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中世の雰囲気漂うライ

  • 2012-06-24 (Sun) 20:04
  • 総合

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 ロンドンから南に下り、サセックス州のライ(Rye)という町に来ている。地図で見るとそう遠くない感じだが、私の乗った列車の路線の関係か、2時間近くかかって到着した。
 ここに来たのは、かつて、仕事で知り合った友人が住んでいる町だからだ。彼とのメールのやり取りで、ライには作家ヘンリー・ジェイムズが住んでいた家が残っていることを知り、「一石二鳥」の訪問と思い立った。
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 友人のトニーさんと妻のジェインさんが駅に迎えに来てくれていた。歩いて彼らの家に向かう。駅からすぐ坂道になっていて、狭い通りゆえからか車は一方通行だ。通りに沿って古民家とでも呼びたくなるような家々が並ぶ。日本の習慣を知っている彼らとはお互いにファーストネームに「さん付け」で呼び合っている。
 ライは中世のたたずまいが残る町として、英国の人々の間でも人気のある地のようだ。カメラを手にした観光客の姿も少なくない。おそらく日本人と思われる東洋人の風貌の一団ともすれ違った。日本人観光客にも人気なのかもしれない。
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 5分も歩くと、トニーさんの家に着いた。前もって聞いてはいたが、柱や梁に古さがしのばれる。何と1420年の建築物だという。600年の歳月を刻んでいるのではないか。言葉を失う。「ショーイチさん、この家はキング・チャールズ2世がライに来ると、宿にしていた家です。今日からユーが寝る部屋はキングが寝ていた部屋です」とトニーさんが(英語で)言う。「え、王様が寝ていた部屋? ワオ!」という感じだ。
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 その王様、まさか、首を切られていないよね? と確認する。王様と言えども、夜中に亡霊には遭遇したくない。大丈夫。彼は首をはねられてはいなかった。彼の父親、チャールズ1世はクロムウェルに率いられた清教徒革命で1649年に処刑されている。チャールズ2世はフランスに亡命して、1660年の王政復古で帰国して即位している。フランスに近いこともあり、彼が亡命時にしばしばライを訪れた際に宿にしたのがこの家というわけだ。地元住民は王を慕っており、密告されるようなことはなかったという。
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 こういった歴史的な木造建築が今も残り、そして一般の人が住み続けているのが、英国だ。地震被害の少ない国という事情もあるかもしれないが。建物の歴史的価値(注)ゆえに、トニーさんは「外観、内装など勝手に手を加えてはいけないということになっている。こんな雰囲気のある家に手を入れることなど初めから考えもしないが」と言う。「ほら、この壁の紋様を見てご覧。この紋様はチューダー朝のころのものなんだ。これが唯一残っている紋様なので、普段は蓋がしてあるんだ」
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 ともに新聞記者出身のトニーさんとジェインさんがこの家を購入したのは丁度一年前のこと。二人はフランスにも別荘を持っており、英仏を行き来しながら、悠々自適の暮らしをエンジョイしている。
 (写真は上から、トニーさんの家の外観。中の様子。リビングルームでトニーさん夫妻。ジェインさんが持っているのが、チャールズ2世を描いた絵。壁に残るチューダー朝のころの紋様。普段は蓋=ほぼ中央=がしてある。屋根裏の王様の寝室)

 注)イングリッシュ・ヘリテージ(English Heritage)という、英国政府により設立された組織が、イングランドの歴史的建造物を保護する活動を展開している。この組織により歴史的建造物として認定されると、An English Listed Building となるようだ。トニーさんの家の門の写真を拡大すると、その登録証が下部に見える。なお、その上にある “Radclyffe Hall 1880-1943 Novelist Lived here” と印字されたプラーク(plaque)は、女流作家ラドクリフ・ホールが恋人の女性と1930年代にこの家で住んだことを示している。ホールがこの家を選んだのも、チャールズ2世にまつわる歴史的なゆかりに魅せられたためとか。

Comments:2

たかす 2012-06-25 (Mon) 09:10

立派な fireplace! ことによったら priest hole がありませんか?私はサセックスでひとつ見たことがあります。仲良しにフランシスコ会の修道士がいて、知り合いのカトリック教徒の家に連れて行ってくれました。

nasu 2012-06-25 (Mon) 17:03

先生 はい、 a priest's hiding hole というのがありました。カトリックの司祭がプロテスタントの追手から逃れるための小部屋だったと聞いてます。一見して分からないようにドアの部分が工夫してありました。当然のことでしょうが。

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