書籍

『暮れてゆくバッハ』 岡井隆

現代歌人シリーズ6
『暮れてゆくバッハ』
岡井 隆

四六判変形、並製、176ページ(うちカラー16ページ)
定価:本体2,200円+税
ISBN978-4-86385-192-4 C0092
装幀 毛利一枝
帯装画 ADOLPHE WILLIAM BOUGUEREAU A Soul Brought to Heaven; 1878

 

言の葉の上を這ひずり回るとも一語さへ蝶に化けぬ今宵は

この本は、一見すると、きはめて形而下的な契機によつて成立したやうに見える。しかし、詩歌といふのは、さういふ形而下的な動機を超えて動くものだ。
作者は、それまで長く続けて来たいくつかの仕事を辞めた。そのためもあつて、詩や歌をつくる悦びを覚えるやうになつた。どうやらその流れが、この本の底のところで、ささやかな響きを立ててゐるやうに作者は思つてゐるのだが、錯覚であらうか。
(著者あとがきより) 

2015年8月上旬全国書店にて発売。

著者プロフィール

岡井 隆(おかい・たかし)
1928年名古屋市生まれ。1945年17歳で短歌を始める。翌1946年「アララギ」入会。1951年現在編集・発行人をつとめる歌誌「未来」創刊に加はる。慶應義塾大学医学部卒。内科医。医学博士。83年歌集『禁忌と好色』により迢空賞受賞。2010年詩集『注解する者』により高見順賞を受賞。『『赤光』の生誕』など評論集多数。1993年より宮中歌会始選者を21年間つとめた。2007年から宮内庁御用掛。日本藝術院会員。

目次

朝食のあとで   二〇一四年霜月 
好きと嫌ひと  
松にまじりて傘寿皇后のピアノを聴く  
亡き弟の霊と対話しつつ過ぎた、手術の前と後  二〇一四年朧月 
小手術の前と後  
オフィチウムを聴きながら作つた歌  
空白をのせた列車  
ライヴァル考  
水仙と霜    二〇一五年睦月 
暮れてゆくバッハ 付エッセイ 男子厨房に入る時  
花と葉と実の絵に添へて  
花も実もある噺
神楽岡歌会百号を記念し新旧の歌を合はせた 
『閑吟集』一〇による折句(アクロスティック)
移動する書斎の中で心象を写生する  
カール・ヒルティ『幸福論』に合はせて歌ふ  
オレンジの囚衣  
『宗安小曲集』一二〇による折句(アクロスティック)
定期検診のため銀座へ  
冬去らむとす   二〇一五年如月 
松本健一さんを悼む歌  
松本健一さんの霊に呼びかける 付フランソワ・ヴィヨン  
昏い入り口  
第七の孤獨    二〇一五年彌生 
言の葉の上を  
私の昭和二十年、を問はれて   二〇一五年卯月
金沢への旅のあとさき
噂の花  
昭和九十年の昭和の日に  
附録
 木下杢太郎生誕一三〇年没後七〇年に思うこと  
 「前衛再考」を話題にしたおしやべり  
 小笠原鳥類詩集の賛   
あとがき  
初出一覧  

現代歌人シリーズ

現代短歌とは何か。前衛短歌を継走するニューウェーブからポスト・ニューウェーブ、さらに、まだ名づけられていない世代まで、現代短歌は確かに生き続けている。彼らはいま、何を考え、どこに向かおうとしているのか……。このシリーズは、縁あって出会った現代歌人による「詩歌の未来」のための饗宴である。

現代歌人シリーズホームページ:http://www.shintanka.com/gendai