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「ふたりのピアフ」

  • 2018-11-26 (Mon) 09:21
  • 総合

20181126-1543191610.jpg 私は音痴(tone deaf)の部類に属するかと思う。小中学時代は音楽の時間が憂鬱だった。皆と一緒に歌っている時にはいいのだが、一人だけになるとどうも音程を外してしまう。その後、音痴には2種類あって、自分が音程を外したことが分かる音痴とそれさえ分からない音痴の2種類があるのだとどこかで読んだような。本当にそういうものなのかは門外漢の私には分からないが、大学生の頃、アルバイト先でバイト仲間が口ずさんでいた歌がひどい音痴だったので、そう指摘すると、「どこがおかしいの?」と大真面目に聞かれたことがあり、私は心中「こいつは正真正銘の音痴だ」と合点が行ったことを覚えている。
 その点、私は自分で音程を外したところはだいたい分かる。それではそれを矯正しつつ歌えばいいのだろうが、残念ながらそれができない。就職するまでずっと、まともに歌えないということにコンプレックスを抱いていた。(今でも若干くすぶっている)。大学を卒業し、就職で上京した昭和50年代半ば、初任地の八王子市でもカラオケ機器を備えたスナックが増え始めていた。飲み会後のカラオケは負担に感じたが、そのうちエコーを効かせて歌うと少々の音程のずれはごまかせることに気づき、段々と人前で歌うことに慣れていった。
 前置きが長くなった。生来音痴の私は音楽コンサートの類にはあまり関心はなく、ロンドン勤務時代にはストレートプレイ(straight play)と呼ばれる、歌唱を含まない伝統的な劇を観によく出かけた。先週末、その私が珍しく、天神のライブハウスに足を運んだ。「ふたりのピアフ」と題したシャンソンと語り芝居のコンサートだ。出演者のシャンソン歌手、浜砂伴海さんは旧知の間柄で、彼女は首都圏を中心に精力的に活動している。福岡公演は3年ぶり、2回目とか。私は時々彼女のCDを聞いているが、生で聴くのは今回が初めて。
 フランスでシャンソンの女王と称されたエディット・ピアフ(1915-1963)。伴海ちゃんは福岡市在住の舞台俳優、岩城朋子さんとタッグを組み、ピアフ生誕100年の2015年からピアニスト(野田正純さん)の演奏に乗せ、ピアフの波瀾万丈の人生を歌い上げている。「語り芝居」と呼ばれる独自のジャンルで活躍している岩城さんの声色を駆使した語り、伴海ちゃんの張りのある力強い歌声が絶妙に絡まり合う。売春宿で過ごした幼少期、街中で歌ってシャンソンを学んだ少女期、恋人との死別、再三の交通事故による負傷、治療の過程で身体にしみ込んだ麻薬中毒・・・シャンソンの女王の尋常ならざる人生が二人の歌と語り芝居で鮮やかに紡ぎ出されていった。
20181126-1543191663.jpg 休憩をはさんで約2時間の公演が終わった瞬間、ライブハウスに集った約70人のお客の拍手がしばし鳴りやまなかった。私の印象は「とても面白かった」。シャンソンを聴いて「面白かった」という感想はどうかとも思うが、伴海ちゃんの伸びのある歌声の魅力を岩城さん自身の脚本による語り芝居が一段と高めていた。伴海ちゃんが歌ったのは広く知られる「愛の讃歌」「水に流して」や自分で訳した「ミロール」「バラ色の人生」など20余曲。
 シャンソンはネットで検索すると「曲よりも歌詞が重要視され、歌手は音楽的な正確さよりもその歌をどう解釈して、それを聴く人にどう伝えるかが命」といった説明がなされていた。なるほど、一昔前の演歌をエコーでごまかしつつ歌う私のカラオケソングとは所詮、ラベルがいやレベルが違うのだ!

Comments:4

浜砂伴海 2018-12-07 (Fri) 11:40

省一さん、ふたりのピアフ、ご来場ありがとうございました。あっという間の2週間で明日は東京公演です。福岡の写真や、省一さんのこちらのブログのご紹介も、私のブログとFacebookにやっとupしました。本当にありがとうございました。省一さんと一杯飲みたかった〜。次回はゆっくり行けるよう頑張ります。お逢いできてよかった。聴いていただき幸せです。ご縁に感謝します。MERCI.

nasu 2018-12-07 (Fri) 12:07

伴海ちゃん こちらこそありがとう。あなたから以前に頂いたCDは時々聴いているが、やはり生歌にはかなわない。次回はぜひ一杯やりましょう。私は喜んで断酒を解きます。

浜砂伴海 2018-12-09 (Sun) 23:16

えー!断酒ですか?私は福岡の本番終わってしこたま飲んで、東京の本番までは禁酒してました。昨日東京公演昼夜無事終わり、またしこたま飲みました。省一さんと飲みたいです。面白いお話沢山聞きたいです(^^) 来年福岡に行く当期は早めにおしらせします!

省一 2018-12-10 (Mon) 09:22

伴海ちゃん 地元の東京公演も大好評だったことでしょう。「ふたりのピアフ」は末永く続けていく価値があると思います。いかねばなりません。私の断酒は爪の垢程度のものです。来年はぜひ一杯やりましょう。米良神楽が今週に迫りましたが、今年は姉が他界したこともあり、私は銀鏡には帰りません、残念ですが。

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