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「シュガーマン」

  • 2013-04-11 (Thu) 13:15
  • 総合

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 東京の友人から「南アフリカとアメリカが絡んだ面白い映画がかかっている」とメールをもらった。福岡ではKBCシネマで上映中とか。早速出かけた。
 何とも奇妙な映画だった。実話を描いたドキュメンタリー映画。あ、こういう映画、というか、物語もあるのだというのが最初に浮かんだ思いだった。南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離政策)が「遠景」にあるのだが、人種差別の非道を声高に告発するとかの類の作品ではない。南アから遠く離れたアメリカ、ミシガン州のデトロイトで育った一人のメキシコ系アメリカ人の数奇な物語だ。
 男の名は「ロドリゲス」。1970年代のデトロイトの場末のバーでギターを爪弾く若者。一度その歌を耳にしたら、音楽関係者なら「ボブ・ディランに並ぶか、凌駕するのでは」との予感を抱かせたミュージシャンだったという。にもかかわらず、男はアメリカでは全くの低評価で、一度も脚光を浴びることなく消えて行く。
 だが、運命のいたずらか、遠く南アではロドリゲスの歌が若者、それもアフリカーナーと呼ばれる、アパルトヘイトの屋台骨となっていたオランダ系白人の子孫の若者たちの胸に響いていた。タブーを厭わず、鬱屈した日常からの解放を歌う彼の歌声が、黒人蔑視のアパルトヘイト政策の打倒を願っていたアフリカーナーの若者たちに共感を生んだことは想像に難くない。「ロドリゲスはプレスリーやビートルズと並ぶ大スターであり、彼のわずか二つしかないアルバムは、(進歩的な)白人社会のたいていの家庭にあった」という。
 話が長くなるので割愛するが、とにかく、ロドリゲスは1990年代末、デトロイトで暮らし続けていることが判明する。南アでは「彼は公演中の舞台の上で拳銃自殺した」といった伝説がまことしやかに流れていた。ロドリゲスは初めて自分が南アではスーパースターだったことを知らされる。やがて招かれて南アでステージに立つ。50代半ばになっていた。当時撮影された公演の模様。客席は圧倒的に白人だ。初めて見るロドリゲスに狂喜し、涙を流している。アパルトヘイト下の国で彼らにとって、彼の歌に聴き入ることは人間としての尊厳を守る証だったのだ思う。アフリカーナーはアパルトヘイトゆえに否定的に見られがちだが、この制度を忌み嫌い、反旗を翻したのは英国系白人だけではなく、アフリカーナーの社会にも少なくなかったことがよくうかがえる光景だった。
 ロドリゲスの本名はシクスト・ディアス・ロドリゲス氏。1942年生まれ。今も冬にはストーブにまきをくべて暖を取るような質素な生活を続けていることが紹介される。音楽の道を断念した後は建設工事現場などで肉体労働に従事して、家庭を持ち、子供たちを育てた。何人かの娘さんたちが映画の中で語っていたが、彼が名声や富を求めることなく、日常の生活を淡々と生きてきたことが分かる。それは自分が南アでスーパースターであることが分かった今も変わらないようだった。
 彼の風貌から、私は最初、日系の血が入っているのではないかと思った。先祖にアメリカインディアンの人がいたようで、それで合点が行った。アメリカインディアンの血が流れている人の中には日本人と酷似している人がいるものだ。
 映画の名前は「シュガーマン 奇跡に愛された男」(Searching For Sugar Man)。一見に値する作品だ。
 (写真は、映画を観た後、思わず購入したロドリゲスのCD)

Comments:7

ETCマンツーマン英会話 2014-06-09 (Mon) 10:48

『Searching For Sugar Man』見ました。

>彼の風貌から、私は最初、日系の血が入っているのではないかと思った。

僕もその部分がとても気になっていました。映画を観ながらずっと知人のネイティブアメリカンのことを思い出していました。

>(写真は、映画を観た後、思わず購入したロドリゲスのCD)

おっしゃるとおり、映画を観た後は彼のCDが欲しくなりますね。心に響く歌ばかりでした。

nasu 2014-06-09 (Mon) 10:57

ETCマンツーマン英会話様 コメントありがとうございます。ロドリゲス氏のCDは仕事をしながら、今も時々聞いています。味わいのある曲ばかりです。先日、あの映画をプロデュースしたスウェーデンだかどこかの人が死去したとかいうニュースを目にしたような気がします。まだとても若い人のようでしたが。

ETCマンツーマン英会話 2014-06-10 (Tue) 08:43

nasuさん、お返事有難うございました。

>先日、あの映画をプロデュースしたスウェーデンだかどこかの人が死去したとかいうニュースを目にしたような気がします。まだとても若い人のようでしたが。

本当ですね。驚きました。監督のマリク・ベンジェルールさんが5月13日に無くなっていました。30代半ば。映画のところどころで聞こえてくる彼のスウェーデン訛りの英語が耳に残っていたのですが、とても残念です。この映画を初めて観たのは、偶然ですが彼が無くなった月だったようです。
情報有難うございました。

ETCマンツーマン英会話 2014-06-10 (Tue) 08:51

マリク・ベンジェルールさんは自殺だったのですね。映画は生きる希望を与えてくれる作品だったのに残念です。

nasu 2014-06-10 (Tue) 10:23

ETCマンツーマン英会話さん そうですか。自殺ですか。あれほどの情熱を傾けてあの映画を紡ぎ出した人が自殺とは! 世人には分からない理由があったのでしょう。今日は改めてシュガーマン他を聴いてみたいと思っています。情報、ありがとうございました。

ETCマンツーマン英会話 2014-06-10 (Tue) 18:33

nasuさん

こちらに記事がありました。

▽Malik Bendjelloul, Oscar Winner for ‘Sugar Man’ Film, Dies at 36

http://www.nytimes.com/2014...

欝による自殺とのようです。色々な意味で印象に残る映画になりました。こちらこそ情報有難うございました。

nasu 2014-06-10 (Tue) 21:08

ETCマンツーマン英会話さん 了解です。心の病だったのですね。これからも幾多の名作を発表できたかもしれませんのに。佳人薄命ですね。合掌。

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