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ジョージ・オーウェル(George Orwell)③

  • 2012-08-17 (Fri) 08:16
  • 総合

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 オーウェルゆかりの地はどこかにないものかと思案していたら、ロンドンに到着後に知り合った文学愛好家のグループから、「今度オーウェルの『動物農場』のモデルとなった地に皆で行くプランがあります。ご一緒しませんか」とメールが来た。これこそ「渡りに船」だ。喜んで参加した。
 『動物農場』のモデルと目されているのは、オーウェルが1936年から40年まで暮らしたハートフォードシャー州のウォーリントン(Wallington)。ロンドンの北約60キロにある小村で、先に紹介したフォースターランドからさして遠くない地にあった。
 オーウェルは1903年に英植民地下のインドで誕生。名門イートン校で学んだ後は植民地下のビルマで警察官となるが、帝国主義に嫌気が差して帰国。パリやロンドンを放浪した後、静かな執筆の地を求めたのがウォーリントンだった。現在の村の人口は約150人。当時も今もあまり大差ないような印象を受けた。
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 ウォーリントン在住60年以上になるというダン・ピノック氏がガイドとなって、オーウェルが暮らしたウォーリントンを案内してくれた。オーウェルが一目ぼれした才媛のアイリーン夫人と結婚した村の教会にも足を運んだ。500年以上の歴史のある教会だと聞いたが、木製の信者席を見て驚いた。おそらくそれぐらいの年輪を刻んだ信者席ではないかと思われるぐらいの「古さ」がうかがえた。こういう類のものを目にすると、イングランドの歴史、伝統に「脱帽」せざるを得ない。
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 村の小学校だった建物が集会所となっており、昨年オーウェルが村に住みついた75周年を期して催した展示会の展示品がそのまま残っていた。「実は『動物農場』で描かれる動物の中にはこの村の住民をモデルにしたものがあると言われています。最も分かりやすいのは老骨に鞭打って仕事に励むボクサーという馬車馬です。我々はこの老人がボクサーのモデルと見なしています」とダンさんは展示品の一つの写真を示した。「働き者の彼には村のパブでビールを一杯おごれば、庭仕事を軽く引き受けてくれたそうです。きっと作家も接したのではないでしょうか」
 オーウェルが住んだ家も残っており、彼が住んだことを示す標示が外壁にあった。今はこの家を購入した人の私有物。特別に家の中を見せてもらった。二階建ての小さな家で、オーウェル夫妻はここで地元の住民を相手に雑貨店のような店を切り盛りしていた。天井が低くて、長身のオーウェルはさぞかし窮屈だったであろうとしのばれた。
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 ダンさんは「オーウェルはこの村に住んだ4年間が最も幸福な時期だったと聞いております。村人たちは彼を本名のミスター・ブレア(Eric Blair)と呼んでいました。彼がここにいたころはまだ作家ジョージ・オーウェルとして名を馳せる前でしたので」と語っていた。オーウェルの業績をしのぶ2回目のイベントがウォーリントンの近くで9月下旬に催されることも知った。死後60年を経過して作家の威光が輝き始めたようにも見える。
 (写真は上から、好天の下で催されたオーウェルゆかりの地見学会。教会の歴史を物語る信者席の木肌。馬車馬の「モデル」と見なされている働き者だった古老。オーウェルが住んだ家。案内役のダンさんは村には以前は2つのパブがあったが、住民の「自宅志向」が強まり、今はゼロと残念がっていた。毎月最後の金曜日にパブナイトと称して有志が集会所に集まっているという)

Comments:3

田中貴子 2012-08-17 (Fri) 13:46

那須さん

丁度フランスの先生をお招きし、大阿蘇でサマースクールを行って帰ってきたらお葉書が届いてました。ありがとうございます。那須さんいいですね〜
お葉書のお二人はお友達ですか?

Taka Asai 2012-08-17 (Fri) 14:18

省一さん、毎回ブログに添付されている写真、この文学紀行の時代背景や現状などがよくわかり、いつも楽しく拝見しています。愛読者の一人として、筆者のお元気な姿が見えないのが残念ですが、そのうちアルフレッド・ヒチコック監督のように、それとなく登場してくれる日もあるのでないかと心待ちしております。

那須 2012-08-17 (Fri) 18:09

田中さん 大阿蘇サマースクールいいですね。フランスの方も喜ばれたことと思います。ところで差し上げたのはブロンテ姉妹ゆかりの地、ハワースの店で買った絵葉書です・・・。

Asaiさん できるだけ私の姿は見えないように努力しています。文章はともかく、写真で皆様にお見せできるような顔をしていませんので。それでもそのように思っていただけるだけで嬉しく思います・・・。

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