March 2026
“turn in one’s grave”
- 2026-03-04 (Wed)
- 総合
このところ、気が滅入るニュースばかりだ。極めつけはアメリカとイスラエルによるイラン攻撃。国際社会からは米イスラエルの暴挙に非難囂々かと思ったが、そうでもないようだ。中国、ロシアでさえ、米イスラエル非難のトーンは抑制的に思える。前にも思ったが、イランという国は国際社会であまり親密な国はいないのだろうか。民族が異なるからか、宗教的には重なるイスラム諸国からも連帯の声はあまり聞こえない。
イラン攻撃を最終的に決断したトランプ米大統領にどういう「勝算」や「戦後処理」の青写真があるのかは知る由もないが、甚だ危なっかしく思えてならない。支持率が急落を続け、この秋の中間選挙で与党共和党の惨敗が危惧され、政権基盤が大きく揺らぐのは必至の情勢のトランプ氏が窮状を打破するためにイラン攻撃に出たのは容易に想像できるが、そうであれば必ず手痛いしっぺ返しを受けるであろう。いや、受けねばならない。
読売新聞の紙面を見ていると、なぜか切迫した緊張感が伝わってこない。他紙は読んでいないので知らない。私が駆け出しの記者だった頃、支局のデスクに言われたものだ。火事や事件が発生したら、支局総出で大騒ぎして取材合戦に挑め。及び腰になるな。こちらが精力的に騒いでいれば、火事や事件はほどなく収束する。このデスクは故人となったが、彼のこの言葉は今も時々思い出す。日本のメディアももっと大騒ぎして欲しい!
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先に英文学の名作『嵐が丘』(“Wuthering Heights”)の映画化の話を書いた。今週は終業式前の幾多の行事で授業のない日が多いため、これ幸いと繁華街にあるシネマコンプレックスに出かけた。感想を書くと、「うーん、どうかな・・」となるのだろうか。私は作品の舞台となっている英ヨークシャー地方ののどかな丘陵の光景が楽しめるのではないかと楽しみにしていたが、スクリーンでは冷たい雨が降りしきり、風が吹きすさんでいた。タイトル通りの陰鬱な「嵐が丘」のシーンの数々・・・。
もう一つ書いておかねばならないのは主役を務めた男女俳優のセックスシーンの多さ。露骨な描写はなかったものの、愛し合いながらも運命に翻弄され、別れ別れになった男女が再会後に愛を確かめ合い、女には亭主がいるにもかかわらず、奔放に愛の行為にふける。私はそうした描き方が悪いとは言わないが、途中で「あれ、エミリー・ブロンテが書いた原作はこんなにセックスシーンが多かっただろうか? どちらかというとお互いを想い合う純愛が胸を打つ作品ではなかったかな?」と首を傾げざるを得なかった。
そういえば、この映画のことを初めて知った英BBCのネットの記事では、主人公の男優と女優の体当たりの熱演を、“captivating chemistry or a hollow misfire”(魅惑的な化学反応か虚ろな失敗作か)で批評家の評価が真っ二つに割れていると紹介していた。さもありなん。観客もまばらで拍子抜けしたが、私はこの『嵐が丘』は一回で十分だ。
映画を観て散策がてら、地下鉄天神駅まで歩いた。私の頭にはとある英語表現が浮かんでいた。―“turn in one’s grave”― 英文学の取材の旅で、ブロンテ女史が眠るヨークシャーの村ハワースにある墓地にも足を運んだ(記憶がある)。“She must be turning in her grave.”(ブロンテ女史はお墓の中で憤慨してのたうち回っているに違いない)という思いだ。
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