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Trevor Noah

  • 2020-11-23 (Mon) 09:39
  • 総合

20201123-1606091965.jpg 米国にトレバー・ノアという名のコメディアンがいるのは知っていた。彼が米国で風刺の効いた人気のチャット番組、デイリーショー(Daily Show)の司会者に抜擢された時に、彼の存在を初めて知った。プロファイリングを許してもらえるなら、南アフリカ出身であることが容貌から推察できた。南アではカラードと呼ばれる白人と黒人の混血の男性だ。
 デイリーショーはノア氏の前任の司会者時代にはネットでよく見ていたが、2015年にノア氏に交代してからは縁遠くなっていた。スティーヴン・コルベアというコメディアンがホストを務める別の風刺番組をしょっちゅう見ていたこともあって、ノア氏の番組にはあまり食指が動かなかった。パソコンでYouTubeにアクセスするとサムネイルに時々ノア氏の顔が見えたが、番組自体をクリックすることは皆無に近かった。
 ニューヨークタイムズ紙から送られてくる主要記事の一覧にノア氏を紹介する長文の記事があった。トランプ大統領の米国で社会の分断・亀裂が深刻化する一途の社会を風刺の効いた語りで切り取るノア氏の力量を高く評価していた。
 この記事を読んで初めて、彼が米国に本格進出する前には南アでは知らない者はいない著名なコメディアンだったことを知った。生まれたのは1984年とあるから南アがまだアパルトヘイト(人種隔離政策)体制下の時代だ。私は彼が幼児の頃に南アで取材していたことになる。
 興味深く思ったことを記しておきたい。白人の父親、黒人の母親の間に生まれた彼は南アではカラードという人種に区分けされるが、米国では黒人としか見なされない。米国では「一滴でも黒人の血が流れていれば黒人」という認識があるからだ。ただ、ノア氏の場合、彼の風貌、そして南ア出身者に特有の英語のアクセントから、米国の白人階層からは物珍しさもあって黒人一般の人々が受ける扱いとは若干異なる扱いを受けてきているという。
 その辺りを大雑把に要約すると以下のようになるかと思う。――アメリカの白人は彼が南ア出身の黒人であることを知っており、アメリカで何が起きているかをアメリカで生まれ育った黒人に対するよりも、彼に対して話しやすいように感じているのではないか。アメリカの外からやって来た彼には負い目を感じる必要がないから――
 母国の南アはアパルトヘイトが過去のものとなり、国父的な存在だったマンデラ氏の記憶も薄れつつあるが、南アは人々がかつて夢見た全人種融和、共存共栄の政治・社会からはほど遠い。トランプ大統領が今なお、大統領選での敗北を認めず、深刻なコロナ禍が続く政治的混乱にある多民族国家の今の米国はノア氏には絶好の「ネタ」だろう。
 末尾近くでしばし手がとまった文章があった。After all, for all the insanity that Donald Trump and the coronavirus have visited upon America, Noah has lived through worse.(結局、トランプ大統領とコロナウイルスが米国にもたらしたあらゆる異常事態にもかかわらず、ノア氏はもっと酷い体験を切り抜けてきたのだ)。ここのvisited は brought about や caused と置き換えられるようだ。辞書を引くと、次の例文が紹介されていた。Another tragedy was visited upon the community. (更なる悲劇がその地域を襲った)。なるほど、visit にこういう用例があるのかと学んだ次第だ。

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