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先見と浅見

  • 2018-05-04 (Fri) 09:45
  • 総合

 トランプ米大統領が相も変わらず、自ら招いた墓穴で苦境に立たされている。今回明るみに出たのはトランプ氏が大統領就任前に不倫関係にあった元ポルノ女優に顧問弁護士が支払った13万ドル(約1400万円)の口止め料を、トランプ氏が弁済していたという事実。トランプ大統領の顧問弁護士となったばかりのジュリアーニ元ニューヨーク市長がテレビで明らかにした。これまでトランプ大統領は不倫を否定し、口止め料についても関知していないと主張していた。大統領はこの新事実の発覚後、金を払ったのは彼女の告発をやめさせる目的のためであり、不倫関係も依然否定、金の出所も不正なものではないと開き直っている。
 このスキャンダルの他にも、トランプ大統領が大統領選の前に公表した自身の健康診断書は主治医が自らの判断で作成したものではなく、トランプ氏が彼に一言一句書かせた(dictate)ものであることを主治医が明らかにした。この診断書の中で、「もしトランプ氏が大統領に選出されることになれば、彼は史上最も健康的な大統領(the healthiest individual ever elected to the presidency)となるだろう」と記されていたが、何のことはない、トランプ氏が自分自身の健康状態を豪語していたに過ぎない。
 トランプ大統領の窮地が若干気になるのは、日本にとって切実な北朝鮮の核・ミサイル問題が解決に向けてようやく動き出したばかりのタイミングだから。北朝鮮を率いる金正恩氏が核戦力の完全放棄にどこまで真剣に取り組むのか。近く開催される予定の米朝首脳会談を前に、米政権の土台が揺らぐのはあまり追い風とはならないだろう。
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 外出する時には必ず中国語の辞書を携帯するようになったことは以前に書いたような気がする。現役時代にもし誰かが、「君は定年後は電車の中で中国語の辞書を繰るのが楽しみになるだろう」と言ったとしたなら、おそらく私は「まさか」と笑い飛ばしていただろう。そもそも中国語に対して興味を抱くようになっているとは到底思えなかったことだろう。韓国語ならまだ分かる。新聞社の国際部(外報部)に配属になった時、韓国語の先生について数か月、少しだけ基本的な事柄を教わったことがあるからだ。
 中国語に通じている人には分かり切ったことだろうが、日々、辞書を繰るたびに「目から鱗」のときを過ごしている。最近の例では「物色する」という表現。中国語の声調と微妙な母音の差異を無視した表記を許してもらえば、「ウースー」に近い発声。なるほど、「人や物を探し求める」行為がなぜ、「物色」なのか、深く考えたことはないが、これは中国語に由来すると思えば、何となく「合点」は行く。
 「先見の明」の「先見」は簡体字では「先见」であり、「シェンジェン」。関連する語彙を見ていたら、「浅见」(チェンジェン)という語句が出てきた。「浅見」。こういう表現が日本語にもあるとは知らなかった。「あさはかな考え」「愚見」を意味する。「卓見」の反意語だ。辞書には「依我浅见」という文章が載っていた。「愚考いたしますに」という謙譲表現だという。これも言われてみれば、何となく意味合いは理解できるような気がした。こういう表現を中国の人との会話でさりげなく口にしてみたい。「イーウォ チェンジェン」。通じたらとても嬉しいことだろう。

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