Home > 総合 > サフォーク・ウールピット

サフォーク・ウールピット

  • 2012-06-10 (Sun) 03:44
  • 総合

null
 ロンドンのリバプールストリート駅から列車に乗ること約1時間半、サフォーク(Suffolk)地方のウールピット(Woolpit)という人口約2千人の小さな村を訪れている。サフォークはイングランド東部にあり、より大きい呼称では東アングリア(East Anglia)の一角を占める。ロンドンから日帰りも不可能ではない地方だが、再訪のチャンスは極めて薄いので、週末をここの民宿B&Bで過ごすことにした。
 ウールピットに来たのは、ここで金曜夜に “Great Expectations” (邦訳『大いなる遺産』)の劇が上演されることを知ったからだ。ウールピットでは毎年この時期に10日間ほど文化祭的なフェスティバルを催しており、この夜は地方を公演して回る劇団がチャールズ・ディケンズの名作を上演することをネットで見つけた。主催者は村のフェスティバル実行委員会のようなグループ。ロンドンから列車と、常識の範囲内の料金のタクシーで村まで行くことが可能なことを確認した上で実行委の一人、ジェニーさんに電話を入れた。こちらの意図を伝えると、ジェニーさんは「いらっしゃいな」と応じ、村への「道順」を教えてくれた。
null
 パブを兼ねている民宿に着いて、公演30分前の夜7時ごろ、会場のビレッジホールに足を運ぶ。ジェニーさんたちは最前列の席を用意してくれていた。入場料の12ポンドを支払い、チケットを受け取る。
 ホールはイス席で150席ぐらいのスペースだったろうか。隣のご婦人と話をしていたら、ジェニーさんと実行委の男性が舞台前に出て、「今年もフェスティバルのシーズンとなりました」と挨拶を始めた。「今年は素晴らしいゲストが来てくれました。それもはるばる日本からです」と言うではないか。おお、私のことではないかいな。私は思わず、立ち上がり、かぶっていたハンチングを脱いで、数日前に自分で散髪してすっきりした坊主頭を下げた。皆さん、拍手で歓迎してくれた。「いやあ、照れるなあ」という心境だ。
 まさか、ここまで歓迎してくれるとは思わなかった。正直に書くと、私はイングランドの人々はなかなか「敷居が高い」という印象を持っている。私だけではないだろう。スコットランドやアイルランドの人に比べるとその差は歴然としているような気もする。だが、まさにロンドンだけでイングランドを「判断」してはいけないということをウールピットに来て実感した。B&Bのご夫婦もことのほか親切にしてくれる。
null
 土曜日は路線バスで25分走ったところにあるストウマーケット(Stowmarket)という町にある「東アングリア博物館」を訪ねた。ここにある「ビクトリア時代の暮らし」を紹介したコーナーの陳列物を見学していたら、レスリーさんという案内役の女性が声をかけてきた。私の旅の目的を知った彼女は他の展示会場を含め、30分ぐらい付きっ切りで案内してくれた。私が上記のイングランド人の印象のことを率直に語ると、レスリーさんは「ロンドンは大都会ですからそうなんでしょう。ここは田舎ですから、みんな親切ですよ。イングランドの良さをこれから満喫してください」と笑顔で言った。
 (写真は上から、ウールピットの村一番の広場。ビレッジホールの公演を前に談笑する村の人々。ストウマーケットの土曜朝市)

Comments:5

Taka Asai 2012-06-10 (Sun) 09:47

省一さん、「ロンドンだけでイングランドを判断してはいけない」。まさに至言だと思います。「敷居が高い」との印象に関しては、k. Ishiguroの出世作 The Remains of the Dayで、主人公と同僚のHousekeeperが必ずMr, Missの呼称を付けて話し合っていることに、誇り高き?国民性の一端を垣間見たような気がします。初対面でもfirst nameで話し掛けてくる(場合が多い)アメリカとは好対照ですね。

.

たかす 2012-06-10 (Sun) 11:37

話題豊富な報告に、ひとつだけ、綴り字発音のこと。Suffolkも綴り字発音されるようになっているんですね。学生時代に聞いた話。花瓶の vase をヴァースと発音するのは俗である、ヴォーズが正しいと戦前の外語でアイルランド人のすばらしい先生が言われたそうです。もちろんヴェースは論外。ウンデルスタンド?駐日バチカン大使が松山でされた英語の挨拶に使われました。

那須 2012-06-10 (Sun) 19:04

Asaiさん ご指摘の通りです。カズオ・イシグロのその作品は私の好きな作品です。映画も観ました。この旅の最後の方で取り上げたいと考えていますが、どうなりますことやら。

先生 サフォークが正しいですね。訂正します。あまり意識せずに、スペリングで綴っていました。花瓶にご指摘の発音があることは知りませんでした。今ストウマーケットのカフェで最後のコーヒーを飲んでいて、隣に座っている中年のご夫婦に確認したら、彼らは「ヴァーズ」と発音しました。いや、イングランドは発音だけとっても「深い」ところです。

まき 2012-06-17 (Sun) 21:19

おひさしぶりです★

ご無沙汰していますが、元気そうで
何よりです!

これからものぞかせていただきますね☆

那須 2012-06-17 (Sun) 22:55

まきちゃん ありがとう。宮崎はもう暑いのだろうね。湿気もあって。こちらはここ数日、また爽やかな天気が続いています。なにより、日本のような湿気がないのがいい。昔のままだったら、このまま盛夏になっても、ずっと冷房も必要ないはずだし。ブログは英語が多くて「閉口」させてしまうかもしれないけど、なるべく旅の話題も盛り込むようにしているので、しばらくお付き合いください。

このアイテムは閲覧専用です。コメントの投稿、投票はできません。

Home > 総合 > サフォーク・ウールピット

Search
Feeds

Page Top