書籍

『羽と風鈴』嶋稟太郎

『羽と風鈴』
嶋稟太郎

四六、上製、160ページ
定価:本体2,000円+税
ISBN978-4-86385-501-4 C0092

2022年1月中旬全国書店にて発売。

 

それぞれの羽を揺らして風鈴はひとつの風に音を合わせる

第三回笹井宏之賞染野太朗賞を受賞した著者の第一歌集。

 

眼差しはあくまで低く、しかし深く、表現は抑制的に。嶋さんの歌はそんな風にして作られている。それがチェーホフと似ているのだ。────大辻隆弘

 

拡散と収斂が進行形で同時に発生しているようなこの日々のありようを、まるでひとりきりの測量士のように見つめる歌集。

────小島なお

 

歌集のどの歌についても、言葉を尽くして誰かと語り合いたくなる。一首の静謐で理性的な質感や調べに、むしろ心をあたためられたような気がした。

────染野太朗

 

【収録歌より】

地上までまだ少しある踊り場に桜の花が散らばっていた 
乗り過ごして何駅目だろう菱形のひかりの中につま先を置く
開かれて窓の格子に吊り下がるビニール傘が通路に光る
白球がいま打ち上がる公園のヒマラヤスギの背丈を越えて
屋久島の森に置かれたマイクから配信される雨音を聞く 
自動車の赤いランプの連なりが橋の終わりでほどけ始める

【著者プロフィール】

嶋稟太郎(しま・りんたろう)

1988年 宮城県石巻市生まれ。
2014年 短歌に触れる。「未来短歌会」入会。桜井登世子氏、大辻隆弘氏に師事。
2017年 未来年間賞(2016年度)受賞。
2020年 第3回笹井宏之賞個人賞染野太朗賞受賞(「羽と風鈴」50首)。
2021年 第64回短歌研究新人賞次席(「大きな窓のある部屋に」30首)。

書評ほか

神奈川新聞(2/17) 評者=田村元さん
​■息づく写実派の水脈
《嶋の比喩の歌は、丁寧な描写のためか、観念的になるどころか、歌の場面が非常にリアルに読者の心に浮かんでくる。》

東京新聞・中京新聞(3/12) 評者=大森静佳さん
《助詞の選びに至るまで文体は端正で、この作者によって世界を注ぎこまれたことで定型の器がそのものが歓んでいるような感じがする。》