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マーガレット・ミッチェル(Margaret Mitchell)④

  • 2011-10-30 (Sun) 09:07
  • 総合

 これまでに何回か引用してきた参考図書の小冊子 “Outline of American Literature” ではなぜか、“Gone with the Wind” を取り上げていない。著者のマーガレット・ミッチェルについても一言も言及していない。本来なら、20世紀中葉の米南部の作家の一人として紹介されてしかるべき作家であり、作品だと私は思う。
 私がかつて在籍したラグレインジ大学で英語学を教えるジョン・ウィリアムズ准教授に尋ねた。彼は同じ時期に生きた同じ南部の作家であるウィリアム・フォークナーの作品に比べればその「差」は歴然としていると語った。
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 「フォークナーの作品の登場人物は深みがあります。これに対し、ミッチェルが描いている人物は南部のステレオタイプの人物像です。ミッチェルは南部の神話を切り崩したり、挑戦しているのではなく、この作品で彼女自身が南部の神話の一部になってしまった」
 「もちろん、物語としては優れた作品です。上質のエンターテインメント作品です。映画を通して作品のことを知らない人はいないでしょう。米社会に大きな足跡を残した大衆文化であることは間違いない。そういうとらえ方をすべき作品だと思います」
 ゲティスバーグの南北戦争の史跡を見学していた時、一冊の短い回想録に遭遇した。”At Gettysburg, or What a Girl Saw and Heard of the Battle”。著者はゲティスバーグで暮らしていた当時15歳の少女で、激戦の25年後の1888年に書き残された冊子だ。北部に属していた少女には進軍してきた南部軍はどう映ったかが淡々と綴られている。
 What a horrible sight! There they were, human beings! clad almost in rags, covered with dust, riding wildly, pell-mell down the hill toward our home! shouting, yelling most unearthly, cursing, brandishing their revolvers, and firing right and left. ( 何という光景だったでしょうか。ぼろをまとい、ほこりにまみれ、荒々しく馬にまたがり、隊列などめちゃくちゃになって丘を下り、我が家に向かってやって来ていたのです。まともな人間にはとても見えませんでした。彼らは口々に何か叫んでいました。この世のものとは思えない言葉や罵りの表現でした。彼らは拳銃を振り回しながら、右に左に発砲していました)
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 ミッチェルが “Gone with the Wind” の中で北部軍兵士をモラルのない野蛮な連中とこき下ろしているのに対し、ゲティスバーグの少女の目には南部軍の兵士がまさにそのように映っている。南北戦争は1865年に北軍の勝利で終結。しかし、南部の人々がその後も、北部からやってきた人々やこれに取り入った同胞により、さらに困窮の暮らしを余儀なくされたことは、小説が描いている通りだろう。だから現在に至るまで、南部の人々のいわゆるヤンキー嫌いが続いているかに思われる。ほんの150年前の出来事である。
 (写真は上が、米南部の文学について話してくれたウィリアムズ准教授。下は、アトランタの歴史センターで催されていた、南北戦争にまつわる展示。このパネルには「南部の人々は連邦を離れ独立する当然の権利があると考えていた」と記されている)

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