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みたび “social distancing”

  • 2020-06-09 (Tue) 09:10
  • 総合

 新型コロナウイルス。今やテレビやラジオで「ソーシャルディスタンス」という語を耳にしない日はないようになった。「社会的距離の確保」に努めようという意味合いで「ソーシャルディスタンス」が「3密」とともにキーワードとして使用されている。
 英語でも「ソーシャルディスタンス」と言えば通用するみたいな使われ方だが、そうでもない。英語ではあくまで “social distancing” だ。“social distance” ではない。「車間距離」を “car distance” と簡潔に英訳できないように、感染防止のための「社会的距離の確保」を “social distance” で表現することはできない。参考までに「車間距離」は英語では “the distance between two cars” や “a distance between your car and the car ahead” などと表現されている。<読売新聞によると世界保健機関(WHO)は最近、social distancing をphysical distancing と言い換えているという>
 私が学生時代にはサラリーマンは和製英語の典型的例として教わった。英語では “an office worker” と書くようにと。しかし今では salaryman は正しい英語の語彙として扱われている。サラリーマンが支える日本社会が世界で認知されている証しでもあるのだろう。dashi(だし)や umami(旨み)が英語の語彙としても通用する時代だ。“social distance” が感染症の対策として国際社会で幅広く通用する時代が到来する可能性がなくはないだろうが、当分の間は “social distancing” か “physical distancing” の方が無難だろう。
                  ◇
20200609-1591661425.jpg 英字新聞「ジャパン・ニュース」を開いて、奇抜な見出しに思わず笑ってしまった。そうか、こういう言葉遊びもあるのかと。その見出しは———— “Social dis-dancing? Club tries new layout” 。オランダの話題で、“social distancing” を守りながら、音楽とダンスをエンジョイしようという取り組みを紹介していた。厳密には夜ではなく午後のひとときを、ダンスフロアに間隔を開けたイスに座ってダンスを楽しもうという試み。記事ではイスに座ったままでも十分、ダンス感覚が楽しめると語る利用者の言葉が紹介されていた。
                  ◇
 NHKラジオの初級の中国語講座。レストランでの会話の場面で店員がお客に対し、「それでは後で私を呼んでください」と声をかける文章が読まれた。「那一会儿nin叫我」という文章だった。私はこの「nin」という語が最初分からず、かなり手こずった。「(人を)呼ぶ」という意味で nin叫とか言う熟語があるのだろうか。はてさて何だろう。しばらく辞書やネットと格闘した後、そうか、ninは人称代名詞の「您」なのか。それなら、意味がすっと通じる。
 上記の表現は日本語では「それでは後で呼んでください」と言うこともできる。人称代名詞は略しても問題ない。むしろ、人称代名詞をきちんと付けるとぎくしゃくする。「それではあなた(お客様)、後で(私を)呼んでください」。英語だと“Then, you call me later.” だろうか。中国語や英語だと人称代名詞をできるだけ略さないで書く(言う)方がいい場合が多い。英語のyou や meが中国語だと你や您であり我だ。中国語ではとにかく適宜、你と我をちりばめながら文章を作っていけばいいのでないかと私は思い始めている。

Comments:2

pesca 2020-07-30 (Thu) 10:23

蛇足になりますが、ご容赦のほど。
social distance,の関連なので、コメントします。人と人、車と車、「社会的」は使える単語ではない。車間距離と言えば、日本語では理解できますが、英語では確かにdistance以外になさそうだけど、その単語を聞いたこともない。それに、socialがついたら何のことかわからない、社会学でも定義はない、普通の人なら二つの単語の意味することに何となく違和感を感じる。今回のSD も意味不明、TVで見る限り、イギリスの政治家が最初にこの単語を使った、造語でなく「知ったかぶり」で。元はアメリカ人の社会学者が社会学で別の意味で使った。イギリス人政治家が原典の意味を知らずに、人と人、の距離をSDで使ってしまった。無知のなせる事。日本人の政治家はイギリスの事を信じて、コピぺで使った、という事です。この単語は、例えば、個人と行政のコミュニケーションの過多を調査するときに使い、過多を距離に置き換えて、使用します。私(家族)と区役所とのコミュニケーション、意見交換、といった社会的な機会の過多を、個人と行政の社会的距離が近い、離れている、とい表現し、同心円上に定量的に示す時に使います。一般的に、行政側はSDが近いと思っているのですが、住民の目では、話してもくれない、と判断しているのです。WHOはさすがに政治家の無知に驚いて、phisicalにしたらと指摘したですが、時すでに遅し、コロナ以上にコピペで広まった、特に日本で。

nasu 2020-07-30 (Thu) 11:44

pescaさん 
 洞察に富んだご指摘ありがとうございます。
社会学では意味ある用語だとぼんやりと認識していました。

那須

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