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マーガレット・ミッチェル(Margaret Mitchell)⑤

  • 2011-10-31 (Mon) 02:10
  • 総合

 ミッチェルは1900年にアトランタに生まれた。1949年、自宅近くを夫と歩いていて車にはねられ死亡。48歳の若さだった。“Gone with the Wind” は生涯ただ一つの作品だった。作品が発表された翌年の1937年に栄えあるピュリッツアー賞を受賞している。
 彼女が描いたスカーレットの魅力は決してあきらめない心の強さだ。それがよく表現されているのは、スカーレットが戦火のアトランタからタラに戻り、故郷が北部軍に無残に破壊され、最愛の優しい母親は既に死亡、父親も生ける屍のように気力を失っている現実に直面した時であろうか。食べるものもろくにない状況。あるのは荒廃と飢餓の危機だ。
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 Hunger gnawed at her empty stomach again and she said aloud: “As God is my witness, as God is my witness, the Yankees aren’t going to lick me. I’m going to live through this, and when it’s over, I’m never going to be hungry again. No, nor any of my folks. If I have to steal or kill—as God is my witness, I’m never going to be hungry again.” (飢餓感が彼女のすきっ腹を再びさいなんだ。彼女は声に出して叫んだ。「神に誓って、神に誓って、私はヤンキーたちに負けなどしない。私は生き延びて見せる。これが終わったら、二度とひもじい思いはしない。そう、私の一族郎党に決してひもじい思いなどさせはせぬ。たとえそのために物を盗んだり、人をあやめたりすることになったとしてもだ。神に誓って言う。私は二度とひもじい思いをしない」)
 父親のジェラードは21歳の時にアイルランドからやって来て、無一文の身からタラの農園主となった男だった。小説の冒頭部分で農園を継承することなどどうでもいいと言う長女のスカーレットにジェラードは怒って次のように諭す。”Land is the only thing in the world that amounts to anything, for ‘tis the only thing in this world that lasts, and don’t you be forgetting it! ‘Tis the only thing worth working for, worth fighting for—worth dying for.” (「土地はこの世で価値ある唯一のものだ。永久に続くものは土地の他にはありはしない。忘れてはならないぞ。そのために汗を流し、戦う価値のある唯一のものなんだ。命をかける価値のあるものなんだ」)
 ミッドウエストを舞台にウィラ・キャザーが描いた開拓者の小説でも酷似している記述があった。そういう意味ではアメリカらしい小説と言えるだろう。
 私は映画では夫のレットを愛していることに初めて気づいたスカーレットが、彼女に愛想をつかして立ち去る彼を引き留めようとするシーンが印象に残っている。レットはスカーレットの懇願を一蹴して別れ際に言い放つ。”Frankly, my dear. I don’t give a damn.” (正直言って、お前さんがこの先どうなろうと俺の知ったことじゃないよ)。小説では、単に ”My dear, I don’t give a damn.” となっているが。
 それでも彼女はへこたれない。小説は ”I’ll think of it all tomorrow, at Tara….After all, tomorrow is another day.” という彼女がよく口にする言葉で終わっている。
 (写真は、タラのモデルとなった著者の祖父母の家を描いた絵=タラへの道博物館で)

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