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ジェフリー・チョーサー (Geoffrey Chaucer) ②

  • 2012-06-14 (Thu) 05:56
  • 総合

 “The Canterbury Tales” が書かれたのは14世紀後半、1387年ごろのことと見られている。フランス貴族出身のヘンリー2世を祖とするプランタジネット朝と呼ばれる中世王朝の時代だ。日本なら室町時代に当たる。
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 物語はロンドン中心部のテムズ川南岸にあるSouthwarkの宿から始まる。宿に集った29人の巡礼者たちに宿の主人が提案する。皆さん。巡礼の道中、それぞれが往路で2つ、復路で2つ、計4つの話をしようではありませんか。その中で最も面白い話をした方に私が最後にこの宿でご馳走を差し上げることを約束いたしましょう。皆、この提案に同意する。騎士に粉屋、料理人、托鉢僧、主婦、医師、司祭、尼僧など、身分も職業も雑多な顔ぶれの巡礼者たちだ。(Southwark、サザックと発音するらしい。理解するのに手間取った)
 口火を切ったのは騎士(knight)で、ギリシアを舞台にして二人の貴公子が一人の美しい姫を争う壮絶な恋物語が語られる。“All’s fair in love and war… /For love, all man-made laws are broken by/Folk of all kinds, all day and every day. /A man is bound to love, against all reasons.” (戦争と恋愛では何をしても許される。[中略] 恋愛に関する限り、人間が作った規則を後生大事に守る者などいるものか。道理がどうあれ、人間は誰かを好きになってしまったらどうすることもできないようにできているのだ)といった表現に出合うと、人間の営みは古今東西、何ら変わりがないのではないかなどと思ってしまう。
 傑作は粉屋(miller)のお話だ。ここで活字にするのは少しはばかられる思いもしないではない。しかし、この国では中世の時代にこれだけの破天荒なお話をしたためる「余裕」があったのだ。脱帽の思いだ。
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 今で言えば、「下ねた」大好き人間と思われる粉屋のお話はオックスフォードが舞台。大工出身の金持ちの爺さんの家に、貧しい大学生の若者が下宿している。爺さんには若くてきれいな妻がいる。若者はこの妻と恋に落ち、女も若者に寄り添うことを約束。若者は策略で爺さんを町中の笑い物にする。その過程でこの女に惚れた別の若者が真っ暗闇の深夜、爺さんの家の窓の外から女に愛をささやくシーンがある。甘い口づけを求める若者に女はむき出しにしたお尻を付き出す。それと知らない若者はそのお尻の「奥深く」キスをして、あれ、変だなと思う。原文では “Girls don’t have beards, as he knew well enough,/And what he’d felt had been hairy and rough.”(女性はひげなど生やしていないものだ。そんなことなど分かり切っている。でも自分が今、感じたものは毛深くてざらざらしているではないか)
 オックスフォードで出会った文学散歩の案内人、デイビス氏が「あの粉屋のきわどい(risqué)お話は当時のオックスフォードで時に暴力事件にも発展した“town and gown” の関係が背景にあります。タウン(町の人々)とガウン(学生、教職員)との微妙な確執。チョーサーはガウンの側に同情的だったのかも」と語っていたことを思い出した。
 (写真は上が、モダンな装いに変身しつつあるサザック周辺の街並み。右手のまだ建設中の塔はヨーロッパ一の高層ビルとか。下が、久々に晴れた13日の快適なカンタベリー)

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