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いよいよ “Klara and the Sun” の世界に

  • 2021-07-12 (Mon) 10:41
  • 総合

 昨日(日曜日)新型コロナウイルスのワクチンの二回目の接種を受けた。今回は自宅近くの区役所出先が接種会場だったため、手間暇かからず楽だった。接種を受けた左腕の痛さもほとんど感じないほどで、一夜明けた月曜朝も体調に何ら変わりはない。これで終了ならありがたいのだが、海外からのニュースだと効果を持続させるため、3度目の接種の可能性を示唆する報道もあり、あまり安心はできないようだ。いずれしろ、今後とも外出時はマスクを付けることが求められるのだろう。一日も早く終息(収束)して欲しいと祈る。
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 天神のカフェで毎月第2,4日曜日に実施している「小説を読む」英語教室もコロナ禍のため、ずっと自宅からオンラインで続けている。昨日から読み始めたのが日系の英国人作家カズオ・イシグロ氏の近作 “Klara and the Sun”。
 初回には20頁程度を読んだ。書き出しから不思議な描写がある。BoyAFとかGirlAF という表現だ。読み進めるにつれ、なぞが解けていく。AFとは Artificial Friendのことなのだ。ヒロインのGirlAF であるKlara はまるで人間のようにきめ細やかな心情の揺れを感じ取るように成長していく。お店の中で他のAFと一緒に展示され、子どもたちがやってきて「購入」されるのを待つ。GirlAF をどう訳そうか。今頭にあるのは「ロボ友少女」。この小説はすでに邦訳が出ているが、翻訳者が何と訳しているか興味深い。
 購入された家庭でその家の子どもの遊び相手、時には勉強相手になることが求められていることが分かる。一人っ子が当たり前の社会なのか。どこの国とは明示されていないが、英語が主要言語であり、着ている衣服で貧富の差が明確に認識できる格差社会でもあるようだ。Klaraを購入することになるのは、Klaraの見立てでは14歳半ばのJosie という名の少女。笑顔が魅力的な明るい少女だが、病弱な身体で歩行にも若干困難を感じている節がある。Josieには冷たい印象を与えるキャリアウーマンの母親がいつも付き添っている。
 KlaraのようなAFにとって死活的に重要な意味を持つのが Sun(太陽)であることも冒頭から描かれている。太陽光をエネルギー源としているのだ。KlaraはB2の第4シリーズと呼ばれる型式のAFであり、今はさらに新しい型のB3が「発売」され始めたことも紹介されている。人間界も次から次へ「新人類」が誕生しているようで、私など時として肩身が狭く感じており、世代交代はロボットの世界だけの話ではないかもしれない・・。
 冗談はともかく、次のようなKlaraの心理描写は心に染み入る。「そのロボ友少年は少女の数歩後をついて歩くということを受け入れていた。すれ違う人々は二人の姿を目にすれば、ロボ友少年が少女には愛されていないということが分かったことだろう。私はロボ友少年の足取りに気だるさを見て取った。家庭に引き取られて行ったとしても、その家の子どもに気に入れられなかったら、どういう気持ちになるのだろうとあれこれ想像せざるを得なかった。私はこの二人を見るまで、そういうことは思いもしなかったのだ。ロボ友が引き取られた家の子どもに疎まれ、いなくなって欲しいと嫌われながらも、一緒に暮らし続けるなんてことは
 何だか、同じ作家の2005年の名作 “Never Let Me Go” をほうふつとさせる描写だ。

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