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英国の瓦解の始まり?

  • 2019-12-16 (Mon) 16:19
  • 総合

 英国の総選挙(下院)は世論調査の予測通りに政権党の保守党が圧勝した。私は欧州連合(EU)離脱阻止につながる結果を期待していたが、そうはならなかった。これで英国のEU離脱は不可避となったようだ。
 ジョンソン首相は勝利後に英国民に向けて、離脱派も残留派も意見の相違を乗り越え、融和のときがやってきたという趣旨のスピーチを行っている。英字紙から引用すると、Johnson called for the healing to begin. “I frankly urge everyone on either side of what are, after 3½ years, an increasingly arid argument, I urge everyone to find closure and to let the healing begin.”                   (arid argument=不毛の論争)
 私は今回の総選挙がEU残留か離脱かを問う国民投票の蒸し返しだったら、結果は違ったものになったのではないかと思っている。残留色の強い最大野党の労働党に票を投じたくとも、「鉄道国有化」を再び掲げるような労働党には票を入れられない残留派の有権者も多くいたのではないだろうか。保守党の独走を許した労働党の責任は重い。
 ジョンソン政権はこれで来年末までにEUとの種々の交渉を終える難事だけでなく、内政にも厄介な問題を抱えた。スコットランドの英国からの離脱即ち独立問題は再燃必至の雲行きだ。スコットランドの独立の是非は2014年に住民投票で否決されているが、今度は独立派に強い追い風が吹きそう。スコットランドの人々が元より関係がしっくりしていないイングランドと決別し、EUを選択したくなるのは理解できる。北アイルランドも微妙な立場に立たされる。やがて英国の国体が根底から揺らぐことになるやもしれない。
 ジョンソン首相や離脱を支持する英国民に共通する思いは、自国の歴史と伝統に対する誇りだろう。しかし栄枯盛衰は人の世だけでなく、国や同盟関係でも常と言える。チャーチル元首相はかつてEUの前身である欧州共同体(EC)に加盟する際に「英国は歴史と伝統ある特別な存在。なぜ我々がスペインやポルトガルの位置まで身を貶める必要があるのか」と語ったとか。その彼も今の世に生きていたなら、残留を選択したのではないか。
 私は以前に次のように書いた。その思いは今も同じだ。——英国のEU離脱は日本が中国やアセアン諸国との関係を断ち、アメリカや欧州との交易に活路を見いだそうとするようなものだ。愚挙だろう。チャーチル氏やサッチャー氏が蘇ったとしたなら、あきれ、嘆くのではないか。他に追随を許さない英連邦(Commonwealth)の盟主としての栄光も陰りそうだ。
                  ◇
 NHKラジオのテキストで次の文章に出合った。「她做的菜好吃极了,包你吃了还想吃」。「彼女の作る料理はとてもおいしいですよ。食べたらまた食べたくなること請け合いです」という意味。こういう文章を見つけると、私は嬉しくなる。語順が日本語と似ていて、意味するところもだいたい原意通りに想像することができるからだ。特に後段のくだりは「請け合いますよ」と言っておいて、「(一度)食べたら、また食べたくなることを」と続ければいいのだ。英語だとこうはいかない。乱暴に語順通りに英文にすると次のような文章が頭に浮かぶ。“She makes food very tasty, I guarantee you eat, then again want to eat.” やはり、日本語ほどにはスムーズには聞こえない。日中の方がずっと「近い」。

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