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詩の力!

  • 2021-01-25 (Mon) 12:46
  • 総合

20210125-1611546345.jpg バイデン新大統領の就任式典で「主役」の座を奪ったかのように脚光を浴びた22歳の若き詩人、アマンダ・ゴーマンさんのことに言及しておきたい。読売新聞本紙では彼女に関する記事を見つけることはできなったが、英字紙ジャパン・ニュースは写真を付け、ロイター通信電で小さく Inaugural poet Amanda Gorman inspiresと報じていた。
 ゴーマン嬢は2017年に創設された全米青年桂冠詩人(National Youth Poet Laureate)に選ばれた新進気鋭の詩人。過去にも詩人が大統領就任式典で自作の詩を披露した例はあるが、彼女のように若さあふれる女性が壇上に立ったのはまれだろう。私は彼女が壇上に立った時、まだ十代では思ったぐらい、幼さの残る童顔だった。だが、彼女の口から紡がれる言葉は力強く、聴衆の胸に響いていることはすぐに分かった。
 正直に白状すると、私は詩というものが苦手だ。英語の詩だと意味を追うだけで精一杯になり、とてもじゃないが、余韻に浸ることは至難の業。だが、今回は詩の力、言葉の持つ力というものを改めて再認識した。キング牧師が1963年に行った “I have a dream” の演説と並び称されるようになるのではと感じたほどだ。
 彼女が朗読した自作の詩は “The Hill We Climb”。米国民の融和、協力を訴え、お互いの違いを克服し、ともに未来を切り開いて行こうと訴えた力強い詩だった。私は週末にYouTubeでこの時間にしてわずか5分間の朗読を何度も視聴し、余韻を楽しんだ。
 “The Hill We Climb” で特に印象に残った箇所を少し記すとーー。When a skinny Black girl/descended from slaves and raised by a single mother/can dream of becoming president(一人の痩せた黒人の少女が/奴隷を先祖に持ち、母子家庭で育ったのだが/大統領になることを夢見ることができる)・・
 It’s because being American is more than a pride we inherit,/ it’s the past we step into/and how we repair it(アメリカ人であるということは私たちが受け継ぐ誇りだけのことではない/それは私たちが足を踏み入れる過去であり/私たちがいかにそれを修復するかということでもあるのだ)・・
 米議会が前大統領支持派の暴徒により襲われたことも次のように切り取っている。
 We’ve seen a force that would shatter our nation/rather than share it/Would destroy our country if it meant delaying democracy/And this effort very nearly succeeded/But while democracy can be periodically delayed/it can never be permanently defeated(私たちはある勢力が私たちの国を粉砕しようとするのを目撃したばかりだ/国を共有するのではなく/民主主義の流れを阻止しようとしたのであれば、私たちの国を破壊しようとしたようなものだ/彼らの試みはもう少しで成就するところだった/しかし民主主義はときに遅延させられることはあっても/永久に挫折されたままでいることは決してないのだ)・・
 自身は2016年の大統領選で敗れたヒラリー・クリントン氏によると、ゴーマン嬢は2036年の大統領選に出馬することを約束したとか。ヒラリー氏の支援は間違いなさそうだ。2036年でも彼女はまだ38歳の若さ。トランプ氏のような人物が出るのも米国、ゴーマン嬢のような人物が出るのも米国。日本人の「物差し」では測れない国のようだ。

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