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ヴァージニア・ウルフ(Virginia Woolf)②

  • 2012-07-11 (Wed) 00:23
  • 総合

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 ヴァージニアとヴァネッサ。二人の写真を眺めてみる。二人とも美人である。周囲の見立ては2歳年下のヴァージニアの方がより美人だったということになっていて、特に才気煥発のヴァージニアには初対面の男たちはたちまち魅了されたらしい。
 父親は『英国人名事典』の執筆で知られた歴史家、作家。母親も名家の出で、ともに再婚、ヴァネッサとヴァージニアは二人の再婚後にできた4人兄弟(姉妹)の長女、次女として誕生。二人が再婚する前に兄が二人、姉が二人いた。ヴァージニアから見れば、二人の義兄とは10歳以上も年齢が離れており、彼女は少女時代にこの兄たちから生涯忘れることのできない性的凌辱を受けていることが明らかになっている。憂いを含んだ眼差しはこうした体験に起因するのかもしれないと私は思ったりした。
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 文学に造詣の深い血筋で、ヴァージニアは文学に走ったが、ヴァネッサは絵画に志した。最愛の母親の次に、厳格な父親を失い、1904年に二人はずっと育ってきたロンドンの賑やかなケンジントン地区からブルームズベリー地区の新居に引っ越す。この新居に二人の姉妹の間にいた長男のトビーのケンブリッジ大学の友人たちが毎週木曜日夜に集うようになり、ブルームズベリー・グループが誕生した。ボヘミアン的雰囲気の集まりで、男の多くは当時の社会ではタブーとされていたゲイ(同性愛)志向だった。
 最初に訪ねたチャールストンは残念ながら、内部は写真撮影厳禁。時間が経過した今、何を見たのかさえ、記憶があやふやになる。この家はヴァネッサと夫のクライブとの間にできた幼子2人に、ヴァネッサの恋人のダンカン・グラント(画家)、その二人の間で生まれた娘も一緒に住み、グループの多くの仲間が寄居するようになった。
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 チャールストンを見学しながら、ここのかつての住人たちの人間関係が複雑で頭を悩ましていると、親切な係りの人が “Bloomsbury relationship tree” という一枚の紙をくれた。主要人物の夫婦、親子、友人、恋人、ゲイの相関関係が網羅してある。ヴァネッサは夫公認でダンカンに惚れ切っていた。ゲイのダンカンを手元に引きとめるために、ヴァネッサはあえて、彼のゲイの恋人もこの家で同宿することも厭わなかったという。
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 ヴァネッサは夫のクライブとの関係を維持したまま、終生、ダンカンへの恋心を貫いており、その点では一途な女性だったのだろう。ヴァネッサがダンカンとともにこのファームハウスでキャンバスに向かっているひと時はヴァージニアが嫉妬するほど、仲睦まじき二人だったようだ。二人が壁画を手がけた少し遠くのベーリック教会にも足を運んだ。第二次大戦中の1940年代に二人が手がけた壁画だ。村の小さい教会で、入場自由。誰に気兼ねすることもなく、というか、ひっそりした教会内には誰もおらず、心行くまで石膏ボードに描かれた壁画を堪能した。イングランド本土がドイツ軍の爆撃にさらされている大戦中にこうした壁画が描かれ、教会堂に掲げられたのは、さすが英国と言うべきか。
 (写真は上から、チャールストンでの相関関係を示した紙。ベーリック教会。ヴァネッサが描いた「受胎告知」の壁画。マリアのモデルは自身の娘。続いて「キリスト降誕」の壁画。背景に地元の風景、登場人物も地元の村人たちをモデルにしているユニークさだ)

Comments:2

tajima 2012-07-11 (Wed) 09:26

那須さま、お元気で順調に旅をつづけておられるようでなによりです。『アメリカ文学紀行』も、評判いいですよ。今回の「イギリス文学紀行」もおもしろく読ませていただいています。ヴァージニアなど、とくに興味深いです。彼女の文学への傾倒がよくわかりました。では、これからもお元気でよい旅を。

nasu 2012-07-11 (Wed) 23:03

田島さん ありがとうございます。ヴァージニアは苦手の作家でした。「群盲象を撫でる」に近い心境で綴っています。今回の旅で少しく分かったような気もします。

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