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オリンピック終わって

  • 2012-08-14 (Tue) 08:24
  • 総合

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 ロンドン五輪がようやく終了した。英国、特にイングランドの人々の国民性について考える機会となり、その点では有意義な二週間余だったような気がする。
 それにしても、すでに書いたことだが、スポーツの場でも英国民がこんなに愛国的だとは少し驚きだった。アメリカの愛国心もしかりだが、あれだけの国土に多くの人種を抱えた移民の国であるから、アメリカの力が試されようとしている場では「ユーエスエー(USA)」の大合唱で合衆国の誇りを、団結を誇示するのは分からないではない。
 伝統と落ち着きを重んじる英国はもう少し「醒めた」国かと思っていた。それが、連日、「チームジービー(Team GB)」の連呼だ。日本で言えば、NHKに当たるBBCが早朝から深夜まで、「チームGB」のメダル獲得数を報じ、金メダルの数で言えば、アメリカ、中国に次ぎ、三位の輝かしい成績を呆れるほどに称え続けた。大会閉幕を受けた13日の各紙でも大会の成功を祝う賑々しい紙面だった。”ab-fab” という見出しの記事も見かけた。”absolutely fabulous”(最高に素晴らしい)という表現の短縮形だが、大会期間中、BBCのアナや解説者からこのような類の表現を何度耳にしたことか!
 ロンドン五輪がこれから語り継がれる時、日本を含めた海外の人々が思い浮かべる象徴的なシーンは何だろうかと考えてみた。各自の「愛国心」を抜きにした場合、陸上男子百、二百㍍で北京に続き、連続金メダルを獲得した「世界最速の人間」ウサイン・ボルト(ジャマイカ)の勇姿を思い浮かべる人が多いかもしれない。
 英国のメディアを連日賑わしたのは同じトラック競技の5千、1万㍍の長距離2種目で金メダルを獲得し、英国民をエクスタシーに導いた黒人選手のモー・ファラー選手(29)だ。
 私はこの選手のことは全然知らなかったが、連日の報道で以下のような基礎的なことを知った。モー選手はソマリアで生まれ、8歳の時、母親に連れられて、ロンドンに移住してきた。移住してきた時、英語は三つの表現しか知らなかった。“Excuse me.” “Where is the toilet?” “C’mon then.” の三つだ。最後の表現は「売られた喧嘩は買う」類の表現であり、これがために学校生活では「苦労」したこともあったという。
 ファラー選手の勝利は英国が「マルチカルチュラル」(人種や宗教などの垣根なく異文化の人々が共存する)社会であることを象徴する出来事であると書いた新聞もあった。こういう記事に出合うと、私はしばし手をとめる・・・。彼の場合は英国に移住後、彼の運動能力を認めてくれた体育教師がいたからの幸運であって、彼が今の英国を象徴する存在であるとは私には到底思えない。英国が多くの矛盾を抱えながら、その歴史的な経緯から、日本よりも「マルチカルチュラル」な国であることは認めるとしてもだ。一つの出来事(事件)をあまりに過大評価することの愚かさはここで指摘するまでもないだろう。まあ、大会が当初懸念されたテロもなく、警備上の混乱もなく、大過なく成功裏に終わったことに敬意を表して、残りの旅を続けたい。
 (写真は、オリンピック閉幕を受けてその成功を賑々しく報じるロンドンの各紙) 

Comments:4

たかす 2012-08-14 (Tue) 09:36

ロンドンオリンピック開会式の「英国物語」をおやおやと思いながらも受け入れたと思います。英国が世界に加害者であったときのことも忘れましょう。閉会式の絢爛豪華な音楽演出で、イギリスが世界に冠たる文明国であるとした演出を受け入れましょう(^_^) ロンドンの科学博物館展示にみるすぐれた英国を思いましょう。男子マラソンが行われた好天気のロンドンも美しさを賛美しましょうよ。71年のロンドンはお天気でもお日様が金環食観測のためかのように雲の後ろにぼんやりとしていました。建物は真っ黒だったんですよ。ロンドンがあんなに美しいとは知りませんでした。

nasu 2012-08-14 (Tue) 19:52

先生 はい、ご指摘の通りです。「大上段」に振りかぶり過ぎました。私は中学の時に剣道をやっていましたが、実力もないのに竹刀を大上段に振り上げると、とんでもない隙ができるものです。ロンドンは美しいですね。いや、どこを旅しても、建物自体は美しいものが多い。視線を下にしない限りですが。日本ではあまり目にしないようなゴミも目立ちますから。

Taka Asai 2012-08-15 (Wed) 14:02

省一さん、14日にロンドンから帰ってまいりました。滞在中、好天に恵まれ、傘とレーンコートはバッグにしまったままでした。2日間、オリンピックスタジアム(陸上競技)に通いましたが、大活躍の地元選手に対する超フィーバーぶりは、謹厳実直な英国国民のイメージを完全に覆すものでした。郊外のホテルで4泊しましたが、朝食はイマイチで、これはという料理にお目にかかれませんでした。

nasu 2012-08-15 (Wed) 15:11

Asaiさん こちらも好天だったので、Asaiさんには余計なアドバイスをして、手荷物を増やしてしまったと悔いていました。でも好天で何よりでした。私はテレビを通してでしたが、そちらはスタジアムでじかに興奮を味わったわけですから、それはそれでいい体験でしたね。そうですか、料理はいまいちでしたか。日本のようにはいきませんよね。お疲れ様でした!

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