀 間村俊一
夜をください そうでなければ永遠に冷たい洗濯物をください
短歌はわたしではなく世界を震わせるのか。
この歌集を読んで、初めてそう思った。
世界が震え、震える世界の中にいるわたしが共鳴する。
そうか、そうだったんだ。
――金原瑞人
五首選
わたくしが復讐と呼ぶきらめきが通り雨くぐり抜けて翡翠(かわせみ)
灯のもとにひらく昼顔おなじ歌を恍惚としてまた繰りかえす
水仙と盗聴、わたしが傾くとわたしを巡るわずかなる水
つばさの端のかすめるような口づけが冬の私を名づけて去った
神を信じずましてあなたを信じずにいくらでも雪を殺せる右手
著者プロフィール
服部真里子(はっとり・まりこ)
一九八七年横浜生まれ。早稲田短歌会、同人誌「町」の結成と解散を経て、未来短歌会に所属。第二十四回歌壇賞受賞。第一歌集『行け広野へと』(二〇一四年、本阿弥書店)にて、第二十一回日本歌人クラブ新人賞、第五十九回現代歌人協会賞。
現代歌人シリーズ
現代短歌とは何か。前衛短歌を継走するニューウェーブからポスト・ニューウェーブ、さらに、まだ名づけられていない世代まで、現代短歌は確かに生き続けている。彼らはいま、何を考え、どこに向かおうとしているのか……。このシリーズは、縁あって出会った現代歌人による「詩歌の未来」のための饗宴である。
現代歌人シリーズホームページ:http://www.shintanka.com/gendai
書評
「西日本新聞」2018年12月11日
《「缶詰の桃にちいさな窪みあり人がまなざし休めるための」という歌に立ち止まってしまう。<まなざし>というのは私たちが自身の内部にどうしても閉じ込めておくことができない情動の、精神の矢である。〔……〕まなざしを委ねる受動性のなんという美しさだろうと私たちは思う。モノを見ることはあらかじめ自分がそこに置いたモノを見ることではないし、モノ自身に化身することでもない》