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日本語に漢字は有害!?

  • 2019-09-25 (Wed) 12:34
  • 総合

20190925-1569382366.jpg 実に興味深い本を読んだ。新聞社勤務時代の同僚に薦められた本で『言語学者が語る漢字文明論』(2017講談社学術文庫)。著者は1934年生まれの言語学者、田中克彦氏。日本語にとって漢字は甚だ有害であり、国際社会に流布する言語として自立するためには漢字を棄て、かな文字かローマ字表記にするべきだと訴えている。うーんと唸らざるを得ない。
 例によってマーカーを走らせたところをここに記しておきたい。
 日本語は一〇世紀頃、漢字から、オト表記のためのかな文字を作った。そして女たちはかな文字だけで書く文学を発展させることによって、日本語を見事に自立させたのである。ところが出世主義者の男たちは政治と学問を一人じめするために漢字を手放さなかったのみならず、いよいよ、さらにこみ入った使いかたを考え出し、自らの地位の確保のために利用したのである。かれらのせいで日本語は、漢字のしばりから離れて真に自立した日本語の書きことばを確立するチャンスを失ってしまったのである。
 このように考える学者の系譜は脈々と続いているようで、服部四郎(1908-95)という言語学者の見解も紹介されている。[以下に述べるのは、私が]他民族に接して始めて、動かすことの出来ない程度に堅くなった意見である。[・・]思うに日本民族は、将来漢字を棄て表音文字(ローマ字・仮名等)を絶対に採る必要がある。[・・]表音文字を採らなければならないと考える理由は、第一に漢字が日本語そのものを壊している事実は著しいものである。どう云う字を書きますかと聞き返さなければならない言葉、即ち見てはわかるが聞いてはわからない言葉の如何に多い事よ。かゝる単語の多いことは、日本語が言語として不完全なる事を意味する。(中略)第二に、日本人にとって国語学習が遥かに楽になる。(中略)第三に、漢字を使用しない異民族に日本語の学習がどれ程容易となるかわからない。日本語が表音文字で書かれていたら、西洋にも学習して呉れる人々がずっと多く出て来るであろう。
 以前にも、日本人、日本語にとって我らの祖先が漢字と出合ったことは大いなる不幸であったと説いた書をこのブログでも紹介したことがある。(2019年4月12日の項)。それを思い出した。田中氏の主張をもう少し列記すると。
 漢字はことばではない、もっと正確に言えば、ことばを表していないからである。(中略)漢字が文字ではなく、半ば絵だからである。
 日本の将来を考えるならば、むしろやるべきことは、「漢字文化圏」という牢獄の鎖をたち切って、そこからさっさと脱出し、日本語独自の道をさがすことにこそ力をそそぐべきだ。(中略)そして今、やはりこれからも何かマネをしなければならないとすればむしろ朝鮮人のやったハングル化の道である。言うまでもないことだが、朝鮮のハングルではなくて、日本のハングル=かな、あるいはローマ字によってである。

 次の見解には思わず笑ってしまった。私も異論はない。私は、漢字に興味をもってはいけないというのではない。漢字の考古学をやる人はいてもいいが、すべての人がそれをやる必要はなく、まして入学試験などで、人の能力・知力を測るための道具に利用してはならない。漢字を知っていても頭の悪い人、いな、漢字を知っているためにかえってアタマを悪くしてしまった人たちを私は数えきれないほど知っている。

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