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統営を訪ねて

  • 2016-03-07 (Mon) 21:37
  • 総合

20160307-1457353807.jpg 福岡を発つ前には、釜山の他にもう一か所は訪ねたいと思っていた。ホテルのベッドで寝転んで、ガイドブックを手にさてどこに行こうかと思案していて、南海岸の統営という地が目に入った。「トンヨン」と呼ぶ。豊臣秀吉の朝鮮出兵のゆかりの地と書いてある。いや、地元の人々に言わせたら、ゆかりの地などと呑気に言って欲しくはないことだろう。旧日本軍による植民地支配に先立つ、400年ほど前の日本の侵略の史実を物語る地だからだ。
20160307-1457353889.jpg ガイドブックには「統営には鉄道や空港はないのでバスを利用すること」と記してある。釜山から2時間程度の短い旅程。車窓の光景に郷愁を覚える暇もなく、あっという間に統営着。港町だ。取り急ぎ、身軽になるため、宿を探す。小さい観光案内所があった。中年の女性が一人。「安宿を探しているのですが」と韓英日語で私。今回の旅で痛感しているが、一般の人は英語も日本語もほぼ悲しくなるほど通じない。それは日本だって同様だから致し方ない。彼女は日本語の観光案内地図を奥から引っ張り出す。一生懸命の姿勢が伝わる。そのうち、彼女が受話器を突き出した。男性の日本語が聞こえる。「どちら様ですか?」と私。「私は統営の市役所の職員です。ホテルをお探しなんですね?」「はい。40,000₩程度のホテルがあれば嬉しいのですが」といったやりとりの後、彼はモーテルを紹介してくれた。
20160307-1457354223.jpg20160307-1457353968.jpg ラブホテルみたいな外観のモーテルだが、中に入るとビジネスホテルのよう。身軽になってとりあえず、港の周辺を歩く。対岸に白くていい感じの建物が見えた。ガイドブックで確認すると、南望山公園にある市民文化会館。歩いて行ける距離だ。湾岸から坂道を上ると、後期高齢者とおぼしき大勢の一団とすれ違った。韓国のお年寄りをこれほど目にしたことはない。皆さん、人生の苦労を顔中に刻んでいらっしゃる。
20160307-1457354064.jpg ガイドブックには公園の一角に豊臣秀吉が送り込んだ水軍を撃退した、救国の名将、李舜臣(イスンシン)将軍の銅像が立っているとある。ところが、いくら歩き回っても、像らしきものに行き着かない。20代の若者が歩いていたので、彼に助けを求める。彼は少し英語を解したので、私は英語で「豊臣秀吉の水軍を破ったあなたの国のヒーローだよ」と説明したが、どうも要領を得ない。ガイドブックの「李舜臣将軍銅像」という漢字を見せても思わしくない。スマホみたいなもので調べ始めた彼は「えーと、あなたはヒデヨシの像を探しているのですか?」。ハングル文字一辺倒の韓国の若者世代は漢字が読めないという記事をどこかで目にしたことを思い出した。ほどなくして彼は「え! イスンシンの像ですか!。それなら分かります」と話し、石段を上がったところに私を連れていってくれた。石段の登り口には何の案内も出ていない。これでは初めての人は独力では行き着けないだろう。
 不思議なことに、私が写真を撮って、振り返ると、若者の姿はかき消えていた。私にお礼を言わせる機会も与えず。歩きながら彼が語ったところではソウルに住むサラリーマンで、高校生だった10年ほど前に大阪に観光旅行で行ったことがあるとか。公園からの帰途にゆっくり話をしようと思っていたのだが・・・。慎ましい性格ゆえに無事に案内を済ませたので立ち去ったのか。私がデジカメをのぞいていたのは数十秒程度に過ぎない。すぐに振り返ったら、彼は消えていた。その後、私の脳裏には次のような疑問が何度も浮かんでいた。“Who was he? Somebody in the heaven sent him to help me here? Can’t be. But …”

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